獅子尊遜
「もしかシテ大輔、港だけじゃなくて海にもオンナ作っていたトカ!? すごい数デスよ!?」
海中から迫る赤黒い影…船の大敵、スティングレイ。 大淵大輔は手にした5.56㎜アサルトマシンガンを強化し、小刻みなフルオートで海中に掃射した。…巨大な影が力なく浮かび上がるが、それを盾としつつ他の海洋モンスターが執拗にオルカ号に迫ってくる。
「冗談じゃねー、こちとら海洋恐怖症だよ!」
弾倉を瞬時に交換しながら初弾装填。
「父さん!」
「大樹、お前…」
「皆は待たせてきた。 …俺、銃は使えないけど…魔術は使えるから、氷か雷で何とかできないかと思って…」
「…敵がこちらからの銃撃を最大限防ぐために海中を潜航してきやがる。…昔、フローズィアが海水に氷は相性最悪だと言っていたから…その中で使えるとしたら雷だが…そこまで海中深くに届くものかどうか…」
教官銃士の一人がハープーンを発射した。…ワイヤーによる回収機能付きの、三本の銛を並べて装填した…大輔の愛用するワイヤーアンカーを大型化した、アンカーショットである。
放たれたハープーンはオクトーに深々と突き刺さるが一撃では始末しきれず、二射目を撃ち込んだ。他の教官もハープーンを撃ち込み、合計三発でオクトーを撃破した。
「ま、マーフォークが来るぞッ!」
二メートルサイズの半魚人型の、艦のデッキに飛び乗って武器による白兵戦を仕掛けてくる海洋モンスターの歩兵的存在。…これに船の砲手が襲われたり、かまけている内に大型モンスターが接近して一気に船を沈めようとするのが敵の戦法だ。
「チィッ…大樹、ものは試しだ。…マオ、お前も協力してくれ! ヒナとアリッサは白兵戦に備えてくれ!教官方もさすがに海戦は俺達ほど慣れていない」
「まかせてッ!」
「リョーカイ!」
「良かろう。久々に暴れてやる」
マオがワンピースを脱ぎ捨て、ノースリーブの戦闘服姿になった。そして、莫大な魔力を消費して妖艶に成熟した魔王へと変貌した。
「どうだ、ダイキよ、姉の真の姿に惚れ直しただろう?…我が眷属となってあと750年生きられればいつでもこの姿を拝めるのだぞ? ああ、ただし、私を奪い合って父であるダイスと争うのは止めるのだぞ?」
「止めはしないが、父親としてはさっきのお嬢さん方をお勧めしたいな」
アサルトマシンガンの他に、右手にハープーンを装備した大輔が苦笑しながら嘯く。…目論見通りに行かなければ、実質大輔一人の射撃で船を守り切らねばならない
「…うん」
「…ぐぬぬぬ…!…貴様ら、後で覚えていろ!?」
「…さて…行くぞ。 …俺は敵の気配が分かる。合図したら左右の舷、それぞれの海面へ最大限の雷を叩き込め」
スキル発動…限定強化…魔力…全解放
「…オール・イン、だ」
大樹は小声で呟きながら魔力強化に可能な限りのマナとスキルリソースを割いた。
「…行けッ!」
まさに青天の霹靂か、晴れ空を割いた二筋の紫電の雷が海中に叩き込まれ…海が眩く輝いた。
大樹の眼には、マオの放った雷の方が巨大かつ強力に見えた。…そのおかげか、艦の周囲には夥しい海洋モンスターの死骸が浮き上がって来た。
「…こいつはすげぇ…さすがに壮観だな…」
流石の大輔も強力な魔術タッグに目を瞬いている。
「や、やっぱすげぇんだな、マオ姉って! 俺の雷よりデカくて強力だったな」
「…うむ。当然だ!私に魔術で敵う者などおらんのだからな!」
「うーん、口だけだと思ってたのに…」
「な、なにィー!?」
「あ、あー!あいつらを待たせてたんだ!俺はもう戻るよ!」
足早に逃げ出す大樹を睨んでいたが、やがて憂鬱に溜息を吐いた。
「…分かったか、ダイスよ?」
「…アイツのは確かに細かったが、凝縮されていたな。それでいてあの攻撃範囲だ。 …海中深くのをやったのは大樹の方かもな…」
「うむ。 …あれで術士でないというのだから、末恐ろしいものだ」
「…ああ。…どうもあの悪魔が俺の息子に何かしてやがる。…息子からもそれらしい話を聞いている」
「…どうするんデスか?」
「…どうにも。…俺が何をしようが、あの悪魔ならお見通しだろう。 …それでも大樹は、最後まで悪魔の誘惑に屈するような奴じゃない。…それに強くなっているのは体だけじゃない。アイツの心の成長も感じられた。…昔だったら、協力なんて申し出なかった。…父親に任せておけば絶対安全だ、ってな」
「…父親としてちょっと寂しかったりする?」
日菜子が悪戯っぽく大輔を覗き込んだ。
「…さっさと独立してくれる分には清々する、が半分。 …後半分はまぁ…そうかもな」




