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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
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第577話 アメリカで起きた真実

 奥の部屋に入ると、グレイブがそこにいた面々をみて声をかける。


「随分と険しい顔をしておるな」


 すると、その奥に座っていた男が立ち上がった。


「グレイブ!」


「大統領。大変な事になってしまったのう」


「ああ……とんでもない事になってしまった」


 そしてグレイブは俺達を振り向きながら、大統領に言う。


「それを、よく知っている連中をつれてきたんじゃがのう」


「そうなのか! とにかく! こんな危険な所に、良く来てくれた!」


「いや、むしろホワイトハウスが持ちこたえているのが奇跡じゃな」


「ここにいる皆のおかげさ」


「なぜ、逃げなかったのじゃ?」


 すると、大統領補佐官が言う。


「いえ、救助ヘリと軍を待っていたのですが、連絡が途絶えたのです」


「なるほどの……恐らくは、来んと思うがの」


 大統領がデスクを回って、クレイトンに手を差し伸べて来る。二人は手を固く握って、お互いの無事を喜んでいた。


「とにかく良く来てくれた。戦略室へ」


「うむ」


 そしてすぐ隣の部屋に移ると、大きなテーブルと椅子があった。そこに全員が座り、早速、グレイブが俺達を紹介した。少し、ためらいながらの紹介になっている。


「彼らは……あの、日本から来た」


「なんだって!」


 そこにいたほとんどが席を立ち、騒然としている。そして大統領が俺達を見渡し、椅子に座った。


「そうか……、君達は日本人か」


 すると代表して、クキが挨拶をした。


「私は自衛隊です。そして彼らは、日本人の生き残りと道すがら協力する事になった者です」


「ジエイタイ!」


「驚きましたか?」


 そこにいた連中は、まるで亡霊を見るような目で俺達を見ていた。


「う、うむ」


「まあ……むしろ驚いたのは、我々日本人ですがね。大統領」


「それは……そうだろうな」


 クキが話し始めると、仲間達も鋭い目つきで大統領を見る。日本はアメリカを含む、近隣諸国から隔離されたのだ。その事で、日本は世界から孤立したと聞いている。


「ええ。条約まで作って隔離されましたからね」


 その場に、沈黙が流れた。


「だが、それは……我が国だけの一存ではない。数か国が条約に同意している」


「分かってますよ。でも、まさかアメリカまでがこんな事になるとはね」


 すると、そこにいた黒服が懐に手を入れた。それを見て、大統領が手を上げて制する。


「止めておけ」


 すると黒服が懐から手を抜く。そして大統領はクキに言った。


「報復に来た、という訳ではないのだろう?」


「どうかな。事と次第によってはどうなるかわからん」


「うむ」


 緊迫した空気が流れる。そこで、オリバーが大統領に言った。


「私はグレイブの息子です」


「知っているさ。オリバー」


「ありがとうございます。そして、私からも聞きたい事がある」


 大統領がグレイブを見る。グレイブが大統領に告げた。


「息子も、ずっと戦ってきたんじゃ。質問に答えてくれるかの」


「グレイブ。あなたが言うならそうしよう」


 そしてオリバーがゆっくりと尋ねた。


「単刀直入に聞きましょう。この大量破壊行動に、あなたは関与していますか?」


「いや。関与していない」


「知らないという事ですか?」


「それも違う」


「知ってはいる? と解釈して良いのですね」


「そのとおりだ」


 そこで俺達も空気が変わる。大統領が知っている事を、問いたださねば気がすまない。


「大統領が知っている事を、洗いざらい話していただいても?」


「……」


「このような状況なのです。無理だなんて言わせませんよ


 そして大統領は、頭を抱えて机に肘をついた。


「……分った。言おう」


「お願いします」


 大統領が補佐官に目配せをする。部屋にいた者達に出るように促した。黒服と補佐官が残る。


 すると突然、大統領が深々と頭を下げた。日本式の謝罪の方法だと聞く。


「すまなかった。ああいう、条約を結ぶしかなかった。あのとき、米国は詳細を掴んでいなかったのだ。だが、その大まかな全容が見えてきた時、米国は……口を閉ざした」


 それにクキが頷いて言う。


「そうだろうな。まさか、自分の国にその原因になる者がいるとなれば」


「そのとおりだ」


「何も手を打ってこなかったのか?」


「いや。打ってきた。その結果がこれだ」


「まあ……聞かせてくれ」


 そして再び大統領の話が始まる。


「オリバー君は、何処まで掴んでいた?」


「いや、全然ですよ。ファーマー社が人体実験をしているといったところで、被害者らの弁護をしている中で、少しずつ真実に向かっていたところでしたから」


「そうか」


「だが、彼らから聞いた内容で、核心を知りました。まさか、そんな恐ろしいことが起こっていたとは、全く思いもしていなかった。そして、今日ここに来るまで、まだ疑っていた」


 そして大統領が言う。


「米国としては、なんとしても秘密裏に全てを消し去る必要があった。自国の企業のしでかしたこの事を、大々的に処理する事が出来なかった」


 クキもオリバーも、シャーリーンもウンウンと頷いている。だが、ミオが声を荒げる。


「日本は! ほぼ壊滅したんですよ!」


「分かっている……いや、分ったのは条約が結ばれたあとなんだ。あれは、病原菌のパンデミックだと思われていた」


「その後で、日本を救おうとはしなかったのですか?」


「あの条約を反故にして?」


「そう!」


「すまない。国家間の約束事は、そう簡単に破れるものでは無かった」


「でも!」


 そこで、大統領ではなくクキがミオに言う。


「美桜。流石にそれは無理だ。日本を救う以前に、中国やロシアとの全面戦争になる」


「え……」


「ゾンビではなく、世界大戦で滅びる可能性が出て来る」


「そんな……」


 だがそれを聞いて、大統領がミオに言う。


「いや、お嬢さんのいう通りなのだろう。国の事を思えば、全力で助けてほしいというのは当たり前だ」


「はい……」


 更にシャーリーンが言った。


「残念ながら、ミス美桜。そう言う事が容易に出来ていたら、中東の情勢もあんなに荒れないわ。そして各地で起きる局地的な戦争も起きない」


 それを聞いた、グレイブが言う。


「まあ、嬢ちゃんが言うのも分からんでもない。代理戦争など、現地の人らからしたらたまったものではないからな。だから、我が国はテロにあうのだ」


「そう……」


 そして大統領が続ける。


「そんな複雑な状況もあり、自国に原因がある事から、秘密裏に処理をしようとした。だが、部隊をいくら送ろうとも、送り出した部隊は戻って来なくなってしまった。特殊部隊を何度派兵しても、戻ってくるものがいないという非常事態が続いていたのだ」


 皆は黙って聞いている。送った部隊がどうなったかの想像が、容易につくからだ。


 そして大統領が続ける。


「そして数週間前の事だ……ファーマー社の掃討作戦を発動した」


 そこで全員が顔を見合わせた。グレイブが代表したように言う。


「寝た子を起こしたわけか」


「……そうだ」


 それを聞いてクキも頷いた。


「なるほどな。それが、この事態の引鉄になったようだな」


「そう言う事だ。ファーマー社を壊滅させようと動いた結果が、これなんだよ」


「それにしては、酷いありさまだ」


 そこで大統領が首をかしげる。


「おかしいのだよ。こちらの作戦が筒抜けになっているような感じなんだ」


 それを聞いてオリバーが大統領に言った。


「なら、この人達の話を聞くべきです」


「そうか……わかった。聞こう」


 そこでクロサキが話を始める。


「大統領」


「なんだい?」


「私は日本の警察です。そして、彼らと一緒に行動して掴んだ事実があります」


「うむ」


「大森君」


「ええ」


 オオモリがリュックサックからタブレットを取り出し、それをテーブルに置いた。


「この人達を知っていますか?」


 そして大統領は、その画面をみて目を見開くのだった。


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