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転生先はパラレルワールドだった  作者: こぶたファクトリー


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酒宴

 歓迎会は、とりあえず大成功だった。


 それこそ最初はどこの紛争当事国スタッフの会談かと思う程、重苦しく敵対的な雰囲気から始まった。

 …取り仕切った身として、正直に言えば、面倒になって逃げだしたくなった。

 せめて、幕末の討幕派と新選組が民間人を巻き添えにしてやらかしたような惨劇にならぬよう、この新拠点の二階奥にある座敷…(元)しらかわデイサービス・レクリエーションルームを酒宴の席とした。

 黒島と共に、向こうの筋肉自慢兵を軽く挑発する事で酒屋とコンビニからの荷物運びとして利用し、一切の酒と肴を用意した。

 まずは生ビールとソフトドリンクを一杯。…これを飲み干すまでの間が一番の苦痛だった。

 だが、ビール後に酒に切り替え、例の漆器細工が状況を変えた。

 珍妙ながら精巧な造りに、自分と香山、斎城以外の面々は興味深そうにそれを見た。

 それが五つもの見事な盃とサイコロになると、特に米国側の屈強な兵達は驚きと好奇心を露わにして、盃をつまんで見ながら、「これはどこで手に入る」「材質は何か」と、片言の日本語で熱心に尋ねてきた。

 空気が和んだ所で本番とした。例のサイコロで酒を飲ませ合う。罰ゲームの枠は大器とした。

 これが大いに盛り上がり、結局、途中からは酔っ払いが幾つかのグループに分かれて和気藹々と思い思いの酒を手に談笑していた。兵達と藤崎、尾倉は何やら軍事談義に花を咲かせ、兵の一人は星村と黒島、川村に自分の相棒である、元保護犬にして軍用犬の自慢…というよりのろけ話をしている。三人もそれに付き合って腹を抱えて笑っていた。


「取り合えず、上手く行った…ってトコデスかね?」

 アリッサが長テーブルを挟んで、一升瓶を持ちながら目の前に座る。自分の両隣には最初からガードするように、香山と斎城が座っていた。

「ふぅん…お二人とも、大淵とはナミナミならぬ仲、ですね…?」

 どこぞの御老公の腕利き家来が相手を問い詰めるような、芝居がかった決め顔だったが、いかんせん、顔立ちだけは愛らしすぎる。 …アリッサの部下も、藤崎と尾倉と、何やら長テーブルに零した水滴で戦域図まで描き始め、互いに目を据わらせながら熱い第一次大戦のifシミュレーションと…約一名、ワンコ談義から戻って来ず…誰も相手してやらないので…仕方なく自分が可能な限り相手してやる事にした。

 しかしこの雰囲気は…自分が大嫌いだったあの、半強制飲み会ではないか…自分はいつでも独り、隅でチビチビとジュースを飲んでいたっけな…

 だがここには、取り残された奴はおらず…と言うより、誰も取り残してくれない雰囲気だった。

 あの時の自分がここに居たら…こんな席を経験できていれば…あんな孤独な最期とは違っていただろうか。


「なんだ、時代劇にでもハマってるのか?こういう奴だろ?」コップを「ババーン」と構えて見せる。

「イエッッス!!あのお爺ちゃん、クールすぎマセン!?まぁ私、後からくるニンジャの叔父さまがイチバン好きなんですケド!」

「…俺もだよ。あんな人たちが本当にいれば…逆に世間はあんな物語、見向きもしないだろうな」

「深いコト言いますネー、大淵は」

 アリッサは掴んでいた一升瓶をぐい、とラッパ飲みして見せた。

「物語は物語デスよ。あなたはスーパーマンにはなれマセン。そんな事は貴方自身がイチバン知っている筈デス」

 温め直したコンビニの焼き鳥を美味そうに頬張りながらアリッサは言った。

「だから諦めろって?」

 なんだか寺の説教か問答みたいになってきたな、と思いつつも反射的に答えた。

「ノー。あなたにしかナレナイヒーローがアリマス。それを見つけるコトデス」

 

 俺にしか成れないヒーローか…

 なんだろう、それは?


「…分かった。探してみるよ」

 アリッサが取ろうとした一升瓶を奪い、全て飲み干した。


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