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30万の即金前払い?

「……!」

 え? 三十万前払い⁉︎ てかこんな札束初めて見た。すげえ!

 札束を目の前にし、俺はつい興奮してしまう。

 だが、さすがに今受け取るわけにはいかねえだろ。

「……なんだ? 報酬は要らないのか?」

 札束を受け取ろうとしない俺に男は質問してきた。

「……いや、そうじゃなくて、まだ俺、仕事してないですよ? 前払いってことっすか?」

「そうだ。これは前金だ。お前、私や田中が怪しいと思っているだろう? バイトしても報酬が支払われないんじゃないかとな。だから先に払っておく」

 確かにそうだ。俺は怪しんでいた。本当にコスプレするだけで三十万支払われるのかと。

「……本当にただあんたと同じコスプレするだけでいいんですか? 闇バイトじゃないすよね?」

「……闇バイト? ああ、強盗の代行などか。そんなことはしなくていい。お前はただ私と同じ格好をしてくれるだけでいいんだ。他は求めないから安心しろ」

「……怪しいと思ったら、すぐ帰りますんで」

 俺は怪しみながらも三十万円をしぶしぶ受け取って、これはコスプレバイトだと自分に言い聞かせることにした。

「契約成立だな。早速この軍服を着てくれ」

 男とまるっきり同じような白い軍服を手渡される。俺は迷うことなくすぐに着替えた。

「着替えました。どうっすか?」

 なんか慣れねえな。こんな格好ゲームとかアニメの世界でしか見たことないぜ。

「ああ。悪くないな。じゃあまずはそこに立ってくれ。早速撮影を始める」

 男はそう言うと、レトロで重厚な雰囲気のカメラで俺の姿を撮影し始めた。

 まずは立ち姿。正面、真横、真後ろ、斜め前、斜め後ろなど、あらゆる角度から俺を撮影していく。

 ただ直立しているだけだが意外と大変だ。モデルも苦労してるんだな。

 次に笑った顔、怒った顔など色んな表情を求められた。ぎこちないかもしれないと思いながらも、俺はがむしゃらにリクエストに答えていく。もうされるがままだ。

「ふむ。思っていたよりいい感じだな。田中から聞いていたと思うが、撮影は丸三日くらいかかる。今日はこの辺にしとくか」

 やっとか。数時間知らない場所で怪しい男と二人きりでぶっ通しで撮影して気疲れした。

「わかりました。そういえば撮影中の衣食住は保証されるって聞いてたんですけど、今日俺はどうしたらいいすか?」

「……お前は今日からホテルで過ごしてもらう。後ろの渦巻きがホテル直通だ」

「後ろの渦巻き?」

 俺は振り返った。すると最初に無理やり飛び込まされたものと同じような禍々しい黒い渦巻きが再び現れていた。

「あの、さっきも思ったんですけど、これどういう仕組みなんすか?」

 そう言って振り返ると、すでに軍服の男は消えていた。

「!!! はあ⁉︎ まじでなんなんだよ! 俺は夢でも見てんのか?」

 目を擦ってみても、周りには大地しか広がっていない。

「……入るしかない、ってことだよな」

 俺は手に冷や汗を握りながらも、覚悟を決めて黒い渦巻きに自ら飛び込んだ。

 



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