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転生先はパラレルワールドだった  作者: こぶたファクトリー
開幕

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103/173

戦火の中で

「おーい!」


 バイクを取りだした所、間延びした声と巨体が後ろから追って来た。


「カリューか…どうした?」

「いやさあ、よくわからねぇが黒島に「お前は小隊員でも特定勢力に属しても居ないから自由にしろ」って言われてよ! 魔王はダメだって連れて行かれたけどな」


 …考えてみれば確かに、国賓である魔王やその護衛であるリザベルならともかく、カリューが日本に行っても行き場のない、「異様なお客さん」だ。…日本側もカリューも困るだろう。


「…まぁ、今更アソに帰れってのも酷いしな。そうだな、取り合えず俺と行くか」

 バイクを戻し、高機動車に乗り込んだ。…自分の騎兵スキルは活かされないが、見よう見まねでマニュアル操作の運転自体は覚えた。

「へへへへ、戦なんだろ?俺が百人力と言わず千人力になるから、任せてくれよ」

 人懐こいネコ科の猛獣のような獰猛な笑みを浮かべ、カリューは陽気に笑った。

「…暴れるのは良いが、絶対に敵を殺してはならないぞ。…アルダガルドに加勢はするが、停戦と仲介が目的だからな」

「ふーん。じゃあ棒ッ切れに拳骨相撲だな。ちぎっては投げて、一人残らずぶちのめしてやるぜ」


 実際、カリューのパワーと耐久値は桁違いだった。…HPは牛鬼より少ない70000ではあるが、パワーとスピード…味方の援護があった牛鬼戦と比べるのは短絡ではあるが、体感的には、一対一なら牛鬼よりも厄介に感じた。


 …しかし、アースァルとはどんな国なのが…また、どんな国家理念を持ち、そもそも何故今回アルダガルドに宣戦布告してきたのか。 …ほんの一ヶ月前まで、アルダガルドにそんな雰囲気は無かった。


 少なくとも、あの時説明された5000キロ圏内にその国は無かった筈だ。…この世界でそれから二ヶ月後に攻めてきたという事は、少なくともそのアースァルは既にその時には入念な侵攻準備を着々と進めていたことになる。


 車を走らせて三日目の昼、黒煙を上げるアルダガルドが見えた。 

 ロナレの大河の対岸から砲撃が行われ、南城壁を削った。その南城壁上から高射砲が撃ち返され、対岸の砲兵陣地に爆発が起こった。


 都合6日経ったが、砲戦の段階か…なら、自分が何とか対岸に渡って…

「なぁ、大輔、アレは何だ?」

「ん?」


 …ロナレ側の上流から、幾つもの黒々とした物体が流れてきた。…軍船か!?


「クソッ、あんなものを持っているのか…!」

 

 …南側の城壁はへこみだらけになっている。あの穴から侵入してアルダガルドを攻めるつもりか?…だが、味方が突入する間は敵の砲兵は人質を取られたような物だ。一方的にこちらの高射砲によって叩かれるだろう。


 車を走らせ、城の南側に向かった。

 …城壁上の兵士たちがこちらに気付き、武器を振り上げて反応した。 …この高機動車を見れば味方だとすぐに分かるだろう。


「…いいか、カリュー重ねるが絶対に人間を殺すな。…そして無理せず、危なくなったらいつでも好きな所へ逃げて良いし、俺を呼べば俺の収納に入れてやるから、お前も死ぬなよ」


「へへへ、優しいなぁ、旦那様は!あ、言っちまった。けどまぁ、誰も居ないから大丈夫か!」


 大淵は車両を減速させた。…車体に矢や弩の攻撃が被弾し、ガタガタと揺らされる。

 停車させ、それぞれ座席から降り立った。


 車両を収納しながら…素振り用の長大な木刀を二振り、カリューに手渡した。


「…散々殺すなと言ったが、もし…万が一、殺されると思ったら、迷わず殺せ」

 こいつがやられる姿など想像もできないが…何事にも想定外は起こり得る。


「あいよ!」


 大淵自身も木刀と予め用意していたスタン・ガンに切り替え、戦場に飛び込んだ。


(…しかし妙な戦場だ…これだけやり合っているってのに、敵意が薄い…こいつら、一体何のために戦争しに来たんだ…?)

 

 ぶっ殺してやる、奪ってやる、犯してやる…敵なら必ず持っている、そんな気配が薄いのだ。…寧ろ、敵に喜びの感情さえ感じた。上陸した敵兵は嬉々として…スキップでも踏み出しそうな軽やかな足取りで城へと向かってくる。そして異様なのは、武器こそ持っているが、防具らしい防具は見当たらないのだ。

 …軍費事情の問題かもしれないが、それにしても防具一つ付けず、対岸に広がる砂漠地帯を凌ぐための外套と連中の軍装である衣服だけだ。


 そして黒々とした軍船…といっても、かき集めた漁用の小舟を連結して盾とタラップを兼ねた鉄板を側面に立てた、泥縄式のシロモノだった。 …そんな情けないシロモノでもこうして見事、全ての船が上陸を果たしていた。 これには感嘆する。

 

 …だがこれで、敵の砲撃が止むはずだ。

 壁上の砲もそれを見越して畳みかけるように敵砲陣地に砲弾を降らせた。


 大淵の到着に勢いづいたか、城門が開かれ、中からアルダガルド軍が鬨の声を上げながら出撃してきた。

 …遠くから砲声。

 味方がいるにも拘らず、敵の砲は撃ってきた。

 馬鹿な…


 案の定、目の前で上陸を果たした地上部隊が幾人となく誤爆を喰らって宙に舞った。


「おー、おー、豪胆な事だなぁ!?」

 カリューが感嘆したように声を上げた。

「…いや、イカレてやがる。味方ごと殺すつもりだし、アイツらもそれを知ってて上陸してくるぞ…」


 …つまり、死を恐れない…というより、死ぬために突撃してきている…そんな漠然とした意思を感じた。…だとすれば、これまでに感じた違和感も説明がつく。 


 だが、何のために…?変な宗教じゃあるまいし…ただ死にに来たというのか?

 敵兵が辿り着き、大淵に斬り掛かってきた。その剣を掴み取りながら回し蹴りで側頭部を蹴り払った。

 …これで昏倒するだろう…

 

「へ…はははは!」

 男は焦点の合わなくなった目で笑い出し、尚も大淵に斬り掛かってきた。

 剣をガントレットで防ぎつつ、大淵は驚愕した。

「何だ…こいつは…?」

 

 …あり得ない。加減したとはいえ、確実に意識は飛ぶはずだというのに…

(浅かったか…!?)

 もう一度…今度は鳩尾に一撃。…23式を着たアリッサですら気絶させた一撃。…死んだら御免だ。

「はははッ、ははは!」

 笑い狂ったまま男は襲い掛かり続ける。剣を奪えば素手でも殴ってくる。…腕が無くなれば噛みついてでも襲ってくるだろう。

 だが、敵意は薄い。…あくまでこちらを殺したいという思いは副次的なのだろう。


「こいつは…ダメだ…」

 続々と誤爆を受けながら迫ってくる兵達も同じだった。…どれも顔に言い知れない狂気が宿っている。

 

「あいてーっ!」

 打撃が効かず、男を羽交い絞めにして締め落とそうとしていたカリューが背後から思い切り切り付けられていた。…猪の毛皮はスッパリ切れて、背筋逞しい背中が露わになるが、その強靭な皮膚の薄皮を貫通できず、葦の葉で傷付けた程度の…凝視すれば薄らと滲んでいる出血しか無かった。 …ゲームに例えるならダメージ1、か。


「カリュー、ダメだ…こいつらは…殺すしかない。 …剣を使え」

 自分達を殺す事は出来なくとも、アルダガルドの兵や民を殺す事は十分に可能だ。大淵は風神騎槍を取り出した。

「…クソッ…」


 …これで、一線を越える事になる…

 深紅に染まったストームランスから、殺人旋風が巻き起こされた。 …上陸兵の九割強を巻き込んだ旋風はミキサーとなり…一陣の血煙となって消えていく。

 …ミキサーに掛けられた兵達は、その間際まで歓喜の笑みを浮かべていた。 …一つの人生の達成だとすら言わんほどに。 


 背後に駆け付けたアルドがルド兵が呆気に取られてその凄絶な光景を見届けていた。


 …尚も砲撃を続けて来る砲兵陣地。大淵は空間から12.7㎜機関銃を取り出すと、銃架も無しにアーマーの筋力アシストのみで身構えた。


 ドドドドドド、と赤く輝く曳光弾が弧を描いて300メートル先の対岸に吸い込まれていく。 …間もなく、砲弾の火薬に引火したか、対岸で大爆発が連鎖的に起こった。 それを確認すると大淵は機銃を空間に放り込んだ。


「だ、ダイス殿なのか…?」


 声に振り向くと、ハサムが立っていた。

「…ひと月振りだが、嫌な再会になってしまいましたな」


 大淵はばつが悪そうに苦笑いした。

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