式典【二】の[三]
「園遊会で私達が襲撃を受けた時、主だった一族の当主が凶刃に倒れ死を覚悟しました。ですが……そこに旅の剣客だった恩人と出会ったのですよ」
当時を思い出した狼英が、懐かしそうに目を細めて答える。
「旅の剣客……?」
水竜も思い出した。
暗殺された当時の皇帝が気に入り、自ら招いた一人の剣客の事を……。
「あの方の正体は……神の国の天皇でした。身重の皇后の為、この地に願掛けに訪れたのです。そして……暗殺事件に居合わせたあの方は、私達を助けてくれたのですが……深傷が酷く、私と長子三人は宦官になるしか無かったのです。狼王は幸いにも傷は深く無かったのですがね……」
表情を消して狼英が言うと、狼王は苦虫を噛み潰したような顔になる。
「……あの後、他の皇女や皇子も調査して見付からなかったのは何故ですか?」
気になって水竜は問い掛けるが……。
「私達は天皇の好意により、海を越えて神世の国に居ました。産まれた姫の世話係をしていたので、見付からない筈です」
涼しい顔をして狼英は、茶を一口飲む。
「……そんな……では……何故再びこの国へ?」
狼英の幸運さに、水竜は目眩を覚えながら問い掛ける。
「……あぁ、それは……。姫の両親である天皇皇后夫妻が暗殺されたからです。幼い姫を連れて逃げて来ました」
悲し気な表情で、狼英は答えた。




