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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
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第581話 殺人現場の第一発見者

 俺達は四六時中警戒を怠らぬようにし、中に入り込んでいる虫を探す事にした。クキとクロサキの見解では、ほぼスパイがいるのは間違いないという結論に至る。それがどこの関係者かは分らないが、どこかで動くだろうと予測した。


「じゃあ、行って来る」


「了解だ」


 誰にも気づかれずに動けるのは、認識阻害と隠形を使える俺だけ。皆は、怪しまれないように普段通りに動き、俺が自由に施設のあちこちをさまよった。こっそり通路を歩いていると、対面から二人の人が歩いて来る。俺はスッと天井に張り付き、スマホを構えて、情報をオオモリにながす。


「かなり厳しい状態だな」

「そうね、一部の軍は機能していないみたいだし」

「パンデミックの規模からしても、軍隊じゃさばききれないんだろ」

「まったく、ファーマー社は厄介な事をしてくれるわ」

「それでも、俺達が生きられているのは奇跡だ。ここから何とかするしかない」

「そうなるわね」


 俺には気づかずに過ぎ去っていく。嘘はついてはいないようで、話の内容からしてもファーマー社とは関係ないだろう。俺は通路におりて、また彷徨い始めた。すると、休憩室のようなところに数人が集まっているのを見つけた。すかさずスマホを構えて、オオモリに情報を流した。


「まさか、全滅って事はないよな」

「そう願うがな」

「大統領も頭を抱えていたわ」

「そりゃ、そうなるだろ」

「軍が機能しないんじゃねえ」


 その声を聴いていたがおかしなところはない。そのまま会話を聞いていても、皆が不安がっているだけで、地上に出れるのかどうかを心配しているようだ。


 俺がそこを離れて管制室に行くと、大統領と補佐官、そして他の数人がアメリカの状況を探っているところだった。有力な情報を探して、糸口を見つけようとしているのだろう。


「……全員じゃない」


 大統領の周りにいた補佐官、SPと呼ばれた警護、人数が一人足りなかった。だが、人数だけで、俺の記憶でも特定する事が出来ない。だからといって、そいつがスパイだとも限らなかった。もしかしたら休んでいるのか、トイレで席を外しているのかもしれない。


 そして少し待っていると、もう一人が戻ってきてまた席に着く。それも全て撮影し、そしてまた動く。


「……次に行ってみるか」


 他は、みなそれぞれの休憩室に居て横になっていた。今のところは全員が怪しい動きをしていない。

ぐるりと巡回を終えて、俺は速やかにみんなの元に戻る。


「どうだった?」


「今のところはわからん」


「こちらでも映像を見ていましたが、不審な点はなさそうでしたね」


「話をしてもいいのか?」


 するとクキが言う。


「盗聴器やマイクは全て見つけた」


「そうか」


 俺が送った動画を見て、クロサキとクキが話合っている。


「警戒してますね」


「そうだろうな」


「大統領か、補佐官か、エスピーか、それとも反対に専門家たちが警戒しているのか分りません」


「まあ、直ぐにばれたら、吊るし上げられるだろうからな」


 俺が聞く。


「スパイも、様子を伺っているという事か?」


「そうだろうな。いずれにせよ、ここに来てしまえば、外との連絡方法は限られている」


「そのようですヒカルさん。大統領の権限無くしては、勝手に連絡が取れないようです」


「そうか」


「あとは、どうするか」


「私達も、あちらに混ざって話をするようにした方がいいでしょうね」


「じゃあ、この休憩所に行って見るか」


「そうしましょう。自然な感じに」


 そして俺とクキとクロサキ、そしてシャーリーンも一緒に行って見る事になった。休憩所に行ってみれば、さっきより人数が減り、男女二人になっている。


「あ、どうも」


「あ。これはこれは、日本人の皆さん」


「飲み物はありますかね」


「ええ、どうぞ」


 そして俺達はその人らに混ざり、飲み物をもらって話を始める。


「あなた方は、何の専門家なんです?」


「疫病対策室と……」


「俺は獣医ですよ」


「そうなんですね」


「あなた方は、ジエイタイ?」


「そうです。日本の自衛隊」


「随分と、若い女の子がいるんですね」


 そこでクキが言う。


「それでも、優秀な隊員だ」


「そうですよね。生き延びて来られたんですもんね」


 話した様子は怯えている訳でも、不安を感じているわけでもなさそうだ。そしてクロサキが言う。


「しかし、ファーマー社は酷いですね」


「ええ。一体何を考えているのか」


「本当ですよね」


 すると疫病対策室の女が言う。


「日本は気の毒です。それが、我が国の会社が引き起こした事だとは」


「それは……もう、アメリカも同じでしょう」


「そうですね。日本の話を詳しく聞かせていただいても?」


 そしてクキとクロサキが、事細かく日本の経緯を伝えていく。それをきいて、二人が青ざめて来た。


「そんなことに……」


「アメリカの状態は、パンデミックが起きる直前の日本にそっくりです」


「壊滅……してしまう」


「と、思います。このままでは」


「許せんな!」

「まったくだわ!」


 なるほど、本気で言っているようだ。この二人は違うと見ていいだろう。クキが俺に目配せをするので、軽く首をゆっくりふる。


「いやあ、お邪魔した! コーヒーをありがとう」


「ええ。ここは自由に使っていいらしいわ」


「そうさせていただこう」


 そして俺達はその場を後にする。


「地道な捜査が必要ですね」


「そのようだ。まあ後はヒカルが探るかだな」


「続けよう」


 そして俺達が、薬品開発室に行くとそこに人が数人集まっていた。どうやら、どんな薬を作るのかが気になっているらしい。


「あ、ヒカル」


 ミオが来る。


「何をしている」


「薬の事が知りたいとの事で、何人かが見学にきたのよ」


「そうか」


 アビゲイルもエイブラハムも集中しているので、説明はマナがしていた。だが、もちろんマナも必要以上に話してはいない。そして、話を聞いていた奴らは戻って行った。俺達も、まだ引き続き調べようと言う事になる。


 だが、問題はその夜に起きた。


「いつのまに……」


 認識阻害と隠形で忍んでいるところで、人の死体を見つけてしまったのだった。しかも、休憩所で話した獣医の男が死んでいた。俺はその映像を撮り、直ぐにみんなの元に戻る。


「とうとう、何かがおきましたね」

 

 クロサキが言う。


「悲鳴やその音は聞こえなかった」


「たまたま、ヒカルさんがいないときにやったのでしょう」


「大統領に伝えるか?」


 するとクキが言う。


「いや、第一発見者は俺達じゃない方が良い」


 だがそうしているうちに、直ぐに人がやってきた。


「人が殺された!」


「なに!」


 そして俺達は白々しく、その現場に向かうのだった。

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