まるでスイートルーム?
今度は室内にいた。まるで高級ホテルのスイートルームのような広々とした空間が広がっている。
「なんだよ、これ」
テレビやSNSでしか見たことのないような、夢のような空間に呆然と立ち尽くすしかない。しかし、ハッと我にかえり、我に返って振り返るとあの渦巻きはなくなっていた。
「……あの渦巻き、まじで一体どういう仕組みなんだ?」
部屋には窓やドアはないが、ジャグジーの風呂やキングサイズのベッドが完備されているし、空間としてはめちゃくちゃ広いから圧迫感がない。すでに食事もテーブルに並んでいる。しかも俺の好物ばかり。
「本当に俺は夢を見てるんじゃないか? ……いや、もう深く考えるのはやめだ。夢でもいい。こんな機会は一生ない。今は目の前の現実を楽しんで、三十万円を無事に持ち帰ることだけに集中しよう。」
そうして俺は超快適な空間で悠々自適に過ごし、ふかふかのベッドで最高の眠りについた。
二〇二三年三月十四日午前八時
ーーなんかめちゃくちゃいい匂いがする。腹減ってきた……。
「……」
……もう朝か?
「……っは!」
目を覚ますとやはりスイートルームのような空間のままだった。
「やっぱり、夢、じゃないのか……」
頭を掻きながらベッドから降りてテーブルを見ると、焼きたてのトーストや目玉焼きなどが並んでいる。
「まじでどういうことなんだよ。まるで魔法みたいだ。本当に俺は異世界トリップでもしちまったのか?」
現実では理解できないようなことばかりで、頭を抱えるしかない。
「……ま、でも腹が減っては戦はできぬ。と言うし。今更だ。ありがたくいただくとするか」
そうして俺はのんきに朝食をいただくことにした。
「昨日も思ったけど、どの食べ物もまじで美味い。でもドアがないのに誰がどうやって作ってくれたんだ?」
本当に不思議なことばかりで、頭が混乱する。
ーーすっかり満腹になり満足した俺は、食後のコーヒーを飲んでリラックスしていた。
するとテーブル越しにあの黒い渦巻きが音も立てず現れる。
「……! ゴホッゴホッ!」
快適な空間で油断しすぎていた俺は、思わずコーヒーが気管に入ってしまい咽せてしまった。
「やっぱり、夢じゃないってことか……! これに入れってことだよな。仕方ねえ。ここにいても外に出れるわけでもないし、入るしかないか」
だいぶ黒い渦巻きに対し耐性ができてきたものの、どこに繋がっているのかわからないから正直怖いが、三十万のためだ!
俺は腹を括って渦巻きに飛び込んだ。
ありがとうございます。よろしくお願い申し上げます。