黒刀【ニ】の[五]
烈鋼が心の中で自分の無力さを叫びながら逃げていると、不意に一輪の花弁が落ちてきた。
……桜の花……?この季節に……?あっちか……。俺にも理由は分からないが、その方向へ向かった方が良いと思って俺は走り出す。
「……誰かが闘っている気配がするわ、北の方角に三つと、寮の方角に一つ。……私も加勢するべきだと思うんだけど……」
妖気に気付いた芽は不安そうな顔をすると、光宛に問い掛けるが……。
「その必要は御座いません。恐らく帝が狙われたのでしょう。寮の方は特に心配などありませんので、このまま娘も部屋に戻られた方が宜しいかと存じます」
涼しい顔をして光宛は言い切ると、芽に戻るように促す。
「でも……助けられる命があるなら私は助けたいわ!!」
思わず芽は光宛に叫んでしまう。
「……姫、御気持ちは分かりますが……
公に一度姿を出せばもう二度と市井に出ることは敵わない所か、暗殺者からずっと狙われ続けることになってしまうのですよ?」
諭すように優しい口調で、光宛は芽に問い掛けた。
……暗殺者……!!
芽の脳裏に、亡き両親の最期が過る。
「……姫は関わるべきではありません」
光宛はきっぱりと芽に厳しく言い切るが……。
「……それでも、この両手で伸ばせる距離にある命は救いたいの!!」
芽は諦めずに自分の気持ちを光宛に言い放つ。




