楽に稼ぎたかっただけなのに
二〇二三年三月十七日午前四時
ーーあれ?なんか暑いな。
最高の気分のまま、公園のベンチで寝てしまっていた俺は、まるで真夏のような暑さを感じ、うっすらと目を開けた。
「!!! はあ⁉︎ 火事⁉︎」
至る所で燃え盛る炎。至る所で鳴り響くサイレンの音。立ち上る真っ黒な煙に言葉を失う俺。
何が起きてんだよ⁉︎ これも夢なのか?
俺はとにかく混乱し、呆然とするしかなかった。
一体どうなってんだよ? 寝てる間に大地震でも起きたのか?
混乱しながらも青ざめて酔いが醒めた俺は、とにかく急いで家まで走る。
道端にはたくさんの人が倒れていて、まるで地獄絵図のようだ。
「おい、そこのあんた、一体何があったんだ?」
泣き叫ぶ子どもをあやしている爺さんに俺は話しかけた。
「何がって、あんた見てないのかい? いきなり怪物が現れて……っひい!」
「怪物?」
俺の顔を見て急に顔面蒼白になる爺さん。
「あ、あ、あんたがやったんじゃないか!」
「はあ⁉︎」
何言ってんだこの爺さん? ボケてんのか?
「どうかお願いだ、わしや孫のことは見逃してくれ! お願いだ!」
爺さんは泣きながら土下座し、頭を下げ必死に俺に懇願してきた。
「何わけのわかんないことをっ」
「うわあ! アイツだ! アイツが犯人だ! 逃げろ!」
俺と爺さんのやりとりを見て、別の男が俺に向かって指を差し大声で叫び、周囲の人々も逃げ惑い始めた。
「は? まじで何がどうなってんだよ⁉︎」
俺はキャバクラ行ったあと、公園で寝落ちしてただけだぞ⁉︎
「キャー!」
その時、女性の悲鳴が聞こえ、反射的に悲鳴がした方に目を向けると、漫画やゲームの世界に出てくるような、ゴブリンのような怪物が女の人に襲いかかっていた。
「は?」
ここは日本だよな? 現実なんだよな? なんで俺が犯人扱いされてる? 周りの怪物はなんなんだ? あの女の人はどうなるんだ? 死ぬのか?
「ぜんっぜん理解できねえ!」
考えても考えても正解が見つからない。そのうち女の人を襲っていた怪物と目が合った。
「っくそ!」
今度は俺が殺される! 今は逃げるしかねえ! とりあえず家に帰って母さんと父さんと合流だ!
それから俺はとにかく怪物たちや倒れている人々を避けながらがむしゃらに走った。