黒刀【ニ】の[四]
「あぁ……帝……やっと御越しになられたのね?」
桃里が大きく胸元を開けた衣装で長い椅子から立ち上がりると、烈鋼に近付こうとするが……。
「そこまでです、桃里妃……。この香は生物系妖を弱体化させる禁止香ですね。……この香を焚いたと言うことは……帝を害する謀反を企てて居たという事、断じて見逃しませんよ」
烈鋼を守るように立ちはだかった水竜が言い放つ。
「だったら何ですの?どの道、全員死ねば証拠はありませんわ」
笑って桃里が言うと、玉のように白い肌が皮みたいにベロリとずる剥け、桃里の骨が剥き出しになって巨大化する。
他の侍女や下女も、骨となって巨大化して行く。
「くっ!!」
青ざめた表情のまま、水竜は水の結界を張って防ぐ。
「………長くは持ちませんっ!!」
水竜が妖力を使いながら叫ぶ。
「此処は……俺と水竜に任せて……行って!!」
両手に氷の刃を纏った冷波も叫んだ。
「そんな……嫌だっ!!」
「行くぞっ!!」
叫ぶ烈鋼を煌牙が担いで庭から飛び出す。
『追えっ!!逃がすなっ!!』
おぞましい声で桃里が叫び、白桃宮から巨大な骨が無数に飛び出して二人を追い掛ける。
「ちっ!!このままじゃ二人とも殺られちまう!!」
北の森を走りながら煌牙は烈鋼に言うと、地面に降ろして背を向けた。
「此処を真っ直ぐ抜ければ下女達が住む寮がある。朝まで隠れていれば何とかなる筈だ。いけ!!烈鋼!!」
「つっ!!畜生!!」
煌牙に言われ、烈鋼は泣きそうになりながら走り出す。
くそくそっ!!
俺は仲間を見捨てて逃げることしか出来ないのか!?
何が帝だ、何が天上人だ!!
仲間を守れねぇで畜生!!
こんなのが俺だなんて情けなさ過ぎる!!




