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転生先はパラレルワールドだった  作者: こぶたファクトリー
開幕

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108/173

旅を終えて


 レイスを斃した大淵はそれから三日間、念の為にアルダガルドに留まった。…城壁の補修が進み、アースァルが続けて侵攻して来る気配も無かった。


 …近隣で他に妙な動きも無くなった。


「…自分に出来るのはここまでのようです。…一応、政府に呼ばれている身なのでこれにて一旦帰国させてもらって、これまでの経過を報告してきます」


「うむ。 …本当に世話になった。ありがとう。 …陛下が国を挙げて君の労を労いたがっていたのだが」


「…どうも、そういうのは気恥ずかしくて苦手なもので。 …俺らしくこのままこっそり失礼させて頂くよ」

 クリフェとカナの頭を撫でながら大淵は苦笑して見せた。

 

「ああそれより…今回のアースァル軍を撃退したのは、アルダガルドの諸隊の戦果という事にしてもらえないだろうか。…大淵大輔は敵兵を一人も殺さず、あの妙なモンスターだけ倒していたと。 …そうしてもらえないと、俺は帰国後に罪に問われる可能性が高いので」


「なんと… ああ、勿論お安い御用だよ。そういう事なら、こちらでなんとかしよう。」


「次はいつこちらに寄らせて頂くかわかりませんが、クリフェとカナをよろしくお願いします。…ああ、念の為にこれを」 


 転移の魔法石…5組10本存在する、翡翠色の柱状の水晶体。


 各水晶体とは互いに人の行き来が可能だ。これをブレメルーダのリノーシュの下に一つ、そして今、ハサムにも一つを渡した。


「日本とブレメルーダに繋がっています。何かあったらこれで往来して連絡できます」


「こんな貴重なものまで… …どうお礼したらいいものか…」


「…クリフェとカナがこうして健やかに育ってくれている。それだけで、ハサム殿が思っている以上に俺達は幸せなんですよ」


 ハサム邸の皆に見送られ、大淵とカリューは転移の魔法石を使って日本へと帰国した。



 日本では4月となっていた。拠点の休憩所に転移した大淵とカリューは穏やかな春の晴天の下、代々木公園内で満開を迎えつつあるソメイヨシノの花々を一望できた。…晩秋にあったスタンピードや戦闘で失われた木々も多くあったが、それでも美しい桜の花が舞っていた。


「おお、こっちは春なのか、良いなぁ! おい、酒でも開けて花見をしようぜ!」


「あー、そうしたいのは山々だが、嫌な事から先に済ませないとな」


「おっ!帰って来やがったぞ!」


 二十部屋も並ぶ個室の一つから黒島が顔を覗かせた。


「あっ、ほんとだ」

「お、お帰りなさいっ」


 忽ち小隊員の全員が出迎えてくれた。


「…すまんかった、我儘してきて。ああ、クリフェとカナ、ハサムさんも元気だったぜ。…戦争は一週間…大規模な地上戦にはならずに終わったよ。…ちょいと気味の悪いモンスターとやり合う事になったり、そのせいでアルダガルドに犠牲も出てしまったが」


「何にせよ、二人共無事で良かったぜ。それで、お前は捕虜量産マシーンになっていた訳か。その映像があれば、面倒ごとが一気に楽になるんだが」


「…」


「…おい、冗談だろ…?」


「…仕方なかったんだ。…気絶するような連中じゃ無かった。」 


「…わかった、媒体を処分しよう。大淵、記録媒体を寄越せ。…ああ、待て」


 黒島はセキュリティカメラの死角を確認した。

「…警備室には何度も茶菓子配りしながら茶飲みにいったんでな。カメラの視界は分かる。問題ない。媒体をくれ」


 大淵は良心の呵責を感じながらも記憶媒体を手渡した。黒島は誰も使わない休憩所の灰皿の上にそれを持っていくと、尾倉からライターを借りて記憶媒体を燃やした。


「…面倒にはなるが、余程いい。大淵、お前は一応、錯乱して止めに入った隊員達を暴行したことになっているから、今から警察に連れて行ってもらう。…いいか、何を聞かれても、良く覚えていない、分からない、だけを繰り返し答えろ」


「…すまん」


「大淵ィ~」

 背後から羽交い絞めにされ、大淵は慌てた。

「あっ、アリッサ…!?」

「よぉくもヤッテくれマシタね~!?」

「ま、まて、悪かった!誰も怪我しないようにはああするしかなかったんだ!」


「あー、アリッサ、気持ちは分かるが面倒になるからやめろ。大丈夫、帰ってきたらお前は一日、大淵を煮るなり焼くなり、桜咲く隅田川に沈めるなり好きにしていいから」

「イエッス!」

「ま、マジかよ…」


「あ~、皆もシナリオはこうだ。今さっき、いきなりぼんやりした大淵が戻ってきた、と。で、心神喪失状態っぽかったので警察に連絡して保護してもらう。取り押さえたのは俺と尾倉と藤崎。皆はただ騒ぎを聞きつけて見ていただけ、ってな」


 入念に無難な筋書きを申し合わせ、大淵は通報され、駆けつけた警官に大人しく連行されていった。


 …大淵が彼の世界で一週間にも渡り何をしていたのか、その行動記録が無い事は問題視されたが、結局何の証拠もなく、また隊員への暴行事件については全隊員との和解が成立しているという事で敢えて大事にはせず、命令不履行への違約行為への処罰として五日間の謹慎…拠点内への軟禁という結果に収まった。

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