第6部:少女編 —— 聖女の、あるいは解体
プロローグ:猫の品定め(ルナ視点)
目の前には、白銀の鎧を着た人間たちがズラリと並んでいるにゃ。
数は200ってところかぬ。
普通なら震えて逃げ出すところなんだろうけど……不思議だぬ。あたしの心臓は、恐怖じゃなくて歓喜でドクドク鳴ってるにゃ。
パパ殿たちはもういない。里も焼けた。
あたしは全部失った「負け犬」のはずなのに。
(……おいしそうだぬ)
そう思っちゃうんだから、やっぱりあたしは壊れてるのかも知れないにゃ。 整列した兵士たちが、あたしには高級な食卓に見える。 あの鎧を剥いたら、中はどんな味がするんだろう。 あのすました顔の女騎士を泣かせたら、どんな声で鳴くんだろう。
損得勘定は終わった。
ここからは、純粋な「遊び」の時間だぬ。
さあ、たくさん遊んで、たくさん壊して、最後は骨までしゃぶり尽くしてやるにゃ。
1.洞窟の悪夢
湿った岩肌から、ピチャリと水滴が落ちる音が響く。
森の奥深く、獣道すら存在しない断崖の裂け目にある隠れ家。かつてルナが「秘密基地」として使い、獲物を解体していた場所だ。
その最奥で、アガサは目を覚ました。
「ん……っ、ここは……?」
動こうとして、すぐに自分の状況を理解した。
動けない。
首には太い革製の首輪が嵌められ、そこから伸びる縄が背後の岩に固定されている。手首と足首も縄で縛られ、薄汚れた床に座り込むことしかできない。
白銀の鎧は剥ぎ取られ、今は薄汚れた下着とインナーだけの無防備な姿だ。
「お目覚めかぬ、聖女様」
闇の奥から、ルナがゆらりと姿を現す。
その背後には、無表情なトバリと、どこか怯えた様子のヤヨイが控えていた。
ヤヨイは、拘束されたアガサの姿を見て、小刻みに震えていた。
恐怖ではない。共鳴だ。
かつて自分も同じように拘束され、ルナによって人間としての尊厳を剥ぎ取られ、「人形」へと作り替えられた日々の記憶がフラッシュバックしたのだ。
(ああ……あの方も、壊されるんだ……)
ヤヨイは身震いし、自分の体を抱きしめるように縮こまった。それは憐れみであり、同時に「自分だけではない」という歪んだ安堵でもあった。
2.平行線の対話
ルナはアガサの目の前にしゃがみ込み、その顔を覗き込んだ。
「単刀直入に聞くにゃ。……なんでパパ殿とママ殿を殺した? なんであたしたちの里を攻めた?」
ルナの声は静かだった。
怒りよりも、純粋な疑問。
アガサは拘束されながらも、毅然とルナを睨み返した。
「愚問ですね。……貴様らが『亜人』だからです」
「は?」
「神の似姿を持たぬ不浄な獣。存在するだけで世界を穢す冒涜者。それを浄化することに、理由など必要ありません」
アガサの瞳には、狂信的な光が宿っていた。
彼女にとって、これは正義の執行であり、議論の余地すらない真理なのだ。
ルナはきょとんとして、それから「ふっ」と吹き出した。
「……あはっ。すごいぬ、お前」
「何がおかしい!」
「いや、感心したにゃ。手足縛られて、丸裸にされて、今から何をされるかも分からないこの状況で……よくそんな寝言が言えるぬ」
ルナはアガサの頬を指先でなぞった。
その指先は冷たく、アガサの肌に粟粒が立つ。
3.綺麗な部品
「でも、その目は気に入ったにゃ」
ルナの顔が近づく。
鼻先が触れそうな距離で、金色の瞳がアガサの碧眼を覗き込む。
「金髪に、透き通るような碧い目。……とっても綺麗だぬ」
褒め言葉ではない。
それはショーケースに並んだ宝石や、精巧な細工品を品定めする目だった。
「欲しいにゃ。……ねえ、これ、抉り出してホルマリン漬けにしてもいいかぬ?」
「ひっ……!?」
アガサの喉から、短い悲鳴が漏れた。
殺意や敵意ならば耐えられる。だが、この少女が向けてくるのは「無邪気な所有欲」だ。
話が通じない。理屈が通じない。
その根源的な恐怖が、聖騎士の仮面を剥がし始めた。
「ふふっ、冗談だぬ。……まだ、生きてる方が楽しそうだもんね」
4.獣の作法
「さて、アガサ殿。お前はあたしたちを『獣』と呼んだよぬ?」
ルナは楽しげに笑うと、足元に落ちていた汚れた木皿を拾い上げ、そこに水筒の水を注いだ。
泥の混じった、濁った水だ。
「なら、お前は今日から『猫』だぬ。あたしのペットにゃ」
ルナは皿をアガサの顔の横、這いつくばらなければ届かない場所に置いた。
「喉、渇いてるだろ? 飲みなよ。猫みたいに舌を出して、ピチャピチャとな」
アガサの顔色が蒼白になる。
高潔な聖騎士である自分に、地面の水を啜れと言うのか。
「ふ、ふざけるな……ッ! そのような恥辱、死んでも……」
「躾が必要だぬ」
ルナは呆れたように肩をすくめると、控えていたヤヨイに視線を流した。
「ヤヨイ。……お前の新しい友達だぬ。猫の作法を教えてやるにゃ」
その命令に、ヤヨイの瞳から光が消えた。
彼女はゆらりとアガサに近づくと、首輪の縄を強く引きつけた。
「いッ……!?」
アガサの体が前のめりになり、床に顔を押し付けられる。
その屈辱的な姿勢は、まさに地面を這う獣だ。
「……飲んでください。猫になりなさい。……そうすれば、楽になれますから」
ヤヨイの声は、呪詛のように低く、冷たかった。
アガサは抵抗するが、縄で自由を奪われている。
「や、やめろ……離せっ!!」
するとヤヨイは、無表情のまま自分の口に大量の水を含んだ。
そして、アガサの顎を強く掴んで上を向かせる。
「ん、ぐ……!?」
ヤヨイの唇が、アガサの口を塞いだ。
強引な口づけ。
ヤヨイの口から、生温かい泥水がアガサの喉へと流し込まれる。
「んぐッ、ごふっ……!!」
息ができず、飲み込むしかない。
鼻から水が溢れ、咳き込むアガサ。
だがヤヨイは離れない。彼女はアガサの喉を愛おしそうに撫で回しながら、最後の一滴まで水を押し込んだ。
かつて自分がルナにされたように。
「ぷはっ……! ゲホッ、ガハッ……!」
ようやく解放されたアガサは、涎と泥水に塗れて激しく咳き込んだ。
美しい金髪は泥に汚れ、聖騎士の威厳など見る影もない。
「……いい子ですね。上手ですよ、猫さん」
ヤヨイは濡れた口元を拭いもせず、虚ろな瞳で微笑みながらアガサの頭を撫でた。
それは慈愛ではない。同じ「壊れたモノ」へと堕ちた者への、歪んだ歓迎だった。
ルナはそんなヤヨイの様子を満足げに眺めると,ヤヨイに目配せを送った。
ヤヨイはそのままアガサの首輪に繋がる縄を力強く引き、仰向けに転がした。
アガサの薄汚れた下着姿が晒され、最も無防備な「ヘソ天」の状態にされる。
ルナは自身の腰から抜いたクナイを、遊び道具のようにヤヨイに手渡した。
「ヤヨイ。ご褒美だぬ。この猫の一番大事なものを、壊れないように品定めしてあげるにゃ」
「……はい、ルナ様」
ヤヨイはクナイを受け取ると、その刃の切っ先を、アガサの晒された胸の膨らみの際どい場所にそっと当てた。
刃の冷たさが、濡れた肌に貼りつく。
アガサは仰向けで完全に拘束され、恐怖のあまり、その碧眼(青い目)は天井の一点を虚ろに見つめていた。全身は痙攣し、その金髪は床の泥と汗で張り付き、もはや乱れることさえなかった。
彼女の胸は激しく上下し、その動きが刃の切っ先をわずかに揺らす。
ヤヨイはあくまで優しく、しかし有無を言わせない声で囁いた。
「動いてはいけません、アガサ様。ほら、胸が大きく揺れていますよ? その呼吸を止めて」
ヤヨイはクナイを胸元から腹部へ、薄い布の縫い目に沿ってゆっくりと滑らせた。
刃の冷たさが去り、アガサは一瞬安堵の息を漏らすが、その視線はクナイの行方を追って動けない。
クナイはアガサのへその下を通り過ぎた。
そして、ヤヨイは刃の切っ先をわずかに立てる。
ビリッ!
布地が裂ける乾いた音が洞窟に響く。
ヤヨイは下着の股の付け根の布地を、横一文字に切り裂いた。
アガサの全身が硬直し、顔は真っ白になり、吐息は「く、ふ……」という短く掠れた音に変わっていた。切り口から、秘所の柔らかい肌がわずかに露わになる。
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ヤヨイの顔が、狂気的な喜びに紅潮した。それは、極度の緊張と、アガサが屈服していく無意識の反応を前にした、歪んだ快感だった。
ヤヨイは、自身の体の下腹部に微かなうずきを覚え、無意識に自分の下着の奥に手を入れ、自身の湿り気を確認した。
この、自身の身体の反応が、かつてアガサの兵隊たちによって受けた屈辱の記憶が蘇っている証拠だと、ヤヨイは解釈した。
その直後、ヤヨイはクナイを手放し、アガサの露わになったアガサの肌に触れる、アガサの熱と湿り気(アガサの生理的な反応)を指先に感じる。
その静寂の中、「チャプ……チャプ……」という、甘い蜜を混ぜたような、微かな音が、洞窟に響いていた。その音は、アガサの屈辱的な敗北を象徴していた。
ヤヨイは、その音と湿り気を指先に感じながら、アガサに顔を向けた。そして、自身の屈辱をアガサに転嫁するかのように、悲哀と歓喜の混じった声で囁いた。
「あら……汚れていますね。あなたの兵隊さんたちに、ひどいことをされてしまったから……」
ヤヨイは憐れむような声で囁いたが、その表情は歓喜に歪んでいる。
ヤヨイは唇を濡らし、屈辱と恐怖で硬直するアガサの顔の真上に、支配者として跨った。
ヤヨイが、アガサの顔に自身の秘所を強く押し付けるように腰を落とす。アガサの碧眼は、ヤヨイの薄い下着と肉体の影を極端な近距離で見上げる形になり、ヤヨイの肉体の熱と微かな香りが顔全体を覆い尽くした。 ヤヨイの荒い呼吸が、「ハッ...ハッ」と小さく響いた。
「ねえ、アガサ様。あなたが作ったこの穢れ、ご自身の舌で綺麗に清めてくださる?」
アガサは恐怖で喘ぎ、抵抗の吐息(「くっ...ハァ...ヒュッ」)を漏らすことしかできなかった。
【信仰の冒涜による屈服】
ヤヨイはアガサの秘所を指で撫でながら、さらに残酷な屈辱を強要した。
「さあ、聖女様。祈ってください。あなたがいつも神に捧げている、清らかな言葉を」
アガサの碧眼に、深い絶望の色が混じる。
「やめ……やめて……」
「いいえ、祈るのです!」ヤヨイは声を荒げた。
「私があなたの汚れた部分を調教している間、あなたは神に誓うのです。『我は神の御前に清し(あはれ)』と!」
ヤヨイの指が、アガサの露わになった秘所の柔らかい部分を優しく、しかし執拗に弄び始める。
「んぅ……っ、やだ、やめ、あぁ……! がっ……」
激しい屈辱と、指による強制的な刺激が混ざり合い、アガサの体は痙攣する。
「はやく! 聖騎士の誓いを!」
「くっ、ああ……が、我は……神の御前……に……あぁ、んぅううッ!!」
アガサの金髪は左右に激しく振り乱れ、もはや言葉を繋げない。
ヤヨイの顔は恍惚に歪み、その瞳は勝利の光を帯びていた。
「もう言葉になりませんね。可哀そうに。あなたはもう、神の清らかな言葉さえも、穢れで塗りつぶしてしまった」
ヤヨイは指を引き抜くと、アガサの顔の上に立ち上がり、冷徹に宣告した。
「聖騎士アガサは、今日、死にました。ここにいるのは、ルナ様の新しい玩具です」
アガサの碧眼から、全てを失った「虚無」の涙が、一筋、二筋と流れ落ちた。
彼女の体は、屈辱と敗北によって完全に硬直していた。
5.所有権の刻印
「よくできました。ヤヨイ、いい躾だぬ」
ルナは満足げに拍手をした。
そして懐から愛用のクナイを取り出す。
「さて、獣の作法を学んだところで……次は『名札』が必要だぬ」
薄暗い洞窟の中で、鋭利な刃が鈍く光る。
「迷子になったら困るからにゃ。……あたしの猫だっていう証拠を、その綺麗な体に刻んであげるぬ」
ルナはクナイの切っ先を、アガサの左胸――心臓の上あたりに当てた。
白く柔らかな肌が、切っ先が触れただけで小さく沈む。
「や、やめ……っ! お願い、それだけは……ッ!!」
肉体的な痛みへの恐怖と、一生消えない「所有印」を刻まれることへの絶望。
アガサが必死に首を振るが、拘束された体は逃げられない。
「動いちゃ駄目だぬ。手元が狂って、ザックリいっちゃうかもしれないにゃ」
ルナは楽しそうに瞳を細め、手首に力を込めた。
ジュッ……という音はしなかったが、アガサの脳内には肉が焼けるような錯覚が響いた。
鋭い痛みが走る。
クナイの刃が皮膚を切り裂き、血の玉が噴き出す。
「あ、ぎ……ぁぁぁぁッ!!」
絶叫が洞窟に木霊する。
ルナはアガサの悲鳴をBGMに、丁寧に、そして残酷に刃を走らせた。
縦に一本、横に二本。
アガサの左胸に、鮮血で描かれた『L』の文字――ルナ(Luna)の頭文字が刻まれていく。
「ん、上手く描けたにゃ」
ルナは血に濡れたクナイをアガサの下着で拭い、満足げに頷いた。
「これでお前は、聖騎士でも人間でもない。あたしの『所有物』だぬ」
胸に刻まれた赤い刻印。
それはアガサにとって、死してなお消えぬ屈辱と、隷属の証となった。
彼女の碧眼から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
(第6章 完)




