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タイムトラベルブーツの説明書はどこ?

うわ⁉︎」

 汗かと思って手で額を拭ったら、血だった。

「え、待って、なんの血? あの怪物の返り血か? それとも俺頭に怪我してんのか?」

 びっくりして髪の生え際をおそるおそる改めて触ってみると、地味に痛い。

 改めて俺は体中を見回すと、至る所に切り傷やら擦り傷やら打撲やらができていた。

「まじかよ。全然痛くねえから気づかなかった」

 普通に日常を生きていれば一生経験することのないゴブリンとの戦闘に、怪我をしても気づかないほど俺は興奮していたようだ。

「ばんそうこうとか、消毒液とか持ってないんだけど……」

 ってか身体中砂と泥まみれだし、シャワー浴びてえ。

 そんなことを思いながら改めて周りを見渡すが、シャワーはおろか、川すらなさそうで改めて落胆した。


ーー「そろそろ行くか」

 ゴブリンとの戦闘後少しだけ休憩した俺は、食料も水もないこの場にいても餓死するだけだと改めて思い、疲れた体に鞭を打ってまた進んでみることにした。

「怪物から奪ったこのナイフがあれば、これからまた何かあっても素手よりはマシだろ」

 とにかく何か食べたいし飲みたい。民家とかねえかな。 

 とにかく俺はあてもなく歩みを進めた。


ーー「もう一時間くらい歩いたよな?」

 こんなに歩いて収穫ゼロとか正気か? まじで地面と岩以外草木一本生えちゃいねえ。水もない。まるで砂漠みたいだ。本当に何もない。あの怪物以外の生物も見かけていない。

「まじかよ。ゲームならもう二、三個村が出てきて、すでにセーブポイントあるぞ」

 俺はこのまま孤独に彷徨い続けるのか? ってか、このまま無闇矢鱈に歩き回ったところで体力の無駄じゃね?

「……落ち着け俺。ここにまじでタイムトラベルしてきたと仮定したら、またタイムトラベルしてもとの時間? 世界? に戻ればいいだけじゃねえか?」

 俺はダサすぎて視界に入れないようにしていたタイムトラベルブーツを改めてまじまじと見てみる。

 しかし、一見なんの変哲もないミリタリーブーツに見える。おかしいのはクソダサい緑色という点だけだ。

 スイッチがあるというわけでもなく、見れば見るほどどこがタイムトラベルブーツか全然わからない。

「全然普通のブーツじゃん。どこがタイムトラベル仕様なんだよ。説明も説明といえねえほど雑だったし。せめて説明書付けとけよ」

 クソダサタイムトラベルブーツを脱いで、あらゆる角度から観察してみる。

「……やっぱり俺は夢でも見ているだけなんじゃねえか?」

 ……! そういえば、このブーツを履かせてきたあの変な男に、黒い変な石握らされたよな。あの石はどこいったんだ?

 あの石を握りしめて俺はタイムトラベルをした?

 だが、タイムトラベルした後は綺麗さっぱり手から石はなくなっていたぞ?

「あーもうほんっとうにわけわかんねえ! これが夢なら誰でもいいから起こしてくれよ!」

 疲れもピークにたちしていた俺は、頭を掻きむしりその場に座り込んだ。

「はあ、まじ疲れた。腹も減ったし、喉も乾いたし……あれ? ポケットに何か入ってる。」

 無意識にスマホを探そうとパンツのポケットに手を入れたところ、手にひんやりとしたものが当たった。

「……これ、あの時と同じ石?」

 

ーー「っおい! なにすんだよっ! やめろよ! 触んなっ!」

 俺は精一杯男を引き剥がそうとするが、抵抗もむなしく超ダサいロングブーツを履かされてしまった。

「どう見てもダサすぎんだろ! こんなの履いてらんねえよ!」

 俺はこのダサすぎるブーツを脱ごうとする。

「うるせえ! ってかせっかく履かせたのに脱ごうとすんな! そもそもダサいとかダサくないとかそんなことを気にしてる場合じゃねえんだよ! ほら、手え出せ! 早く!」

 男はそう言うと今度は俺の手を無理やり引っ張り、掌に黒光りする石を握らせた。

「なんだよこの石?」

「予備もポケットに入れとくからな。魔石は消耗品だ。万が一の時にだけ使え。」

「は? ちょっと勝手に入れんなよっ……!!!」


ーー俺は意図せずタイムトラベルした際の直前の男とのやりとりを鮮明に思い出した。

「……これは魔石で、一回使うとなくなるってことか? ってか、どうやって使うんだよ。持ってっても何も起こんねえぞ? もう一回タイムトラベルしてもとの世界に戻してくれよ!」

 そう魔石に懇願して握りしめても全く何も起こらない。

「くそっ! 魔石だかなんだか知らねえけど、よく考えたらこれも使い方の説明ゼロだったじゃねえか! アイツまじ仕事できねえな! 俺になんかして欲しいならちゃんと順序立てて説明しろよ!」

 タイムトラベルブーツと魔石を押し付けて、何にも説明しなかった男に対する怒りが改めて湧いてきた俺は、魔石を思い切り投げようと振りかぶった。

「人間、なぜ我が魔石を持っている?」

「⁉︎」

 背後から魔石ごと振りかぶった腕を急に掴まれたうえ、声をかけられたことに俺は驚きすぎて声も出ない。


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