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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
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第583話 もしかするとポーションかもしれない

 大統領補佐官たちや、SP達が捕まえた二人を取り調べた所、どうやら直接のファーマー社の社員ではなく、医薬品食品安全省のガブリエルソロモンの関係者らしかった。大きな手掛かりなのかと思ったが、二人はただの小物で、大した情報を抜けなかったようだ。


 クキがそろりとオリバーに聞いてみる。


「で、どうすることに?」


「独房に監禁。尋問はするようだが、どうやらただのスパイで、大統領の情報を外に流していたらしい」


「それで、ことごとく特殊部隊がやられたのかな……」


「九鬼は、どう見る?」


「ファーマー社に先回りされて、試験体という恐ろしい個体を準備されていたのだろう」


「また……試験体か」


「そうだ」


 大統領にも大まかな情報は伝えているが、今のところ、それに対しての対応は難しいらしい。それはそうだろうし、恐らく俺達で無ければ試験体は始末できまい。


「それよりも……だな」


 オリバーが難しい顔をする。


「ラッキーボーイ。君らはだいぶアメリカに警戒されてしまった」


 俺が聞いた。


「なぜだ?」


「犯人の腕がいきなり落ちたらしいじゃないか」


「ああ。殺されそうになったから自衛だな」


「たぶん、鮮やか過ぎたんだ。急に腕が落ちたと言ってたぞ」


 ……。


 皆が静かになった。するとミナミが頭を下げる。


「ごめんなさい! 見えるように斬ったらよかったのかも!」


「い、いやいや。そう言う問題では」


「じゃあ、どうしたらよかったのかな?」


 オリバーが聞いて来る。


「一体なにがどうなったのか?」


 それには俺が答えた。


「ただ、居合で斬っただけだ」


「いあい?」


「そうだ」


「いずれにせよ、ラッキーボーイだけじゃなく、皆が警戒されているよ。自衛隊はやばい戦闘兵を作っていると、大統領に報告していた」


 噂をすればなんとやら、そこにSPの二人がやってきた。


「ちょっといいかな」


「ああ」


 クキが対応する。やはり、聞きたい事は、殺人犯の腕が突然落ちた事と傷を治した事だった。


「あれは、一体何だったのかを知りたいのだが」


 そこでクキが大声で言った。


「バレてしまったようだな! 俺達は、日本の自衛隊で訓練された最強特殊部隊なんだ」


「それは……」


「あれはな、日本古来の侍の技だ」


「ジャパニーズ……サムライ……」


「自衛隊では、侍の訓練もカリキュラムに入っている!!」


「そうだったのか。それで、あんなことが出来るように……」


「そうだ。そして、忍者でもある」


「ニンジャ? ジャパニーズ、ニンジャか!」


「そうだ。忍者の技も生きている。それが、日本自衛隊の特殊部隊なんだ」


「「……」」


SPは、ただあっけに取られて黙り込んだ。そしてしばらく経つと、うんうんと大きく頷き始めた。


「なら! 納得だ! プレジデントにもそう伝えよう」


「分ってくれるか。日本の武士道を」


「おおーーーブシドー! 知っているぞ、死ぬことと見つけたり!」


「そうそう。話がわかる」


「映画で何度も見たからな」


「そう言う事だ、日本人のたしなみ、みたいなものだ」


「OK! 逮捕に協力してくれて感謝する」


「ああ。お安い御用だ」


 そうして、SP達がぞろぞろと出て行った。そこで、俺がクキに聞いた。


「クキ、自衛隊というのは侍や忍者の訓練をするんだな?」


 するとミナミも食いついて来る。


「初めて聞きました! 凄いですね!」


 だがそれに、クキがめちゃくちゃ呆れ顔で言って来る。


「アホかお前ら。そんな訳がなかろう。嘘も方便だよ」


「そうか」

「なーんだ」


「おいおい。何がっかりしてるんだ」


 ミナミがつまらなそうに言う。


「だって、自衛隊がそんな訓練してるって聞いたらロマンあるじゃん」


「ロマン……まあ、南ならそうか……」


「そうよ」


 俺達が話をしていると、オリバーが笑い出す。


「あーっはっはっはっ! 口から出まかせも、君らが言うと本当のように伝わるものだな」


「そのようだ」


「だが、気を付けた方が良い。仕方なく、大統領のところに連れて来たが、君らが監視下に入るのは私の本意ではない。特にラッキーボーイはな」


「俺は問題ない。だが、仲間が警戒されるのはいただけない」


「まあ、ラッキーボーイなら、どんな局面でも切り抜けるんだろう?」


「そんなところだ」


 そして既に、ゾンビ破壊薬の量産に入ろうとしていた。そこで俺が、アビゲイルから呼ばれる。


「ミスターヒカル。ゾンビの細胞をありがとう。あの氷は簡単に融けないから安全に運べますね」


「ああ」


「それで、今回はミスターヒカルに、お願いがあります」


「なんだ?」


「ゾンビ因子除去施術を、出来上がった破壊薬にかけてもらえますか」


「魔法をか? いいぞ」


 並んでいるガラスの容器に、それぞれ数字がふられていた。それを前にして、アビゲイルが言う。


「それぞれに特性が違うんです。だけど、今回はミスターヒカルの、例の施術に合わせて調薬してみたのです。それぞれに、ミスターヒカルの細胞も入っています」


「わかった」


 透明なガラスの液体に向かって、俺は手を伸ばして施術を発動させた。これまでは、この工程はやったことが無く、俺は言われるがままに魔力を放出する。


 すると……。


 周りがそれを見ていて、声を上げた。


「「「「おおお……」」」」


 なんと、そこに並んでいる透明な液体に色がついていったのだ。


「な、これは……」


 それはまるで、前世で見た、ミドルポーションやハイポーション、そして解毒薬などの色に似ていた。それを見て、アビゲイルが一番驚いた声を上げる。


「これは素晴らしいわ! 何この色! 綺麗!」


 他の仲間達も、物珍しそうに見ている。


「アビゲイル? どうなってる?」


「えっと、それはこれから調べます。まさか色が変わるとは思わなかったから」


「それぞれに違うのか?」


「成分を調べてお知らせします」


 だがそこで俺が、瓶を手に取って言った。


「……アビゲイル。これ、飲んでみていいか?」


「いや……飲むのはちょっと、危険かもしれません。いくらでも作れますけど」


「死にはしないさ」


「いやあ……」


 俺は真っ赤な血のような液体を口元に運び、チラリとアビゲイルを見る。


「だ、大丈夫でしょうか?」


 俺はそれを無視して、一口ゴクリと飲んでみた。


 それは一気に体に忍び込み、そして俺はニヤリと笑った。


「これは……ポーションだ」


 それを聞いてみんながざわめく。


「えっ! えっと、ポーションってあの、もしかして回復薬?」


「そうだ」


「すごおおおおい!」


 なぜか、俺の仲間達とオオモリが、めちゃくちゃ沸いていた。


「だが……皆が飲んで大丈夫かは分からない」


「「「「「えーーーーー!!」」」」」


 それを受けてアビゲイルが、赤い試験管を目の前に掲げて笑う。


「では、人体にどんな影響があるか調べてみますね」


 皆は色とりどりの液体を見ながら、ワイワイと話を始めるのだった。

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