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転生先はパラレルワールドだった  作者: こぶたファクトリー
演目  伝説の英雄は復讐の旅路を行く

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ダンジョン ヒュバラ Boss

 トレーシーがリザベルと共に戻り、全員分の戦闘服を持ってきてくれていた。…数が足りない為、背丈のある銀と斎城は男物の戦闘服で我慢した。マオにはリザベルが常時持ち歩いている予備の専用伸縮戦闘服をリザベルが着させた。


「全く、酷い目に遭ったわ…」

 

 意外と似合う男性用戦闘服に袖を通し終え、やれやれと言わんばかりにアーマーを着直す斎城。

「…」

 ダイスからの咎めの視線を流し目でスルーしながら…服を得たからか、斎城は余裕の笑みを見せる。


「あーあ、冷たいなぁ~…前だったら「大丈夫か、日菜子?」の一言も言ってくれたのに。…素敵な奥さんに大樹君もできて、私はもう用済みかな~?」


「オバン~は用済み~ネ~♪…アイダダダダダッ!!」

 …着替えながらかつて流行った歌の…替え歌フレーズを口ずさんだアリッサが、斎城からヘッドロックを掛けられつつ脳天に肘ドリルを受けて悲鳴を上げた。

「だからアナタも同い年でしょうがッ!?それにまだギリギリ20代! …なーにがシュレディンガーのキャットよ!?」


 …その二人を諦めるようにダイスは同じく翡翠色のアーマーを着直した銀を見た。

 銀はやや硬質な黒髪をかき上げながら、その鋭い四白眼で反抗的にダイスを睨み返した。


「…何よ、その目は? …じゃあ大淵は中身が気にならなかったっていうの?」

「ああ。トレーシーがトラップと言っていたからな」


「お陰で良い物を見れるチャンスだったじゃない。…むざむざ見逃して今更拗ねてるのね?…小さい器…やっぱり失敗者だったわね」


「…」


 会話が成立せん、と言わんばかりに銀から視線を逸らし…ラナとパルムを見下ろした。


 …叱られた子犬のようにシュンと項垂れる二人に、

「…次から気を付けろ」

 とだけ、声を掛けた。


 …当人にそのつもりは全くなかったが…叱責したつもりのダイスの発声は、ダウナーながらひどく穏やかな声となってしまった。

 …叱られたはずの二人が何故か頬を紅潮させてダイスを見上げている。


「ズルいデス!教え子だからって甘やかし過ぎデス!」

「私にはあんなに冷たくしといて…ちょっと傷ついたなぁ…」

「本性を現したわね。…男なんてクールぶっててもこんなものよ」


「…」

 最早何も言うまい、とウンザリし始めたダイスは先へ進もうとしかけ…袖を引かれた。


「…私に何か言いたい事があるだろう?」


 頭に小さなたんこぶを作ったマオが、ダイスを睨み上げている。


「…二度とするな」

 ウンザリ顔で、ダイスはこの上ないハスキーボイスで言い捨てた。

「ちがーうっ!謝れぇ!」


 言い募るマオと持て余すリザベルを無視して、ダイスは先へと進んだ。


(…入り口であれだけ殺意を見せておいて、この温度差は何だ…?)


 無機質な岩質の壁を見つめ、手近な小部屋に入った。再び宝箱を見つけると、トレーシーが来るのを待った。

「…大丈夫、開けてみて」


 布を巻いた色とりどりの反物が幾つも入っていた。

「布系の万能素材ね、それこそさっきの戦闘服なんかも作りやすくなるんじゃない?」

「…馬鹿にだけ着せる服など作れないだろうか?」

「え?」

「…何でもない。行こう」


 収集品をトレーシーと自分のカバンに分けて詰め、更に奥へと進んでいく。


「…待て」


 後続する皆を制止した。

 …急速に感じ出したモンスターの気配。


「…囲まれている。モンスターだ」

「い、いつの間に!?」

「…急に気配を現わした」


 暗殺者のように気配を隠していた、と言うより、このダンジョンの力で隠されていた、と言った感覚だった。

「武器を構えろ。 …俺から離れすぎるな」

 

 …このダンジョンの気紛れ加減には参る…入った者を容赦なく殺すトラップかと思えば童の悪戯じみたトラップ、そして唐突な襲撃…

 

「…ダンジョンごとに結構性格が違うから。…多分、ここは極端だけど難易度自体はそう高くない方だと思う。…今のところは」 

 肩を並べたトレーシーの捕捉に頷きながら周囲の気配に神経を研ぎ澄ませた。


 岩壁が盛り上がった。 そこから壁をすり抜けるようにして現れた戦士の石像が人間のように動き出し、全方位からダイス達一向に向かって来た。


 ダイスは背中から散弾銃を取ると、既に初弾装填済みのショットガンを放った。


 12G・R(ライフルド)スラッグ ジャガーノートが巨大なハンマーで石膏像を一方的に破壊するように、石像を容易く貫通して粉々にした。

 

 ダイスの卓越した射撃は八発の銃弾全てを敵に命中させ、石像は巻き込まれたものも含め十体が姿を消した。


「…」

 シェルゲートから二発の12G4号バックショット「ブラッドレイン」を装填し、初弾を装填しながらダイスは周囲の気配を探った。


 散弾銃は現状、強化を併用する事で通常弾や非殺傷性弾を除けば星村謹製の6種類もの弾薬を使える汎用性の高さを誇っていた。全種類とも、映画や日本の狩猟でも一般的な…12ゲージの2ー3/4弾だ。

 装薬量はオーソドックスな12Gの三種類の中でも最も少ないが、ダイスのステータス上、これ以上長いシェルにすると強力にできる分、銃身寿命を加速度的に縮めてしまう。


 今装填している、6.1㎜の鋼球を30発散らばらせる「ブラッドレイン」に始まり、 焼夷弾・「ドラゴンブレス」、凍結弾・「ジャックフロスト」、雷撃弾・「サンダーボルト」、貫通さえすれば体内から致命的に破壊する(フラグメント)スラッグ・「グリムリーパー」、そして今放った、貫通性と打撃力、射程に優れた「ジャガーノート」だ。

 

 …これらは大淵専用弾として星村が製造しており、他の銃士が使っても十分役に立つが、桁外れのステータス効果と特殊強化を持つ大淵程の威力は望めない。また、ジャガーノートですら並の銃士では最大射程が精々100メートルであり、多くの者は銃士の存在意義でもある遠距離射程と精度を重んじ、ボルトアクションライフルを選んでいた。

 

 散弾銃にせよ拳銃にせよ、その単純・コンパクトな構造故に生産は容易だったが、銃士や他の騎兵・歩兵が扱うには貧弱…限定的過ぎた。


「…よし、気配は消えた。…だが警戒しろ…俺はこのダンジョンとやら…苦手だ」


 …この掴み所の無さはあの奇人やフローズィアを思い出す。 …相性の悪さと言うやつか。


「あっ、ヤバい…皆逃げて!…あっ、これ無理かな…」

 …いきなり逃げて、と言われて適切な方向に逃げられる者もそうは居ない。 


 …不意に足裏から重力が消え、ダイスは周囲の悲鳴に構わず、落下地点への目測と…拳銃を抜きながら壁の随所から放たれて来た…悪辣な自動ボウガントラップの矢を撃ち落とした。


(…これだけでは済ませてくれないだろうな…)

 高さはそう大したことは無かった。せいぜい30メートル。…この手のトラップにしてはやけに奥手な方だ…この程度ならワイヤーアンカーを使っても意味が無い。

 ステータスのお陰で彼女らも死ぬことは無い。


 …いや待て、何故俺がそんな事をトレーシーのように知っている?

 …いや…昔…前にもこんな事が?


 柔らかな砂の上に体を埋めかけたが、ダイスは顔を上げようとし…無理だと悟った。

 …自分の上に次々と女達が落ちてきて、ダイスは下敷きにされた。…抜け出そうと藻掻いた右手が、何か大きく柔らかなものを掴んだ。

 嫌な予感が…本能的な危険察知能力が働いた時には時すでに遅く、まだ自分の上に他の女達が圧し掛かっている為に身動きもままならず、逃れられなかった。


「えっ… いやあぁぁぁッ!」


 パァン、と乾いた音がして左頬を鳴らされた。…恐らく、過去にも同じ相手に同じ事があった。


「…まったく」

 ダイスは嘆きながらも体を起こし、少女らの体を退けた。…幸いにも、何人か気を失いかけているが、大怪我をしている者は居ない。

 パルムが頬を赤らめながらダイスを睨んでいた。

「…すまん」

 …例え自分に非が無くとも、こういう場合は素直に謝っておかねばならない、と思った。



 ゴゴ、と砂が揺れた。散弾銃を構えると、砂の中から現れた節足体…ダイスの動体視力を持ってして一瞬捉えた見事な顎肢…そしてどことなく寒気を催す触角。


「の、ノーッ!アリッサ、キモデブ君とGは心殺して我慢できますが、アレだけはダメデスッ!」

「いやぁ~ッ!大輔君ッ!」

「先生ぇ~!」

「これまた立派な百足(センチピード)だな。生き過ぎて化けたか?」と、マオ。


「止めろ、くっ付くな…!」

 少女達に引っ付かれ、首を絞められ…照準をずらされ、ダイスは額に青筋を浮かべながらも…結局射撃のタイミングを逸した。


 再びセンチピードは砂の中に逃げ込んだ。


「お、お前らはそこの階段や岩場から上に逃げろ…」


 …ある意味で敵以上に厄介な味方をさっさと逃がそうとしながら、ダイスはシェルゲートを解放し、ブラッドレインを抜き取りながらRスラッグ・ジャガーノートを詰め直した。


「ムッ、ムリッ…だって目の前にあんなののお腹が見えるんだよ!?」

 斎城がすっかり青褪めながら首を振った。…青白い肌と紅い目も相まって、まるでマオやリザベルと同じ魔族に見える。


「…死ぬよりマシだと思うが」


「ノーッ、それとこれとは別デスッ!」


「わーん、ダイス先生ぇ~!」


「先生、謝りますから…これからは触られても怒ったり抵抗したりしませんから…お願いです、助けて下さいッ!」


「…誤解を招くような事を言うな」


 …こんな苦労を、散々してきたような気がする…大変な事の方が多かったが…それでも…



 …それでも俺は、こんな日々を愛おしいと思っていた…と思う。  …多分…


 …何かが目覚めかける。…否、目覚めた。

 決して格好いい目覚め方では無いが…つい笑いたくなる程の、慎まやにして波乱の日常と非日常が目の前にあって…大淵は苦笑いを漏らした。


 大淵は上を見上げた。…逃げ遅れてへたり込むパルムの姿が見えた。…あのぼんやりドジめ。…胸と張り手だけ無駄に立派になりやがって。



 …節足部に数発のジャガーノートを撃って足止めしてから散弾銃を空間に放り込み、スイス生まれの9㎜拳銃を抜きながら構え、即座に別の節足部へ連射。


 正確無比な連射が節足体の隙間と言う隙間に集中し、巨大ムカデが激しく藻掻き苦しんだ。 …それを見た少女達への心理的ダメージの方が大きかったようだが。


「バカタレ、頑張ってとっとと逃げろ、パルムッ!」

 上で大合唱する甲高い悲鳴に向かって怒号を上げた。

「せ、先生も早くッ!」

「俺の心配よりテメーの心配をしろッ!」

 パルムが震える腰を励まして立ち上がり、また逃げ出すのを見届けてから…大淵は壁を蹴って跳び上がると、パルムを追って向かって来たムカデの頭部に空中で跳び回し蹴りを食らわせた。

 巨大ムカデが落下していく。


「…お前さんにゃ悪かったが、これで手打ちと行こうぜッ…俺も正直見ていてあんまり気持ち良くねーしな…!」

 …その際、壁の一画に掘られた窪みに宝箱が安置されているのに気づき…強化したワイヤーアンカーを撃ち込み、引き寄せて抱えながら少女達の後を追って逃げ出した。

 

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