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入れ替わりの悪役令嬢(あなたが私で私があなた~運命は交差する)  作者: 万月月子


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新世界のあたし

ぐるぐると世界が回る。

あたしの大嫌いな女の顔を見つめながら。


あたしと瓜二つの女。

だけれども忌み嫌われる滅びの魔女と同じオッドアイのあたしの双子の姉を。

回る世界の中で大嫌いなエリザベートしかいないから見つめるしかないのだ。


圧倒される程に長い赤茶の髪がまるで炎がうねる様にぶわりと広がるのを。彼女の煌めく黒と赤のオッドアイが私をまっすぐ見ているのを。


・・・ただ見ていた。


絵本のように滅びの魔女が新世界へ旅立つのなら、決して離さないから。

滅びる世界であんたのすることに指を加えて見ているだけなんて絶対しない。


あたしはこの時を待っていたのだ。


兄ちゃんが死んでから。


あたしの心はたぶん壊れたのだろう。


兄ちゃんがいないなら、こんな世界は滅べばいい。


ずっとそう思って生きてきた。


兄ちゃんの生きている世界に行けるのなら何でもする。


無実の罪を着せて、滅びの魔女に世界を滅ぼさせたとしても。


あたしの心は死んだのだ。

兄ちゃんが愛してくれた良い子のあたしはもうどこにもいない。


何の良心の呵責も無く罪を犯していない双子の姉を、エリザベートを笑って貶め続けられたのだから。


エリザベートを貶める行為はそれはそれは愉快だった。


あんたが贅沢に身に付けている色とりどりの宝石やドレスはあたしの物であるべきだった。


あんたが毎日何気無く食べている豪華な食事やスイーツだってあたしの物であるべきだった。


あんたの婚約者でさえも、あたしの物であるべきだった。


何で捨てられのがあたしの方だったの?


恐れ忌み嫌われるオッドアイの赤子こそ捨てれば良かったのに。



あぁ兄ちゃんの温かい腕に包まれて眠りたい。


そうしたら、こんなに嫉妬や憎しみに心を占められる様なあたしにはならなかったのに。

無実の人を憎み貶めて喜ぶ様なあたしにはならなかったのに。


いくら笑ってもちっとも楽しく思えないの。



神様、もしも本当に新しい世界に行けるのなら。

兄ちゃんの生きている世界に行かせて下さい。


そこでなら、あたし。聖女の心で全てを愛せるようになるはずだから。


こんなに汚れた女にはならなかったはずだから。


兄ちゃん・・・会いたいよ・・・


エリザベートはずっとあたしから視線をそらさなかった。


だからあたしも落ちながらずっとずっとエリザベートを見ていた。


どんなに貶めても凛として清らかなエリザベートを。


燃え盛る火のような豪奢な赤茶の髪を。

美しく煌めく赤と黒のオッドアイを。


ただ見ていた。




外から鳥の声が聞こえる・・・朝だわ。

ここが新しい世界なの?


パッと目を開けたあたしの目に飛び込んで来たのはいつもの見慣れたベットの天蓋だった。美しい木の彫り物も絹のカーテンで覆われているベットも少しも変わりは無かった。


ふわふわの羽布団に体を持ち上げるかの様な弾力のあるマットレスが引かれたベットの上で、なーんだ何も変わらないじゃないとため息を吐く。


ここはベネット家で与えられたあたしの部屋だわ。


エリザベートが世界を滅ぼして2人でぐるぐると深淵を落ちていくなんて・・・バカ気た夢を見たわ。


でも現実味のあるリアルな夢。


あぁ、楽しい夢だった。

本当にエリザベートが絶望してこの世界を憎み全てを滅ぼしてしまえば良かったのに。


面白い夢を見たはずなのに、あたしの両目からツーっと涙が零れて落ちた。


夢の中でオッドアイの瞳や赤茶の髪が翻るのをずっと見ていたせいだろうか。


朝日に照らされたあたしの金髪が赤く染まって見えるのは。


「え・・・」


あたしは飛び起きて鏡台へ向かった。


何だかサイズ感がおかしい。

全てが一回り大きく感じて。



「うそでしょ・・・」

あたしは自分の髪を掴んで大きく見開く瞳を確認した。


鏡の中のあたしは、艶やかな赤茶の長い髪を掴み赤と黒のオッドアイに驚愕の色をのせてこちらを仰視していた。


「これじゃ、まるでエリザベートじゃないの」

変わったのは色味だけじゃない。姿もとても小さくなっている。


「どういうことなの?」


新しい世界であたしはエリザベートになったというの?


鏡の中のエリザベートはお人形さんのように可愛らしかった。


手も指も爪までもが手入れが行き届いていて髪の毛1本までもが美しい。


自分の子供の頃の様な痩せ細って折れそうな手足でも無ければ、げっそりした頬でも無くガサガサな手指でもパサパサな髪でも無い。貧相で惨めな姿は欠片も見当たらない。


「何歳くらいなのかしら。あたしが聖女に選ばれて満足に食事をとれるようになるまですごいちびだったわよね。この身長は何歳くらいなのかしら。・・・あたしが聖女に選ばれた13の時はちょうどこのくらいだったかしら・・・。少しの誤差はあったとしても、兄ちゃんが死んだ十歳の頃はとっくに過ぎてるわね 」

そう呟きながら、ちくりと胸が痛む。


「それなら兄ちゃんはこの世界にもいないんだわ・・・」


涙を浮かべるオッドアイの瞳は、朝日の中で綺麗に煌めいて見えた。


「でも・・・あたしは捨てられなかった方になれたんだわ。飢えも寒さも無い、浴びるほどの贅沢に浸かるエリザベートに」


無数のヒメタカラ貝が使われた豪奢な鏡に映る自分に。うっとりと手を伸ばす。


貴族の中の貴族として生きるのはあたしよ。


あたしなのよ・・・










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