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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第二章 東京
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第80話 追跡対策

 トラックをあちこちにぶつけながらも運転には慣れて来た。ようやく慣れて来たところで、タケルの待っているマンションにたどり着く。俺はトラックの鍵を閉め一気に屋上へと登った。


 突然現れた俺にタケルが驚く。


「おわ!」


「待たせた」


「どうだった? 船はやっぱりアイツらの仲間か?」


「そうだ」


「よし。それじゃあこれからどうするんだ?」


「どうもこうもない。皆が待っているから帰ろう」


「盗賊は放っていくのか?」


「いや。幕張にいる奴らは壊滅させた。周辺に仲間がいるかは確認できていない」


 ‥‥‥


 タケルが少し考えてから言う。


「えっと、俺の聞き間違いか?」


「なにがだ?」


「壊滅させた?」


「そうだ」


「全員?」


「約五十人は全て始末した。死体はそのままにしてある」


「もう?」


「ああ」


「…まあ、もう驚かねえや」


「それよりも一度戻った方が良い。物資を全て持って来たからな」


「マジ?」


「ああ」


 タケルは唖然として俺を見ている。


「現場を、そのままにして大丈夫なのか?」


「むしろ無残な状態で残していた方がいいと思う」


「なんで?」


「状況からすると大勢に襲われたと思うだろう?」


「確かに」


「盗賊は何やら違う勢力の存在もほのめかしていた。そいつらの仕業だと思えば良いと思わないか? そうすれば不用意には動けないはずだ。奴らも生き延びたいだろうからな」


「なるほど! そりゃすげえよヒカル! なにげに名案かもしれねえ」


「まあな。それより問題がある」


「なんだ?」


「強奪して来たトラックがボコボコだ」


「へっ?」


「とりあえず帰る準備をしよう」


「わかった」


 そして俺とタケルが荷物をまとめる。すぐに俺はタケルを掴んで屋上から飛び降りた。


「ぐううう」


 タケルが歯を食いしばっているが、どうやら高所から飛び降りる事には慣れないらしい。


「慣れないか?」


「残念ながら無理だ」


「そうか」


 それはさておき、俺は急いでタケルをトラックの所に連れて行く。そしてトラックを指さして言った。


「これは大丈夫か?」


「なに? なんで?」


 タケルがトラックを見て深刻そうな顔をしていた。


「あんなにバイクは上手いのに…」


「すまん。曲がる時にどうしても内側がぶつかるんだ」


「それもそうだし、パンクしてるぞ」


「すまん。何かに乗り上げた時にパンッ! て言った」


「物資が詰まってるんだよな?」


「そうだ」


「このままじゃ東京に戻れねえ。トラックを回収すんべ」


「わかった。港にバカでかい倉庫があったが、そこに行ってみよう」


「よし」


 そして俺はタケルと一緒に走り始める。まだ周囲に敵が潜んでいる可能性も考えてバイクは使わない。しばらく走ると俺が目をつけていた倉庫が見えて来る。


「〇猫さんの運送屋か…」


「どうだ?」


「めっちゃ有名な会社だけどデカいのあるかな?」


「ないのか?」


「長距離用の奴があればいいが」


「探そう」


 そして俺達はその敷地に侵入する。するとすぐにトラックが置いてあるのが見える。


「おお! デカいのがある! ちっさいトラックのイメージだったけどよ、街中の営業所とは違うみてえだな!」


「それはよかった。鍵を探そう」


「おう!」


 そして俺達はその事務所に侵入し鍵を探し回った。すると大量に鍵がぶら下がっている場所を見つける。


「どれだ?」


「わからねえ。キーホルダーがついているけど、ナンバーとか書いてねえし」


「ならひとつひとつ差し込んでみよう」


「よし」


 そして俺とタケルはトラックに乗り込み、次々に鍵を差し込んでいく。八本目でようやく鍵があったが、なかなかトラックのエンジンがかからなかった。


「年季が入ってるからな、エンジンも弱ってんのかもしれねえ」


「どうする?」


「一度ヒカルが乗って来たトラックを引っ張ってきて、バッテリーを繋ぐ」


「わかった」


 そして再びマンションに戻り、パンクしているトラックを持ってくる。タケルがその駐車場内を探し赤と黒のひもを見つけた。


「それでどうする?」


「バッテリーを繋ぐ」


 タケルがトラックでごそごそとやり始め、その線を繋げた。


「よっしゃ。じゃあヒカル! 鍵を回してみてくれ!」


「ああ」


 きゅきゅきゅきゅ、ブルルルウウウン!


「かかったぞ!」


「もうバッテリーが弱ってたんだ」


「凄いなタケル! こんなことができるのか!」


「いやいや。結構出来るやつは多いと思うぜ。特に車が好きなら大抵できるだろ」


「だが凄い。これでいける」


「荷物を積みかえようぜ」


「よし」


 そしてタケルは俺が強奪して来たトラックの荷台を開けた。


「うお! なんだこれ! こんなにあったのか?」


「ああ」


「すげえぞ」


「積みかえよう」


 トラックの後と後ろをくっつけて、俺とタケルはせっせと荷物を移した。するとタケルが言う。


「銃も持って来たのか…」


「これも大量にあったからな」


「ま、無いよりマシか」


「万が一の為だ」


「だな」


 そして全ての荷物を移し終えた。するとタケルが言う。


「この強奪して来たトラックを海に沈めた方が良い。足がつくかもしれねえ」


「わかった」


 タケルが何処からか木の棒を持って来て、トラックのアクセルにそれをかけて飛びおりる。するとトラックは一直線に海に向かって海に落ちて行った。俺達はそれを確認してすぐに次の行動に移る。俺達が全てを終わらせる頃には、空が紫に色づいて来ていた。


「行こう」


「ああ」


 マンションに戻りバイクを回収して俺が先を走り始める。大型のトラックの邪魔にならないように推撃で車をどかし、敵が尾行してくるかもしれないので、なるべく自然な形でゾンビを処分していくのだった。


 だが俺はある気配に気がついて止まる。


「ヒカル! どうした?」


「他の車の音がする」


「つけられてんのか?」


「まて…」


 俺が聞き耳を立てていると、それは東京方面から着て通り過ぎていくようだった。恐らくは東京から幕張に戻る車だと推測される。


「恐らくは高速道路だ。東京から来たようだぞ」


「通り過ぎた?」


「ああ。アジトに戻れば、あの惨状を見る事になるだろう。騒ぎになる前に急ごう」


「ならよ、もっと西回りで行く事にしようぜ。一旦埼玉方面に流れて、そっちから戻った方が良い」


「任せる」


 そして俺達は、来た時とは違う進路を辿って東京に向かうのだった。一時間ほど進んで俺はバイクを止める。そしてトラックの脇につけた。


「タケル。つけられている気配はないが、念のためどこかで時間を潰そう」


「その方が良いのか?」


「万が一つけられているとすれば、俺達が止まった場所がアジトだと思うだろう?」


「随分慎重だが、必要な事なんだよな?」


 まあ、この世界の人間ならそんな真似は出来ないだろうが、前世の騎士や魔導士などには形跡を辿ってくる凄腕がいた。その時は一度どこかで待機して、そいつらを迎え撃つ必要があった。更に厄介なのはテイマーだった。鼻の利く魔獣をテイムして追ってくるのだ。


「幕張の拠点で敵に凄腕がいると聞いた。この世界の凄腕がどれほどの者かは分からんが、念には念を入れた方が良い」


「了解」


 しばらく走ると俺はゾンビとは違う気配を感じ取った。再びタケルの脇につけて告げる。


「タケル。ゾンビじゃない気配があるようだ」


「人間か?」


「違う! ついてこい!」


「あ、ああ…」


 そして俺のバイクは、その気配のする方に向かう。そこならば騎士や魔導士やテイマーなどが追尾して来ても気配を見失うだろう。俺がその場所の前に止まってタケルに告げた。


「ここだ」


「うへぇ…」


「どうした?」


「霊園じゃねえか!」


「そうだ。ここには別の気配がある。追跡ならここでやり過ごす事が出来るかもしれない」


 するとタケルは少し沈黙してから言った。


「ヒカルよう…何か勘違いしてるかもしれねえが、お前が感じ取れるような気配を感じれるやつはこの世界にはいねえと思うぜ」


「どう言う事だ?」


「追跡っつったら、車の痕跡とかゾンビを始末した跡とかを追ってくるんだよ。ヒカルみたいに気配を感じ取ってついてくる奴なんざいねえよ」


「そうなのか?」


「まちがいねえ。それよりもデカいスーパーとかに紛れた方が良い。ゾンビがいっぱいいるところなら、容易に近づいてこねえだろうし」


「…わかった」


 結局、俺はタケルに導かれて、スーパーマーケットの駐車場へと車を入れるのだった。

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