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転生先はパラレルワールドだった  作者: こぶたファクトリー
開幕

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ダンジョン フローズィア②

 大淵らが三階層に辿り着いた所、通路の先でアイスマンに囲まれる集団が見えた。


「入り口で倒した奴だな…」


 文字通り氷漬けの人型で、生物的なパーツは一切見えない。ただ、極めて分厚い氷は大淵の散弾すら弾いたため、騎兵刀による攻撃で両断した。


「くそぉ、凍っちまう! なにやってんだ、助けろよお前ら!?」

 二十歳ほどのリーダー格らしい、双剣使いの汎用剣士がアイスマン二体に組みつかれ、がなり立てている。

 非常に危険な状態だった。アイスマンは触れたものを凍り付かせていく。極めて高いステータスを持つ大淵でさえも、無抵抗のままなら何れその氷が主要な臓器や血管まで凍らせられ、死に至るだろう。

 アイスマンは単調な行動・攻撃パターンしか持たないが、ステータスを無視して生命を凍てつかせる危険な存在だった。…また、ダンジョン内の岩や氷に擬態してる事もあり、思わぬ奇襲を受ければ非常に危険だ。


「んな事言ったってよぉ…」

 重騎兵の男は困り顔ながら騎兵槍を巧みに操って敵の侵攻を食い止めているが、圧倒的に戦力不足だった。

 …紅一点・汎用弓士である少女の矢はアイスマンに致命的なダメージを与えられないが、重騎兵の男への的確な援護になっていた。

「だから上田君がさっき一旦戻ろうって言ったのに無視するから! 今だって折角逃げられたのに変な色気出すから捕まったんじゃない!」

「うるせーよ、ブス!」 


 拳闘士も奮戦していたが、一番分が悪かった。アイスマンに触れた拳や足先がその都度凍り付きかけ、あのまま戦い続ければ凍傷になってしまうだろう。

 その他にハイティーンの軽剣士は炎属性を纏っていたため、アイスマンを怯ませ、ようやくリーダー格の男が自由になった。


「本当に頼むぜ、お前ら!?…あー、ほら、クソ!凍傷になってるじゃねーか!?」

 …リーダー格の男は味方に不満たらたらである。…メンバーは慣れ、諦めた様子で黙っていた。


「…私達のリーダーが大淵君でよかった」

「本当ですね…」

「きひひひひ、そもそも器が違うのだ、器が!我が見込んだのだから当たり前よ!」


「だがまぁ、取り合えず難は逃れたらしいな。 桜、ヒーリングで彼らの凍傷を…」


「大淵!」

 アリッサが剣を身構えた。通路の奥から壁を破壊して、次々と新種モンスターが現れた。そのモンスターは首が無いまま頭部が胴体…胸の上部とほぼ一体化している。体つきはずんぐりと分厚い筋肉に覆われており、人間でいう鎖骨の辺りから立派な角が二本生えていた。体色は薄青色で、全身の至る所にはびっしりと氷雪を纏っていた。…それで寒くないのなら、アイスマンと同様、氷属性のモンスターなのだろう。

 ステータスには…アイスオーガとあった。

 また、階段の上からも気配。…完全に囲まれた。

「パープルハート組とアリッサは階段側を頼む。残りは…」


 不意に自分達の真横からも壁が崩され、近くにいた斎城の細い腰をがっしりと巨大な手…アイスオーガの手が掴み捕らえた。

「ア…ッ!」

 斎城がすぐさま反撃に転じるが、氷を鎧代わりにした腕には、何と斎城の腕をもってしても、片手では両断しきれなかった。

 アイスオーガのもう一方の手が伸び、斎城の刀を捥ぎ取ろうと掴みつつ、穴の奥へと連れ去ろうとした。

「やっ…」


「させるかッ!」

 

 既に射線を確保していた大淵が散弾銃を構えていた。銃身には加減して強化された証である赤いラインが、薄らと毛細血管を思わせるようにこびり付いている。

 

 12Gドラゴンブレス弾。


 シェル内に封入されたマグネシウムペレットが発射時の火花で燃え盛り、さながら火炎放射器代わりにアイスオーガを襲った。

 

 強化されている分、それはアイスオーガには余程致命的だったのだろう。斎城をそのまま放すと、自身の体を溶かす熱を必死に叩きながら地面や壁に体を擦り付け、元来た孔へと逃げ戻っていった。


「…効果覿面だな」

 

 アイスオーガの悲鳴を聞いて、他のアイスオーガも足を止めてこわごわとこちらを窺っている。


「おら、バーベキュー御馳走してやろうか、あぁ!?」

 

 天井や床に向かって、非強化のドラゴンブレスを発射して凄まじい炎を見せつけて迫ると、アイスオーガ達は巨体を押し合いへし合いしながら穴へと戻っていった。


 …ドラゴンブレスは確かにアイスオーガに有効ではあったが、それは大淵の強化もあっての事だった。優秀な銃士であれば同じ芸当も可能と言えば可能だが、ドラゴンブレス自体は他のモンスターへの殺傷性は皆無に近い。


「おい斎城、大丈夫か?」

「う、うん。ちょっと苦しかっただけ」

 差し伸べられた手を斎城が取り、立ち上がらせた。



「…あっ、女神様だ」

 上田直人はぽつりと呟いた。「女神様」に会える時はパーティ以外、危険な状況下ばかりだが、会えれば死ぬことは無い…というのが上田の常識的ジンクスとなっていた。


「え?…でも、いいなぁ、あっちのリーダー…味方に何しろこれしろ言う前に動いているし」

「ああ、「俺に続け」タイプだよな」

 両手両足に微弱な凍傷を負った拳闘士・遠見悟も頷いた。凍傷が微弱で済んでいるのは、自身のスキル・自動回復(小)がある為である。重症化する前に休息を取れば凍傷も回復できる。


「アレがS級ギルドっつーモンだよ。…お前らじゃあ百年経っても敵わねーけど、見習える所は見習っておけ」


 …誰も返事をする者は居なかったが、桑田はそれを是と捉えた。

 …上田に関しては無視したのではなく、憧れにして幸運の女神さまに見惚れているだけである。


「あー、大丈夫か。俺達は大淵小隊だ。凍傷を負っていたらウチの神官騎士が手当てしてくれるぞ」


「お願いします!ギルド・冥界幻魔騎士団団長の桑田でっす!」

 

桑田は背と腹、頬に凍傷を負っており、香山の前に立った。

「ひ、酷い凍傷…すぐに治療しますから、ちょっと寒いけど我慢してくださいね?」

「もー、本当酷くて!君の所は君や他のメンバーが皆有能揃いで良いなぁ~」

「は、はぁ…」

 香山はヒールに専念していて話は殆ど聞いていないが、桑田は構わずベラベラとしゃべり続けていた。


「…あれだけ元気なら大丈夫だな。君らは大丈夫か?必要ならエベラの売店で買って来たポーションを分けるが」

 ポーションは傷だけでなく、ヒールでは完全には治せないちょっとした腹痛や頭痛などの鎮痛・回復効果もあった。…ちなみに先般の海上行動中、途中から極めて高い乗り物酔い回復・耐性強化の効果もある事を発見したのは藤崎だった。

 

「…ホントですね。ああ、ポーションなら私達もしっかり備えてますから。…リーダーさんみたいにもっとしっかりしていて、頼れる人だったら良かったんですけど」


「…俺も仲間に育てられたおかげってクチさ。…結局は予め備わった能力とか、アタリハズレが物を言う事もあるだろうけど…無いモノは無いで諦めて、有るモノを育てるしかないだろうな…」


「…あんなのが育つとは思えません」

「だろうな…でも、もう少しやってみてくれ。君なら出来る気がする。…で、本当にダメだと思ったら放り捨ててしまえ」

「…まったくもう…上田君があんなのとつるむから!」


「えっ? …まぁ、あいつも俺の少ない友達だしな。できれば皆で仲良くやっていきたいから」

「じゃあ上田君がリーダーになればいいんだよ!」」

「うーん・・・おれはリーダーってガラじゃないし、アイツには勝てないと思うなぁ」


 だろうな、と大淵も同感した。やはり、こののんびりした性格の上田は最も正確な判断ができていて、このチーム内でも総合的に腕が一番立つだろう。…だが、決してリーダーには向かないだろう。チーム内の個性を纏められるタイプでは無いからだ。

 逆にあのお調子者のへっぽこリーダーは腕も判断力も無いが、自己主張と声だけは良く出る。…判断さえしっかりしていれば、取り合えずリーダーにはなれるのだ。 …後はせめて、謙虚で思慮深い人格を修身できればいいのだが


 例えば、ウチの小隊で言えば、尾倉がリーダーになれるか、というのと一緒だ。尾倉は優秀な戦士だが、味方を纏めるとなると閉口してしまうだろう。

 

 …かくいう自分とて、偉そうに分析しているが指揮官としてはデタラメすぎるのは自覚している。味方を後方に置いて単独行動する事の方が多い。…超人じみたスキルを持つが故の合理的な行動だとも思うのだが…


 とにかく、今はへっぽこギルドだが、いずれは大いに化けて、驚かせて欲しい。そんな期待があった。

 次に会う時はS級ギルドになっている…そんな再会になるかもしれない。



 退却していく冥界幻魔騎士団なるギルド戦士たちの背中を見送り、大淵は更なる下層を目指して再びダンジョン探索を続けた。

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