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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
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第557話 GOD社への潜入

 ここはサンフランシスコ、潜むワゴン車の中、六人が集まって外の様子を伺っていた。運転席にタケル、そして後部座席に俺とオオモリ、マナ、ミナミ、シャーリーンの五人がいる。車の窓の外に見えるのは、そびえたつ高層ビル。そこがGODの本社ビルで、俺達が侵入する予定の場所だ。


「それじゃあ、タケルは車で待機していてくれ」


「了解。ヒカルが行くから問題ないとは思うが、気を付けてくれよ」


「問題ない」


「僕は不安ですよ」


 そこでタケルが笑ってオオモリに言う。


「おまえの腕を信じろって」


「わかってますよ。でも、相手はあのGODですよ、流石にビビりますって」


「ばーか。おまえがビビったら、皆が不安になるだろうがよ」


「……あ、そうですね。まあ、間違いなく上手くいきます!」


「そう、それでいいんだ」


 するとマナが言う。


「大丈夫よ武。大森君の自信が無いことは、今に始まったわけじゃない。この人が、自信満々な時は自分のAIがうまく働いている時だけ」


 それを言われてオオモリがわなわな震え、口をパクパクさせている。タケルとミナミとシャーリーンが、肩を震わせて笑いをこらえているようだった。


 そしてタケルが、笑いを堪えながらマナに言う。


「愛菜。これから作戦だって時に、大森のテンション下げんなって。おまえに言われたら、一番ショックだろうが」


「だって、本当の事だもん」


 ミナミもマナに言った。


「愛菜……今だけは頑張れって言ってあげてよ」


 少し気まずそうな顔をしつつ、マナがオオモリに言った。


「まあ、上手く言ったら、一緒にゲームしてあげるわよ」


「ほんとですか!」


「いいわ」


「よーし」


 単純なものだった。コイツは、難しい事をいろいろ考える割には切り替えも早く、特にマナの言う事はよく聞くようになっている。


「では、行きましょう」


 シャーリーンの合図で、俺達は車を降り二手に分かれる。タケルとマナの乗るワゴン車はすぐにいなくなり、俺とオオモリは隣のビルへ向かって歩いて行く。ミナミとシャーリーンが、GOD社の正面玄関から入り込んで言った。


「あれでいいのか?」


「はい。カメラが彼女らをスキャンしても、ちゃんとあるAI会社に在籍した社員だと認識します。照合を掛けられても、アメリカの社会保障番号も持ってるように細工してます」


「わかった。俺たちも行こう」


「ですね」


 向かいの高層ビルの最上階までエレベーターで昇り、俺はオオモリを連れて屋上に上がる。ビュウー! と海風が強く吹きオオモリがふらついた。俺はオオモリをしっかりとつかみ、転ばないように支える。


「とにかくGOD社はセキュリティが厳しいですから、侵入経路はここしかないんです」


「問題ないさ」


 するとマナから連絡が入り、俺達のイヤホンに声が鳴る。


「シャーリーンとミナミはAI企業の社員として入り込んだわ。無事に商談の部屋へと通されたみたい」


「わかった」


「それじゃあ、作戦を始めましょう」


「了解だ。行くぞオオモリ」


「はは……もちろん……ですよ」


「凄い汗だな。大丈夫か? 顔も真っ青だが」


「い、いや。本当にここから飛ぶんですか?」


「なんだ? タケルは平気だぞ」


「あの人は、脳筋だから……」


 するとイヤホンに声が鳴る。


「おーい。聞こえてんぞ!」


「す、すいません。そう言うつもりでは」


 そこで俺がオオモリに言う。


「舌を噛むぞ。黙ってろ」


「は、はい!」


 そして俺はオオモリを脇に抱えて、屋上の端から端へと駆けた。バッとビルから飛び出して、スーッとGODのビルに向かって飛んで行く。


 ガッ! と、日本刀を壁に差し込み、オオモリを抱えたまま、窓から中を見てみる。人の気配はなく、機械だけがぴかぴかと光を放っているようだった。


「俺の背中にしがみつけ」


「う、動けません」


 ……両腕が塞がってしまっている。このままだと、この先のサーバールームに侵入する事は出来なかった。


「なら、仕方がない」


 俺は軽く身をたわめ、一気にオオモリを真っすぐ上に投げてやった。


「うっぎゃぁぁぁぁぁ!」


 その声を尻目に、剣を抜いて落下しながら目の前の分厚いガラスを斬り、ガッと手をかけて侵入した。剣を床に差し込んでそれを掴みながら、体を窓の外に出す。


「ぁぁぁぁぁぁぁああああ!」


 と、だんだん声が大きくなってきて、俺はオオモリを受け止め中に引きずり込んだ。オオモリが床に這いつくばって、ブルブル震えながら言う。


「はあはあはあはあはあ。い、生きてる……」


「あたりまえだ。まずは落ち着け」


「は、はい」


 オオモリは震える声で、マナに繋げた。


「し、しししし、ビルに入りました」


「どうしたの? 声が震えてるけど。こちらは防犯カメラをジャックしてるわよ」


「あ、あ、ありがとうございます。これから作業に取り掛かります」


「本当に頑張ってよ。待ってるわ」


 俺がオオモリの背中を軽くたたいて言う。


「深呼吸しろ」


「すぅぅぅぅはぁぁぁぁぁぁ」


「どうだ?」


「落ち着きました」


 マナが呆れたような声で言う。


「しっかりしてよね。ただもう少し待って、まだシャーリーンからの連絡が来てないから」


「はい」


 俺達が待っていると、直ぐに連絡が来た。シャーリーンたちが、カリムの潜らせている社員とコンタクトがとれたようだ。


「まもなく、システムロックが解除されるわ。開けてられるのは三分らしい。それ以上は警報がなる」


「やってみます」


「開いたわ」


 オオモリはサーバールームにある機械の扉を開けて、コードを差し込み衛星通信用の端末につなげる。


「さて……データを抜きます」


「緊張しているな」


「はい。ここは世界最高峰のITの会社ですからね……。ファイヤーウォールが設けてあると思いますので、何処まで潜れるかは僕のAIとシステムの戦いです。じゃあ、行きます」


 オオモリがスマートフォンを操作して、じっと機械を見ている。


「どうなってる?」


「もうはじまってます。きちんと、システムのロックが外されてますね。三分を越えたら、僕の侵入が見つかって警報が鳴っちゃうかもしれません」


「三分以内にいけるか?」


「わかりません」


 時計を見つつやっているが、もうすぐ三分が経とうとしていた。オオモリが汗をかきながら言う。


「まだ……ナノマシンのデータが見つかってません」


「失敗か?」


「さ、騒ぎをおこせませんかね?」


「ここでか?」


「いえ。シャーリーンさん達で」


 それを聞いてマナが言う。


「まって……頼んでみる」


 そして少し経つと、キュイキュイっと警報が鳴り始める。


「やば!」


 オオモリが慌てるが、マナが言う。


「そちらで警報が鳴るのと同時に、シャーリーンが火事のセンサーを鳴らしたわ。警報は誤魔化せるはず。でも、それもすぐに止まると思うから、早く」


「はい」


 オオモリがスマホを操作し、数分後に声を出した。


「ありました! よし! 回収です! ギリギリ、システムがロックされました!」


「離脱して。シャーリーンたちは既にビルを出ているわ」


「はい」


 そこで俺はオオモリに言う。


「じゃ、壊していいんだな」


「ええ。でも、本当の火事を起こしちゃうと、大勢の人が死んじゃいます」


「心配するな。焼けなければいいんだろう?」


 そして俺は機械の部屋に向かって、剣技を放った。


「推撃! 五連!」


 ドンドンドンドンドン!


 機械を壊し、最後に入って来た窓に向かって剣技を放つ。


「推撃!」


 バグゥゥン!と穴が開き、オオモリを担いでそのまま外に飛び出した。


「うっぎゃぁぁぁぁぁ!」


「静かにしろ! 舌を噛むぞ!」


 そのまま百メートルほど落下し、地上に降りてすぐにそのまま姿を消す。路地裏に入って、オオモリを地面に降ろすが、フラフラと歩いてぺたりと地面に座り込んだ。


「しっかりしろ」


「無理です……」


「……漏らしたのか」


「はい……」


 流石にかわいそうだ。思いを寄せているマナにそれを知られたら、男としての矜持が保てない。


「来い」


 俺は、オオモリを連れて数区画を歩き、服屋を見つける事が出来た。そこに入り、直ぐにズボンを買い込んでオオモリに着せる。そして漏らしたズボンは、捨ててくれと店員にお願いした。


「すみません……ヒカルさん」


「これで、合流できる」


「はい」


 そしてオオモリが連絡すると、心配そうな声が向こうから聞こえてきた。


「遅かったわね! どうかしたかと思ったわよ!」


「あ、すみません。愛菜さん……あの」


 そこで俺が電話をとって言う。


「少し手間取った。周辺にファーマー社がいないかを確認していたんだ」


「そうなのね。消防や警察が出ていて、もうこちらから中には入れないわよ」


「ならこちらから行く」


「わかった」


 確かに、あちこちでサイレンが鳴り響いていた。動きが鈍くなってしまったが、オオモリの男としての面子の方が大事だった。


「すみません。僕のせいで」


「気にするな。行くぞ」


「なんで着替えたのかって聞かれちゃうな」


 オオモリと俺は、みんなと合流する為にサンフランシスコの町を歩きだす。この町も凄く栄えていて、あちこちに高層ビルがあり、店もいっぱいあった。するとそこには、ル〇ヴィ〇ンの大きな店がある。


「あ……」


 俺はつい声を出してしまった。するとオオモリがスマートフォンを繋げて言う。


「あー、ヒカルさんの服を調達していきます」


 すると電話の向こうからマナが言う。


「あ、いいわ。ヒカルの服ね! そう言えば、大きい店あったものね」


「ええ。そろそろ新調したいでしょうし」


「大森君もいいとこあるじゃない」


「は、はは。そうっすね」


 持ちつ持たれつ。という事だろう。そして俺はオオモリと共に、ル〇ヴィ〇ンに入り、上から下まで新調して着て来たスーツを袋に入れてもらった。


「これで貸し借りなしだ」


「はは、なんか強引ですけど」


「気にするな」


「僕まで買っちゃいましたし」


「その方が、着替えた事に違和感がないだろう? あとで、シャーリーンに礼を言っておこう」


「ですね」


 消防車と警察車両が行きかう中を、俺達は新しい服を着て颯爽と歩くのだった。

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