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入れ替わりの悪役令嬢(あなたが私で私があなた~運命は交差する)  作者: 万月月子


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7/8

あなたならわかるはずよね?

天気が穏やかでロイの体調が良い日海岸へ、ヒメタカラ貝を拾いに行く。


私はロイにぼろ布で髪を覆われて手を引かれ砂浜を歩く。

「大丈夫だよ。兄ちゃんが一緒だからね」

優しい緑の瞳に私がうつっている。


金髪の子供は人買いに高く売られるからとジュリアは何度か人さらいにさらわれそうになったことがあるらしい。


なんて下町は物騒なのだろうか。だから過保護な程にロイは私を扱った。

ジュリアが怖い思いをしないようにジュリアが危険な目に合わないように護るのだ。


決して私を一人にはさせなかった。


ロイの行動一つ一つが、愛されることを知らない私の心にぐんぐん染み込んでいく。

枯れそうな心に雨を降らすように、ただ愛を注がれる。

私はロイに育てられる花のよう。

浴びせるような愛に生かされているのだわ。

他には何もいらない。

贅沢は何一つ望まないから、いつまでも私を愛して。

私の願いはそれだけだから。


それなのにロイの体調はどんどん悪い日が多くなっていった。


ロイが寝込む枕元でヒメタカラ貝を磨いていると、ロクデナシが現れた。


「あーあー。可哀想にな。おまえが売られればロイの薬を買えるって言うのに」

ゾッとするような下卑た声でロクデナシが私にささやいた。

まるで悪魔が誘惑するように。

「さぁ、一緒に来るんだ。ロイが大事なら来い」

青ざめた私を見下ろして手を差し出す。

絶対に嫌だという気持ちとロイを助けたいと思う気持ちがせめぎ合う。

「俺が連れてくんじゃない。おまえが自分の意志で売られに行くんだ」

あぁ、なんてズルくて卑怯な男。

私を抱えて連れ去るのではなく、私に選択させることを楽しんでいる。

選択も何も一つしか無いことを知りながら。

私はこのロクデナシの手を取るしか無いのね。


どんなに必死にヒメタカラを磨いても、微々たる稼ぎにしかならないのよ。

ロイのために、私が人買いに売られたのなら・・・。

その先の人生がどうなるかなんてわからない。

それでも、何物にも代えがたいロイを助けることができるなら・・・。

私が震える手をゆっくりと差し出そうとした時。

「ダメだよ」

ロイが掠れる声で制した。

「ジュリアが売られたお金で買われた薬なんて死んでも口にしないから・・・」

頭を起こすこともできないのに、私を、ジュリアを守るのね。

「母ちゃん、父ちゃんを追い出して」

ロイの言葉で入り口に母が立っていたことに気づいた。

母の顔色は蒼白だった。

父は母を見て鼻で笑う。

「どうする?拐って売ってきてやろうか?」

母はハッとしたように箒を握りしめるとロクデナシを追い払った。

「は、はは。おまえだって期待したくせに」

その捨て台詞に母は箒を手離して落とした。

そうしてゆっくりと私を振り返った。

あぁ、あのロクデナシの言葉は本当なのだ。

母はいつからそこにいたのだろう。

売られる私を止めることができずに期待してしまったのだ。

そうしたらロイを助けることができると。

それだけ切羽つかない状況なのだわ。

ロイの死が迫っている。

涙を溜めた瞳で私を見たあと母は弾かれた様に外へと飛び出して行った。

私は追いかけようとしてロイに腕を捕まれた。

簡単に振り払えるような力でしかないけれど、ベットの上のロイを見おろす。

「どこへ行くの?外は危ないよ」

こぼれそうな涙を必死でおさえながら、できるだけ笑顔を作って言う。

「ちゃーんと髪の毛を布でおおうわ。怖い人が来たら大声を出して人を呼ぶわ。だからヒメタカラを探しに浜辺へ行ってきてもいい?」

私は磨き途中のヒメタカラを握って隠した。

「・・・」

「外にいる他の子も誘って浜辺に行くわ。いい?」

ロイはしばらく考え込んで黙ったあと「絶対帰ってくるんだよ」とわたしの瞳を覗き込んで言った。

「すぐに、帰ってくるわ」

ぼろ布をなんとか頭に巻いてロイの許可を得て外に飛び出す。

ロクデナシはどこだろう?母はどこだろう?

私を今すぐ売ってロイを救って。

捜して走り回るうち、立派な馬車が大通りを駆け抜けて来るのが見えた。

「あ!」

あの紋章は!ベネット家の紋章だわ!

そう思った瞬間考えるよりも先に転がるように馬車の前に身を投げ出した。

御者はムチを振り上げて罵声を上げる。

「危ないじゃないか!無礼者!こちらの馬車はどなたの馬車だと心得る!即刻立ち退け!!」

「お願い!お父様!ロイを助けて!」

「頭がおかしいのか!小汚ない娘が!この中におられるのは、ベネット侯爵家のエリザベート様だぞ。どけ!」

容赦ないムチを避けられずに体に受けて横に吹き飛ぶ。

焼けるような熱い痛みにうずくまってしまうけれど、再び動き出してしまう前になんとか声を絞り出す。

「ジュリア!おねがい!助けて!あなたならわかるでしょ!ロイが死んでしまう!!!」

悲鳴のような声をあげたのに、馬車は無情にも走り出してしまう。

「おねがい!ジュリアー!」

私の懇願を無視して砂ぼこりをあげて走り去る馬車。

痛みと悲しみと絶望で私の顔は涙でぐちゃぐちゃだった。

ただうずくまり泣くことしか出来なかった。

あなたなら、あなたにだけはわかるはずなのに・・・。








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