なんで俺がタイムトラベルするの?
「てめえ、神崎誠だな」
空中に浮いている人間を見て呆然としていると、茶色いロングコートを着た男が突然話しかけてきた。
「てめえ、自分が何やったのかわかってんのか」
「は? なんの話だよ?」
「だから、てめえがやらかしたことを理解してんのかって聞いてんだよ」
「いやいやいや、俺は何もやらかしてねえし、むしろ何が起こっているかわからないのはこっちなんだよ」
一方的に俺を責め立ててくる男に対し、事情を説明しても男は聞き耳を持たない。一体なんなんだコイツ。
「もういい。話してても無駄だ。とにかくてめえには今からタイムトラベラーになって、てめえのやらかしことの尻拭いをしてもらうからな」
男はそう言うと緑色のロングブーツを鞄から取り出した。
「これはブーツ型タイムトラベルマシン。お前のやることは至って単純だ。このブーツでタイムトラベルして、てめえの所業を止めるだけだ」
「は? タイムトラベラー? タイムトラベルブーツ? 今度は何言ってんだお前?」
コイツ正気かよ。急に話が飛躍しすぎてないか? ってか、タイムトラベルなんてできるわけねえだろ。
「説明したところでお前は信じないだろうし、説明している時間はねえ」
「お前が言うなよ!」
「ほら、あれを見ろ」
そう言って男が空中を指差した。
俺は条件反射で男の指さす方向に目を向けてしまった。
俺と瓜二つの顔をした空中に浮いている人物に対し、金髪の若い男が空中を駆け抜けながら攻撃しようとしている。
……アイツも緑色のロングブーツを履いてる?
「ああ、ジョン嬉しいよ、君に会うのはこれで三百三十三回目だ」
俺と同じ顔、同じ声をした男は笑いながら、金髪の男をピンク色の光線で撃ち落とした。
え、なんだよあれ、ビーム? ってかあの金髪の男どうなった? 大丈夫なのか?
「やはり、ジョンでもダメか……」
茶色いロングコートの男は空中での二人のやりとりを見ながらそう呟き、改めて俺に向き合う。
「……てめえには、ジョンの分まで最後まできっちりやってもらうからな。神崎誠!」
「は? だからさっきからなんの話か全然見えてこねえっての!」
本当にコイツなんなんだよ。