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転生先はパラレルワールドだった  作者: こぶたファクトリー
演目  伝説の英雄は復讐の旅路を行く

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殺戮処刑劇

 黒い影に貫き手を突き入れた。

 そのまま、人間でいえば脳の一部に当たる部位の内容物を引き抜き、他の上位者へと投げつけた。


「そうかよ…テメーらも奪うだけ奪っておいて結局返せないクチか…」

 

 落胆だけがあった。 …心のどこかでは、この異形共が改心して、メルヘンチックな力で…殺された人々を元通りに戻してくれるのでは無いか…そんな期待が確かにあった。


 …そんな事は起こり得ないと一笑に付すには、喪われたモノは余りに多すぎた。


「…アレだけの事が出来たんだ、本当はできるんじゃねーのか?勿体ぶってんじゃねーよ」


 後退る次の上位者に飛びつき、再び脳に貫き手を入れて拷問した。


「今ならまだ間に合うぞ?…ほら、少しずつ抜き出してやる。…さすがのお前らでも人間と同じで、コレをやられたら死ぬより苦しい思いをするみたいだな?」


 死にきれないのか、先ほどの内容物を抜かれて地上で激しく痙攣する上位者を見下ろした。

 捕らえた上位者が暴れるが、二本目の貫き手を突き入れられるだけだった。…他の上位者は助けるでも人質?…ごと攻撃するでもなく、ただ後退っている。


「…お前にはできないのか。じゃあもういい」


 両の手から内容物を抜き取り、虚空に放り投げつつ…次の死刑囚を探した。

 距離はどうでもいい…存在する以上、全ての距離が自分の間合いだった。


 その中で最もいい具合に…恐慌手前の個体を見出し、跳んだ。


 …確かに大淵はこれまでのどの人格よりも温厚であった。敵であっても修復可能な…慈悲を与えるに足る相手であれば、幾度となく殺さずに受け入れてきた。

 …そして結果的にそれが、自分を幾度となく救ってくれた。


 だが同時に、大淵は救いようのない敵には他のどの人格よりも最も容赦が無かった。…その本質はあのレイスですら最後まで見抜けなかった程に残忍であった。

 …殊に、最愛の仲間達と親友を奪ったこの上位者だけは譲歩のしようが無かった。


 …逃れようのない死に狙われた個体は触手を放って足掻くが、全て紫電の餌食になった。…気紛れに、

手近な上位者に熾煉w空間から取り出して、ダーツのように投擲した。正確なスローイングは一直線に上位者の脳天を貫き、一撃でその体が崩れ落ちた。


「お前はどうだ? …なぁ、何なら最悪…俺の仲間達だけでもいい。それなら交渉くらいはしてやるぞ?……やっぱりダメか…」


 脳天に紫電を突き立て、永遠に眠らせた。


「…そうか、もういい。…だったら後顧の憂いなくお前らを絶滅させてやれる」

 

 大淵は更に高空へと跳び上がった。 雲が近い。…幼き日に誰もが見たであろう、空を跳ぶ夢…さすがに飛行機や鳥のように飛行はできないが、このくらいまでは飛び跳ねる事が出来る。


「まったく…俺は俺で…これだけの事ができても…」


 …せめて、死人一人生き返らせる事すらできないのか…


 航空写真でしか見た事のない、東京と周囲の県…その全景を穢す黒い軍勢をぼんやりと眺めながら、失われた日々を思い返していた。


 …尾倉、お前の作る飯は美味かった。 …無事に退職したら、飯屋を開こうとしてたよな…

 …藤崎…最後まで暑苦しい奴だった。…お前の事だ、最後まで仲間達を守り続けて死んだんだな…

 …川村…この世界の俺がナンパして引き込んだんだってな…今ならわかるよ。…藤崎みたいな熱血馬鹿にはお前みたいなしっかりした奴がリードしてやらないといかんから、そっちで仲良くしてやってくれ…


 …そして…黒島…お前なら死ぬ間際でも仲間を笑わせていただろうな… …いつか…皆よりかなり遅くなるかもしれんが、いつかそっちに行くから、その時は…お前のイジリネタをたっぷり土産にしてやるよ



 遥かに距離を取った上位者達…恐らく、かつての都を越え、周囲の県だった場所まで逃げている。100メートルを超す群体が、黒々とした樹海のように見えていた。



「…思い知れ」

 …かつて大失敗してロキを目覚めさせた思い出…苦笑しながら目を閉じ、手を宙にかざした。


 …最早、態々電気のように導線を作ってやるまでも無い。

 …最早、標的を見て経路を図るまでもない。


 …もっと便利で効率的なこの、自分が察知できる気配…絶滅すべきモノたちの気配があるではないか。



 オーバースキル・アレンジ …剥奪。



 …眼を開けると、地上が近づくと共に、あれだけ存在していた黒い穢れが綺麗に消え失せていた。…気配も勿論、何も感じなくなっていた。


 …こんなに清々した勝利も、こんなに虚しい勝利もないだろう…


 涙を流したくとも、この体ではそれも最早敵わなかった。


 幾らかの衝撃を両足に受けつつ、大淵は再び瓦礫の中に立った。


 …幾らか雲と粉塵が流れ去り、微かな青空が覗いた。 それが希望の代わりだとでも言わんばかりに。


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