式典【一】の[十]
月商会本店の一階奥は、食堂と調理場となっており、最小限の月一族と本日新しく入った閃一族の者が昼食当番だった。
「姫は昼だとガッツリ系を好むから……バターライスとハンバーグ、中華チゲスープと春雨サラダだな」
黒髪を一つに纏め、前髪に金色のメッシュが入っており、フリルの付いた黒いエプロンを着た青年は説明すると、フライパンにバターを敷く。
月狼爪。月商会本店商会長付秘書。狼王の弟で十人兄弟の八男。
「姫はガッツリ系が好きなのですね」
しっかりとメモするのは、金色の髪をきっちりと一つに纏め、フリルの付いた白いエプロンを着た可愛らしい顔立ちの青年。
閃白也。閃一族で光宛の直ぐ上の兄。六人兄弟の五男。
「素早く火に掛けたら、バターをフライパン全体に敷く」
先ずは先に狼爪が手本を見せて教え……
「こうですか?」
白也も実践して狼爪に見せた。
「そうそう……そんな感じ……」
「昼食まだぁ!?私、もう腹ペコなんだけど!!」
階段を駆け降りる音と共に、芽が調理場に顔を見せる。
「まだ出来てないよ、もう少し待て」
困った顔をして狼爪は芽に注意した。
「ちぇっ!!じゃあ此処で待つ!!」
「勝手にしな、邪魔だけはするなよ」
頬を膨らませて芽は言うと、狼爪が呆れて溜め息をつく。
……ふふ……本当の兄弟みたいだ……
二人の様子が面白くて、白也は笑ってしまうのだった。




