黒刀【一】の[八]
「ほぉ?下女を守る影が居るとはな……」
執務室に入った三人は、奥の席に座る青年に報告し、青年は書類から顔を上げると笑みを浮かべた。
黒髪を緩く結わえて背に流し、黒い着流しを着た青年は切れ長の瞳を剣呑そうに細める。
黒烈鋼。大国黒の若き帝であり、最も尊き天上人。
「この間俺に文句を言って俺に命令した女が……父親である宰相格呂白と何か企んでらしいのはてめぇらも知ってんだろう?俺達はそっちで忙しいんだ、無駄に敵を増やしている余裕もねぇ。だから二人組は一先ず放っておけ」
烈鋼は二人に命じると、再び書類へと向き直る。
「……帝がそう言うなら……」
「分かったよ……」
「はいはい……」
烈鋼に言われ、水竜、冷波、煌牙も諦めると書類に取り掛かるのだった。
それから昼を挟んでの数時間後、芽と光香は五時前には他の下女仲間と共に寮へと戻って来た。
「あお……宦官の方々って皆美しい方ばかりだったわね」
「えぇ、本当に目の保養だったわ」
下女達は布団を敷きながら熱く語り合う。
「ほらほらほら!!体調も悪くなる前に早く寝なさい!!」
「「はーい」」
先輩下女に言われ、他の下女仲間達も灯りを消すと眠りにつくのだが……。
……寝られない……
芽は天井を見詰め目を細めていた。
その様子を見て、光香は思わず苦笑する。
鼻に付く独特な香が焚かれた白桃宮の広間では……。
「流石はお父様、この香さえあれば……帝と言えど子犬同然よ。お付きの三人を消した後に、じっくりと帝をいたぶり殺して上げるわ。私に屈辱を味合わせた事、思い知らせてやるわよ。おっーほっほっほ!!」
桃里は高笑いして足を組む。




