表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

第一話:新卒ジムニー女子、パパの愛車で爆走開始!?

-------------------------

桜木 萌 @新卒ジムニー女子 2025年04月01日 08:00 JST ID:moe_jimny

今日から社会人デビュー!

まさかの初日から泥だらけ。

これも地方の洗礼なのかな?

パパのジムニーでどこまで行けるか。

ちょっとだけ、楽しみになってきたかも!

#新卒 #ジムニー女子 #地方移住

-------------------------


新卒の桜木萌。

朝、慣れないジムニーの運転に四苦八苦していた。

真っ赤なボディに派手なカスタムが施された愛車。

それは、萌自身が選んだものではない。

父親・巌の趣味が爆発した結果だ。

萌の胸には、複雑な思いが渦巻く。

都会の喧騒を離れ、なぜこの地へ来たのか。

その答えを、まだ萌は知らない。


特に苦痛なのは、

父が自作した「娘専用オフロードコース」での運転練習。

泥だらけになるジムニー。

その度に、都会育ちの萌は小さくため息をついた。

泥は、諦めきれない何かの象徴のようだった。


その日も朝からだった。

父・巌からの熱血指導。

ジムニーの「最速理論」に関するうんちく電話。

それが萌を襲う。


「萌!もっとアクセルを踏み込め!

ジムニーは唸るためにあるんだぞ!」

受話器から響く父の豪快な声。

萌は思わず口元を歪める。

心の中で叫んだ。

「もう!パパのバカ!」


ジムニーは既に泥だらけ。

萌のスーツ姿には全く似つかわしくない。

それでも、このジムニーがなければ。

会社にたどり着けない現実がそこにあった。

まるで、親の用意した道を走る自分自身のようだ。


会社に到着。

萌のジムニーは、社員たちの注目の的となった。

営業部マネージャーの山村梓が、

優しい笑顔で声をかける。

「桜木さん、その車、すごいわね」

萌は顔を引きつらせ、苦笑するしかない。

「父の趣味なんです…」


経理兼雑用の田中恵子。

クールな雰囲気で、眼鏡の奥の目が光る。

萌のジムニーの泥汚れを見て、淡々と告げた。

「…領収書、ちゃんと出してよね。

泥汚れの分も」

萌は思わず、身を縮めた。

この会社の「普通じゃなさ」を肌で感じる。

田中がジムニーの話題になると態度が軟化する。

「本格クロカン系ジムニー女子」であることは、

萌はまだ知らない。


会社の朝礼。

社長の岩田剛が、豪快な笑みを浮かべて歓迎する。

彼の愛車、無骨な「ランクル70」が駐車場に誇らしげに停まっているのが見える。

「地域活性化と社員のQOL向上」を謳う。

岩田社長は萌のジムニーを絶賛した。

「最高の相棒だ!」

萌の自由な活動を許容する発言。

萌は確信する。

この会社は、やっぱり普通じゃない。

だけど、それが少し、心地よかった。


萌は帰宅後、父親に今日の出来事を話した。

巌は萌の泥だらけのジムニーを見て大喜びする。

「萌!最高の勲章だ!

ジムニーは泥だらけになってこそ輝くんだ!」

興奮気味に語る父の横顔。

その瞳の奥に、萌は遠い日の夢を見る。

父の愛車である「レクサスLX」では決して味わえない、

泥だらけの道のロマンを。

「ジムニーは、お前の代わりに転ぶんだよ。

泥を被っても、ちゃんと走り続けるからな。」

父の言葉が、なぜか胸に響く。

そして、その日のうちに、父はジムニーを徹底的に洗い、

どこか傷がないか、隅々まで点検し始めた。

萌は、父親の愛情が、こうして形になることを知った。


そして、いつになく真剣な表情で語りかける。

「お前がジムニーを乗りこなせば、

この地方のどこへでも行けるようになるぞ。

パパは、お前が自分の力で世界を切り拓くのを。

応援しているんだ!」

萌は父親の過剰な愛情に戸惑いつつも。

その言葉の奥に、

温かい、確かな想いが込められていることを感じ取った。

胸の奥に、じんわりと熱が広がる。

大人になるって、誰にも見えないところで,

自分で決めた泥を、静かに拭うことなのかもしれない。


夜。

萌は自分の部屋でスマホを手に取る。

今日の出来事を親友の雫にメッセージで伝える。

雫は萌の幼なじみ。

ドタバタ社会人生活を見守る癒しの存在だ。

「萌、あんたらしいね。

でも、楽しそうでよかった」

雫からの返信に、萌はクスッと笑った。


萌はベランダから外に出た。

月明かりがジムニーを照らす。

運転席に座る。

ハンドルを握る。

泥だらけの車体に触れた。

「ヌルリ」とした感触に、ゾクリとする。

今まで父親の趣味だったジムニーが。

少しだけ、自分自身のものになったような気がした。

窓を開けると、ひんやりとした夜風が頬を撫でる。

不安だらけの新社会人生活。

でも、このジムニーとなら。

どんな場所へでも行ける気がした。

萌は、静かにアクセルを踏む仕草をした。

それは、小さな決意の足音だった。


-------------------------

桜木 萌 @新卒ジムニー女子 2025年04月01日 17:00 JST ID:moe_jimny

初出勤、無事終了!

パパのジムニーで、

まさかの泥だらけになるとは思わなかったけど。

この会社、なんか面白いかも!

明日からの仕事も頑張るぞー!

#社会人一年目 #地方の洗礼 #初日終了

-------------------------


次回予告!

萌:「佐藤先輩!私、初仕事で泥だらけって、社長の趣味なんですか!?」

佐藤:「おお、萌ちゃん!それがみちくさクリエイト流の洗礼だ!最高の相棒と泥だらけの青春を謳歌するんだよ!」

次回、第2話:みちくさ経費と山猿先輩!~泥だらけの初仕事~

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ