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転生先はパラレルワールドだった  作者: こぶたファクトリー
…英雄の出来損ない… 大樹 編 「落ちこぼれですが何か?」

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類は友を呼ぶ…?


 賭博場から逃げ出し、その道中でマリーが見つけた宿屋へと駆け込み、部屋を確保した。

 女子は六人部屋を、男子は四人部屋を確保した。…今はカジノで得た「儲け」を六人部屋の大テーブルの上にアランが袋ごと置き、ベッドの端に腰かけている。


「へっへっへっ…見ろよこれ?学校で渡された路銀の倍だぜ?」


「ああ、これだけあればもう金策とは無縁だね」

「…まさか本当に勝っちゃうなんて」

 水原と瑠衣が何とも複雑な面持ちで男子勢を眺めた。


「幸先良いって訳だ。…ところでアラン、どんな手を使ったんだ?」


 寺田はアランを振り返った。…しかしアランは怪訝な面持ちで寺田を見つめ返している。


「…どんな手って?」


「うまい事何か仕掛けがあったんだろ?勿体ぶらずにタネ明かししてくれよ~、なぁ、頼むって!気になって朝眠れなくなっちまうだろ!」


 呆れる一同に構わず、寺田はアランに友情ヘッドロックを掛けて問い詰める。


「でも本当に全勝負勝っちゃうんだもんね。ホントにマジックみたいだった」


「…もしかして、カードに傷とか汚れがあるのを記憶した、とか?」

 瑠衣が推理してみせた。


「あ…たしかに三枚、そんなカードがあったけど…後は全く分かりませんでした」


「え?…じゃあ?」


「…要するにアレって運…でしょう?」


 ごく当たり前のことを確認するように、アランはきょとんとした顔で皆を見渡した。


「…するってぇと、何か? …お前、心理戦も何も無しで、フォール無しでひたすら賭け勝ちまくってただけか?」


「…」

 アランが小さく頷く。


 …地雷原の上で激しいタップダンスを踊りながら無傷で通り抜けたようなものだ。…やはり、幸運の女神様に寵愛を受けて居るのだろう。


「…うん、だいたい九人分に分けられるな。ホレ、アラン、お前の取り分だぜ!少し多めにしといた」


「えっ、自分の分の路銀ならあるから、僕は良いよ」


「良くねーの。お前のお陰で勝ち取ったんだからな」

「そうそう。…正直俺も、面白いモノ見させてもらったし」

 大樹もアランに向かって笑いかけた。


「ダイキチ先生じゃダメだったな。モロに顔に出るから」

 …うんうん、と頷いている女子一同。

「…そっくりそのままお返しするっての」

 寺田の背後でやはり大きく頷く女子一同。


「とにかく、これだけあれば大手を振って旅ができるだろ。今日はゆっくり休んで…」


 コンコン、と部屋の扉が叩かれた。


「はぁーい?」

 扉に向かってマリーがおっとりと返事をした。…返事は帰ってこない。

「…宿の人?」

 水原が首を傾げた。


「…その割には気配が無かったけど」

 大樹が警戒しながらドアを見つめた。


「そりゃこんだけ離れてて、俺達は騒いでたからな。気付かなかったんだろ…って言いたい所だが、あんだけ大暴れしてきた後だしな」


 大樹と寺田は目配せし合い、音もなく扉の両側に取りついた。


 ハンドサインで寺田に扉を開け放つよう促した。 寺田もそれを了解し…扉を開け放った。


 …誰も居なかった。 …だが、なんとなく人の気配を近くに感じた。 


「…おっと、お気づきのようで? いやいや、怪しいモンじゃありませんって、若」

 依然として姿は見えないが…部屋の中から声がして鵺啼の柄に手を掛けた。

 視線の先には部屋の奥…ベッドに腰掛けて両手を上げた、軽装の冒険者が居た。革の肩パットを付けているくらいであとはマトモな防具すら身につけず、武器らしい物も持たず、雑嚢を背負っただけの20代前後の男。 


「だから怪しいモンじゃありませんって!」


「十分怪しいって」

 ミナと大樹がハモりかけながらツッコんだ。

「てめー、あのカジノの回しモンか?だったら容赦しねーぜ」


 寺田が拳の骨を鳴らしながらにじり寄った。


「違います違いますって! …俺は途中からカジノに入って、若たちとそこの少年の見事なバクチっぷりと見事な立ち回りに感動致しましてね。…是非とも旅のお供に加えて頂けないものかと思いましてねぇ」


 …案の定、寺田が眉間に皴を寄せながらこちらを見た。…どうせ、言う事も分かり切っている。


「…どうするよ、ダイキチ先生?」

「…俺に聞くのか…これ…」


 どうやってか扉、壁をすり抜ける…ような怪しい男。


 …敵意は無いというが…確証は持てない。しかし…


「…じゃあ、今のどうやったのか…実演して説明してくれたら考えるよ」

 好奇心に駆られ、そんな事を口走ってしまっていた。


「お安い御用♪」


 男の姿が床の下…男が立っていた場所へと消えた。…気配だけを頼りにするなら…自分の背後。

 

 振り返ると、男が大樹の影から出てくる所だった。


「驚いて頂けましたかね?まぁ、コイツはちょっとしたマジックでして。自分にも影がある状態で、俺の視界内に他人の影さえあればその影からこうして出て来られるんですよ」


「…凄いのと、取り合えず敵意は無さそうだってのは分かったけど…何で俺達のパーティーに加わりたいの?」


「そりゃあ若、類は友を呼ぶって言うじゃありませんか?…まぁ何というか、このパーティーはいつか大物になるんじゃないか、と思いましてね。 例えばそう…15年前、この南大陸…ガロック山脈の向こうで色々と大暴れしたって噂のダイスとその一味、みたいにね」

 

 …父の名を出されて動揺しかけたがポーカーフェイスを貫いた。…父の名前を知っていただけだろう。


「…どうしてガロック山脈の向こうの事が分かるの?」 

 水原が当然の疑問を投げかけた。 …ガロック山脈は前人未到の極めて過酷な山脈だ。越えれば恐らく…エーデンベルトの方へと抜けられるはずだが…


「山脈だけが向こう側への連絡路じゃありません。…この南に進むと、エーデンベルト方面へと繋がっていきますよ。…「迷いの樹海」という障壁はありますがね。それでもガロック山脈を横断するよりは遥かにマシな道があるんですよ」

 

「…パーティーに加えるというか、道案内をお願いするというのはどうでしょう?」

 里香が提案した。

 …確かに、地図に載ってない場所や、思わぬ近道を知っているかもしれない。


 全員に目配せした。…自分同様、完全に信用した訳ではないが、異論は無さそうだ。


「…分かった。明日から早速頼むよ。…俺は大樹。君は?」


「喜んで水先案内を仕りましょう。ナインと言います。今後ともどうぞよろしくお願い致しますよ、皆さん」

 ナインは邪気の無い笑みを浮かべて笑った。

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