魔神との再会
うそだろ? 足音なんてしなかったし、気配も感じなかった。まるでそこに急に現れたかのような……。
俺は冷や汗をかきながらも、おそるおそる視線を後ろに向ける。
そこには、コスプレバイトの時のカメラマン、つまり白い軍服の男が立っていた
「!! あんたはっ⁉︎」
焦って振り返りつつ、とっさに腕を振り払った俺は白い軍服の男から距離をとり、魔石をポケットに仕舞い込む。
「……ふむ。お前、私のことを恐れているな。私のことを知っているのか?」
「……は? 何言ってんだよ」
「人間の喜怒哀楽の感情は手に取るようにわかる。お前は初対面の私に異常なまでの畏れの念を抱いている。何かトラウマでもあるような感じだ」
「……あんた、覚えてないのか?」
……嘘だろ? あのコスプレバイトの時三日も二人きりだったんだぜ?
「? 人間の男の顔なんぞいちいち覚えているわけないだろう? そもそもなぜ魔界にいる?」
……魔界? コイツ今魔界って言ったか? どういうことだよ? ここは過去なんじゃねえのか? いや、確かにコスプレバイトの撮影場所が魔界でしたって言われても違和感ないくらいわけわかんねえことが起きまくっていたが……。
「……いや、そんなことは至極どうでもいいか。最初の質問に答えろ。お前なぜ我が魔石を持っている?」
そうだ。コイツさっきからこの石のこと、自分のものみたいに言ってくるな。
「あんたの魔石? さっきから何言われてるか全然わかんねえよ。この石は別のヤツから無理やり受け取らされただけだ」
「ほお?」
「ってか、俺の方があんたに色々と聞きたいくらいだ! 魔界って言ったよな? どういうことだよ? ここは過去の日本じゃねえのかよ!」
コスプレバイトの時には最低限の会話しかしてねえし、色々質問しても欲しい答えは得られなかったが、今はコイツから少しでも情報を得るしかねえ。頼む。何かヒントでも良いから俺の望む答えをくれ。
「過去の日本? …ああ、なるほど。お前、未来の日本から飛んで来たのか」