ワープへの入り口
「……いや、まじで何言ってんすか? ワープなんてそんな御伽話みたいな」
「御伽話ではないですよ。さあ、さっさと渦巻きに入ってください」
「いやいやいや! こんなわけわからんとこに入れるわけないだろ! 俺、やっぱり帰りますっ…!」
そう言って俺は振り返り、全速力でその場から立ち去ろうとした。
「……そうはいきませんよ」
その瞬間、俺はものすごい力で手を引っ張られた。
「は⁉︎」
「申し訳ありません」
そのまま勢いで、俺は怪しさ満点の黒い渦に突き飛ばされてしまった。
「!! やっぱりお前騙しやがったな!」
しかし、俺の声は田中には届いたかどうかわからない。すでに俺の視界から田中が消えていたからだ。
状況を理解するまでもなく、渦に突き飛ばされた俺は死を覚悟したが、次の瞬間、赤い空と茶色い大地のみが広がる空間にいた。
「くそっ! 田中アイツいい人そうな感じだったのに、騙しやがって! ここはなんなんだ? 俺は死んだのか?」
「安心しろ。お前は死んでいない」
うろたえる俺に急に背後から男が話しかけてきた。
振り返ると白い軍服を着た外人のような顔立ちの男が立っている。
……なんだコイツ?しかも田中と同じように俺の頭から足元までまじまじと見てくるし。コイツも怪しすぎる。もうわけわかんねえし。警察に通報して助けを呼ぶか?
「……フッフフフ。そうか、そういうことか。お前だったのか」
急に男は笑い出した。
「……? どういうことっすか? 初対面ですよね? どこかで会ったことあります?」
こんな強烈な見た目の男、会ったことがあれば忘れるわけがない。ってか、いきなり人の顔見て笑ってくるとか失礼なやつだな。
「いや? 今のお前とは初対面だから安心しろ。早速だが、私と同じコスプレをしてもらうぞ」
そう言って白い軍服の男は三十万円を差し出してきた。