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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
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第571話 揺れるアメリカ市民と食糧問題

 まずは俺達が、そこにいる人達に、なぜこんな事になっているのかを説明する必要が出てきた。そこで、これまで俺達が見て来た事を全て話したが、信じる人間は半分半分というところ。


 そこにいる一人が言う。


「そんなものは陰謀論だろう。国務長官や医療局が、ファーマー社とグルだなんて」


 それに俺が首をひねって言う。


「本当の事なのだが……」


 すると他の女が言った。


「あれは、デマでしょ。デマだから信じるなと、テレビでも言っていたわ」


「いや……なら、今のこの現実は何だ」


「それは、病原菌の仕業に決まってるわ。だから、それが蔓延してこうなったの」


「いや……病原菌ではない。これは……」


 そこでアビゲイルがフォローを入れてくれる。


「生物兵器です。紛れもなくファーマー社が開発したものです。それに、私は……」


 それに対して、ミオが静かに言う。


「博士も、そこまでで……」


「でも」


 念のため俺達の正体を、ここにいる人には伝えていない。そして、ある男が続けて言う。


「しかも、GOD社まで……あの巨大IT企業まで絡んでるなんて、信じられないな」


 今度はオオモリが言う。


「本当です。ナノマシンを開発して、それもゾンビ細胞と融合させてます」


「ナノマシン? そんな物があり得るのか? そんな未来的な物が」


「いや、それと融合している者がいてですね……」


「ありえん」


 そこで、もう一度俺が言う。


「ここにいる皆も死んだ者や、ゾンビを見たんだろう。あり得ないという答えはないだろう」


「いいやデマだよ。それにあれは暴動だ。ゾンビだと思ってる、集団ヒステリーだろ」


 だが、それに他の奴が言う。


「いやいや。真実だろう、いくらなんでもこんなに証拠がそろってちゃあな」


「証拠? 暴動が起きただけでか?」


 違う女が言う。


「いいえ。あれはゾンビだわ、絶対に死んでる状態で動いてた」


「バカバカしい」


「むしろ、この状況で信じない方が、どうかしているわ」


「なんだと?」


「これが起きる前は、大多数があなたのような考えだった。でも、流石にこれは違うでしょ」


「映画の見すぎなんだよ」


「うそでしょ、あれは映画なんかじゃない」


 ピリピリしたムードになってきた時、ドアからオリバーが入って来た。


「いやいや。皆さん……いろいろな考えがあると思います。一概に、どれが真実と決められない事もあるでしょうな。だけど、一つ言えるのは、こちらのミスター九鬼は日本の自衛隊だ」


 それを聞いて一同がざわついた。


「日本は病気が蔓延して壊滅したはずだ」


 そこでクキが言う。


「ああ。この状況と同じだよ。五年からそこらで、壊滅するだろう。十年は持たないはずだ」


「アメリカが……滅ぶ?」


「アメリカだけ、で済めばいいがな」


「……」


 オリバーが場を取り持つ。


「まあ、終わりにしよう。今は、そんな話をしている場合ではない。いま、父がなんとか無線で連絡を取ろうとしているが、米軍の周波数にも何にも引っかからない」


「だめか……」


「ああ、ミスター九鬼。最初の案でやるしかあるまい」


 そこで一同は、いったん静かになった。いまはそれが頼みの綱で、皆は早くこの騒ぎが収束して帰る事を望んでいるのだ。だが、直ぐに帰れるようにはならない事は、俺達は知っている。


「国防総省に行くか。その前に、どこかの施設なり軍隊なりから連絡をしないと」


「やはり、あんたの父親を連れて、ゾンビを突破するしかあるまい」


「まあ、ラッキーボーイがいるなら可能だろう。だがその前に、大きな問題がある」


 そこで俺が答える。


「問題とはなんだ?」


「この湾に逃げてきた船たち。そう遠くない時間で、食料と水が尽きる」


「なるほど」


「そこでだ、ブロック島という島があるんだ。そこと無線で連絡が付いたのだが、そこにはゾンビが発生していないらしい。だが、外からゾンビが入るのを恐れて、自警団と警察が協力して閉鎖している」


「そこに行きたいと?」


「そうだが、自警団は武装をしているんだ」


「わかった。なら、そこに船を回せ」


「ラッキーボーイ。いいのかい?」


「いいもなにも、それしかないだろう」


「わかった。ならば、直ぐに周辺の船にも伝えよう」


「そうしてくれ」


 オリバーがその部屋を出て行き、振り向けば残った人らが二手に分かれているようだ。どうやら先ほどの話し合いの結果、割れてしまったらしい。


 とりあえず俺達も、ブロック島に向かう為の準備のために部屋を出た。他の残りのメンバーが待つ部屋に行くと、待ちくたびれたようにタケルが言う。


「話し、終わったんか」


「まあ、平行線だ」


「そうかい」


「それよりも、ブロック島という所に、この船団を連れて行くそうだ」


「なんでだ」


「食料と水が枯れるらしい」


「なるほどな」


 ここにいる皆は、日本でもっと過酷な状況を経験しているため、そう言われたところで当然だろうという顔をしている。そう、これからアメリカは、日本のようになってしまう可能性があるのだ。


 そしてミナミが言う。


「いやだわ。また、人と人が争うの」


 ツバサも残念そうな顔をする。


「ああ、なっちゃうのかな。日本みたいに」


 マナも悔しそうに答える。


「残念よね」


 なるほど。彼女らは、経験者だけあって、これから何が起きるのかを知っているようだ。俺が来た時は既に壊滅していたが、崩壊していく様は見ていない。だが、彼女らはその渦中にいて、食い止める事すらできなかったと悔やんでいた事もある。


 そこでミオが言う。


「さっきもね、人々が割れてわ」


「割れてた?」


「デマだって言う人達と、私達の言う事が本当だという人達」


「はあ……それか。残念ね」


 オオモリも不満そうに言う。


「あるあるですね」


 その話は俺も日本で散々聞かされた。日本人もほとんどがデマや、陰謀論として片付けていたらしい。人が死んでも、ゾンビが出ても信じられなかったらしいのだ。その結果、壊滅という現実が訪れた。


「実際に見ても、信じないってのはなんなんだろうね」


「プライドなのか……周りの意見に流されてるのか。それとも、怖いのか?」


「怖い?」


「自分がゾンビになるかもしれない、という事実から目を逸らしてる」


「受け入れられないと……」


「ええ」


 だが女達が俺を見た。そして、ミオが言う。


「もう、この船の人達がゾンビになる事は無いのにね」


「ヒカルが施術を施したんだもんね」


「そんなこと、余計に信じないかもね」


 そこで俺が言う。


「仕方がないさ。俺だって、魔王だと思っていた者が星の核だった。実際に戦うまでは、疑いもせずに戦っていたんだからな」


「そうか……」


 そしてそこに、オリバーとその父親が入って来た。どうやら周辺の船に連絡をして、ブロック島に行く事を伝えたそうだ。


「では皆さん、ブロック島へいきましょう」


「そうしよう」


 ニューヨーク沿岸にいる船団が、ブロック島に向けて動き出すのだった。

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