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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第二章 東京
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第84話 銃の運用

 俺はアオイを介抱しようとし始めたユリナ達三人を止める。彼女らはせっかく助かったアオイをなんとかしようと必死だが、恐らく俺の力の事を忘れているようだった。


「まて」


 ミオが慌てた表情で言い返してくる。


「でもヒカル、葵ちゃんは熱が…」


「それよりも簡単に食べられるものがあったはずだ。あれを持って来てほしい」


「クラッシュゼリーの事?」


「そうだ」


「わかった」


 俺は寝ているアオイの側に座り、おでこと腹に手をつける。


 確かに息は荒く熱が出ているようだ。俺はすぐに回復魔法を発動させ、手からアオイの体に注いでいく。するとアオイの息遣いは静かになり熱も徐々に下がって来た。そのまま魔力を注ぎ続けると、表情が楽になりスース―と寝息をたて始める。


「持って来たよ!」


 ミオがクラッシュゼリーを何個か持って来てくれた。


「開けてくれ」


「はい」


 俺は封を開けたゼリーを受け取り、そっとアオイの上半身を起こして耳元でささやく。


「アオイ」


「‥‥‥」


「アオイ」


 するとアオイが薄っすらと目を開けた。意識は朦朧としているようだが、辛うじて俺を認識しているようだ。


「ゼリーだ」


 俺がゼリーの袋を握りしめて、アオイの口の中に入れてやるとコクリと飲み込んだ。


「よし。ゆっくりでいい」


 俺は時間をかけてアオイの口にゼリーを入れ、少しずつそれを飲ませていった。半分くらい飲んだあたりでアオイは目を閉じて眠り始める。そっとベッドに寝かせゼリーに蓋をして枕元に置く。そして俺は再びアオイに回復魔法をかけた。すると真っ青だったアオイの頬に赤みが差してくる。


「顔色が良くなってきたな!」


 タケルが嬉しそうに言った。


「病気ではないんだ。栄養が足りていない事と、疲労による発熱だ」


 するとユリナが言った。


「そうか…だと点滴があれば良いんだけど」


「テンテキ?」


 するとヤマザキが俺に説明する。


「友理奈は看護師だからな、そういう設備があれば、ある程度の治療行為が出来るんだ」


 それにユリナが答えた。


「点滴って言うのは、寝ていても直接栄養や薬を血液に流せる物なの」


「何処にある?」


「病院なら大抵はある」


「この辺に病院はあるか?」


「新宿にはいろいろと大きな病院があるわ」


 ユリナが言うとタケルが答えた。


「わかった! 地図地図! 地図があったろ!」


 そしてタケルがサッと部屋を出ていった。俺はユリナ達に向かって言った。


「今回はユミを連れて行く予定だったが変更だ」


 するとユリナが苦笑いしながら言う。


「ははっ。行くのは私ね?」


「そうだ」


「だよね」


 するとツバサが俺に言う。


「あらら。ユミ、すっごい緊張してたよ! 一旦、無しって伝えてくるね」


「頼む」


 ツバサも部屋を出て行った。そして俺がユリナに向かって言う。


「決行は明日の朝だ。それまではゆっくり休め」


「わかったわ」


 そこにタケルが戻って来た。


「あったぞ」


 ユリナが力なく答える。


「あるんだ…ははは」


 アオイは安定しているが、寝ながらにして栄養補給が出来るならそれに越したことはない。それに今回はアオイでも、次には誰かが病気になる可能性は大いにある。


 俺はヤマザキとタケルに声をかけた。


「ヤマザキ、タケル。ちょっといいか?」


「なんだ?」

「あいよ」


「銃の使い方を教えてくれ。今回の回収でユリナに持たせるつもりだが、俺が使い方を知らねば教えようがない」


「まあ、俺達もそれほど詳しいわけじゃないがな」

「俺もだ」


「そういう事ならば三人で撃ちに行くぞ」


「わ、わかった…」

「おっ! そいつは良いな!」


「よし」


 俺達三人は武器が並んでいる部屋に行き銃を選ぶ。肩にかける小銃というヤツと片手で打てる銃を選んだ。だが銃だけでは心許ないため、日本刀の袋を肩にかけ短刀をベルトの後ろに差した。


「下の階でやるぞ」


「あ、ああ…」

「わかった! 早く撃ちに行こうぜ!」


 俺は二人を連れてビルの低層まで下りる。このビルの八階以下にはそこそこゾンビがいるので、練習にはうってつけだった。


「ふうふう」


 ヤマザキが手の甲で汗をぬぐい肩で息をしている。


「山崎さんよう、少し動き回った方が良いぜ。いざという時まずいよ、それ。」


「タケルみたいに若くはないんだ。勘弁してくれ」


「まあ、動き回るったって廊下を走るくらいしかねえけどよ。それでも十分鍛えられるんだぜ」


「わかった。なるべく動くようにする」


 そして俺達は八階にたどり着いた。


「で、タケル。どうするんだ?」


「えーと、多分銃のどっかに安全装置つーのがあるんだよ」


 ヤマザキとタケルが銃をあちこちまさぐっている間に、通路の向こう側から二体のゾンビが歩いて来た。俺達の話し声に気づいたらしい。


「来たぞ」


「ちょ、ちょっとまて」


「早くしろ」


 二人が焦っている。だが俺はわざと何もしないで見ていた。するとタケルが言った。


「たぶんこれでいける」


 タケルがゾンビに銃口を向けて引鉄を引いた。


 バンバン!


「当たった!」


 タケルが叫ぶがゾンビは倒れなかった。


「どうやって撃った?」


「えーっと」


 タケルが俺の持っている小銃の安全装置を外した。


「多分これで撃てる」


 俺もゾンビに銃口を向けて撃ってみることにした。


 バン! バン!


 一体のゾンビが倒れ、もう一体は倒れずに歩いて来る。倒れたゾンビもすぐに起き上がりこっちに向かって来た。


 ヤマザキが慌てて言った。


「頭だ! 頭に当たってない!」


「ならヤマザキがやってみるといい」


 俺が言うとヤマザキが銃を構えて、頭のあたりに狙いを定める。


 バン! バン!


「山崎さん。外したぞ?」


 そして俺が言う。


「皆で狙った方が効率的のようだ」


「わかった」


「あいよ」


 俺達三人が銃口を、頭に向けて撃ち始める。すると二体のゾンビはばったりと倒れて動かなくなった。だが銃声を聞きつけた他のゾンビが、通路の向こうからぞろぞろとやって来た。

 

 するとタケルが言う。


「もう撃って撃って撃ちまくるしかねえだろ!」


 その言葉を合図に、俺達三人は銃を撃ちまくった。そのおかげで頭に当たったやつからどんどん倒れていく。


「難しいものだ」


「だな」


「訓練が必要だな」


「ああ」


 俺達は銃を撃ちながら試行錯誤を繰り返した。恐らく近距離ではかなり効率が悪い。こんな武器がありながらも、日本が壊滅した理由がなんとなくわかった。しばらく撃ち続けているとゾンビが全て大人しくなる。


「俺は弾が無くなったぜ」


「俺もだ」


「どうやら俺もだな」


「弾が無くなったらどうするんだ?」


「装填しなくちゃなんねえんだ。ヒカルが持って来た箱に弾が入ってたけど、それも持ち歩かねえとだな」

 

 するとヤマザキが言った。


「というか銃の手入れなんて、どうしたらいいか分からないぞ?」


「確かにそうだな」


「一旦上に戻ろう。そして銃の状態を確認したほうが良い」


 俺が言うと二人が頷いた。銃という武器は確かに強力ではあるが、対ゾンビとなるとかなり苦戦しそうだった。ビルの中は数が少ないから、まだこれで済んではいるが、大群にはもっと大量の銃が必要になる。盗賊が都心部に進入してこない理由はそこらへんにありそうだ。


 そして俺はもう一つ気が付いた事がある。日本刀と違って銃には魔力が入らなかった。入ったところで何の魔法も発動しないと分かる。俺にとって銃は無用の長物になりそうだ。だが間違いなくこれによって仲間達の戦闘力は上がる。人間相手にはかなり有効な武器になりそうなので、盗賊相手には十分効果を発揮できるだろう。


 これからしばらくは、女達にも銃の訓練をさせねばならない。だが、弾には限りがあるのでそれほど訓練に割く事は出来ないだろう。極力ゾンビに銃は使わず盗賊相手に集中して使う武器になりそうだった。

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