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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
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第554話 ナノマシンの追跡を遮断せよ

一緒に消防署に入っていくと、消防隊員たちがボクサーを見て驚いている。そして、署員の一人がボクサーに声をかけて来た。


「えっ! なんっ! チャンプ!」


 それを聞いてボクサーが答える。


「昔の話だ」


「なんだってこんな所に? サプライズかなんかかい?」


「そういうわけでは……」


「おい! ルーサーだ! あの! ルーサー・ブルースが来たぞ!」


 そしてぞろぞろと、消防隊員が集まった。どうやらこのボクサーは、ルーサーというらしい。


「ま、まあ。そんな騒ぎにするつもりはないんだが」


 すると、消防隊員達がワイワイと話を始めた。


「もう、引退かと思ったけど、劇的な復活劇! 皆が興奮したんだぜ」


「まあ……ありがとう」


 本当は喜ぶところなのだろうが、ルーサーは素直に喜んでいない。少し表情が暗くなるのを、消防隊員たちは感じたらしい。


「ありゃ。不幸な事故だろ。気にしてるのか?」


 もちろん、試合で相手の首が折れて死んだことを言っている。あれは事故だと思ってるらしい。


「まあ……な」


「ありゃ、見事に入っちまったからな。次の試合も決まってるのかい?」


 そしてルーサーは、首を振って消防隊員に言った。


「そんなことよりも、ベガスが大変な事になっているんだ」


「あ、暴動が起きてるんだって? ニュースでずっとその話題だ。ベガスから人が流れて来なくなってしまったしな」


「そうだ。俺達は、そこから逃げて来たところだ」


「テレビでやってたがそんなにひどいのかい?」


「そうだ」


「ここまで来るだろうか?」


「米軍が閉鎖をしているからな、それを越えて来るかどうかはわからん。だが俺は、妻をあそこに残して来てしまったんだ。何とか救出しに行きたいんだが」


「軍に任せた方がよくないかい? 相当、危険なようだが」


「いや、軍も混乱していて多分救出が遅れる。あちこちに爆弾が仕掛けられて、テロが行われているようなんだ。その前に妻が死んでしまう」


 もちろん既に死んでいるのだが、ルーサーは嘘をつき通していた。


「テロ……そいつはヤバイな」


 そこで、ライブ動画をスマホで見ながら消防隊員が言う。


「あっ! また爆発した!」


 多分それは……米軍の攻撃だろう。だがそれを見て、ルーサーが嘘をつく。


「そうだ。爆弾が仕掛けられているんだ」


「そんなところに、行くってのか……」


 やはりラスベガスの状況は、動画で見ても酷いことになっているのが分かる。そこに戻るという、ボクサーの言葉を聞いて消防隊員たちがざわざわしていた。


「そっちの二人は?」


 唐突に俺達に質問が来た。


「俺達も逃げてきた。だが、どうしても行くと言ってきかないからな。一緒に戻る事にした」


「そうそう! あんな爆弾だらけのベガスに一人で行くなんてよ! 自殺行為だぜ。だから俺達もな」


 すると消防隊員たちが話し合いを始め、一人の隊員がルーサーに言う。


「爆弾処理の防弾服があるんですが、それを着て行ってください!」


 するとルーサーはすぐに消防隊員の手を握る。


「そうか! 貸してくれるか! これで妻を助けに行ける!」


 すぐさま防弾服が用意され、消防隊員の協力のもとで装着された。あっという間に、ルーサーが完全防備の状態になる。


「これで少しは何とかなるかもしれない」


「ありがとう! この事は一生忘れないよ」


「頑張ってくれ! チャンプ! 俺達はあんたを応援する!」


「早速行って来る!」


 すると消防団員の奴らが言う。


「次の試合も楽しみにしてるぜ!」

「あんな事故は気にすんな!」

「頑張ってくれよ! 奥さんを助けてやれ!」


 消防署員に見送られつつ、タケルが言う。


「マジでうまくいきやがった。元、チャンピオンは伊達じゃねえ」


 するとルーサーの息子が嬉しそうに言う。


「そうだよ! パパは凄いんだ!」


「ああ。おまえの父ちゃんはチャンプだったんだな」


「そうだよ」


 そして俺が言う。


「後はアルミとやらだが」


「んじゃ、ホームセンター行くか」


 そして俺達は、その街のホームセンターに行って、防火用のマットを買った。


「これをガムテで巻き付けるぜ」


「よし」


 そして防弾服の上に、アルミの防火用マットを巻き付けていく。もう、銀色の不思議な人型の人形のようにしか見えない。


「パパ! ロボットみたい!」


「そうか?」


「カッコイイ」


 そしてタケルが苦笑いして言う。


「シュールだけど、これで電波を遮断できるはずだぜ」


「行こう」


 タケルがバイクに乗り、その後ろに座る銀の甲冑を着たルーサーを縛り付ける。目立つが、きっとこれで敵からは追われる事はないだろう。


「パパ! カッコイイ!」


 何故か子供だけテンションが上がっている。そしてタケルがキラキラ光る人を乗せて、俺の前を走って行った。


 町を離れてしばらくすると、後方でドン! と音がなり、煙が上がっているのが見える。離れた所には、ヘリコプターが飛んでおり、どうやらそこから攻撃されたらしかった。


 俺はバイクを止めて、剣技を繰り出す。


「閃光孔鱗突!」


 するとそのヘリコプターは火を噴いて、地上に落下し爆発する。


「いくぞ!」


 消防署でもたついたおかげて、増援が追い付いて来ていたらしい。そして間違いなく、ルーサーの体内にある何かを追跡している事実がそれで分かった。


「間違いないようだな」


「そのようだ」


 その後、俺達がロサンゼルスの手前に到着し、タケルがクキに連絡をした。


「九鬼さん」


「到着したか?」


「ああ。だが目立ちすぎてロスを走れねえ」


「どこかに隠れていろ。俺達がピックアップする」


「すまねえ」


 俺達が寂れた街にバイクを進めた。すると、ルーサーが言う。


「暑い。水を……」


「待ってろ」


 タケルがバイクで、飲み物を買いに行った。すると銀のルーサーを見つけて、子供達が集まって来る。


「なにこれ! ロボット?」


 答えに困った俺はそのまま答える。


「そうだ」


「凄い。ロボットだって」

「うそだあ。ロボットなわけないよ。着ぐるみだろ」

「ねえ。ロボットなら強いはずだよね」

「そうだ! みせてよ! 力を!」


 そして俺が言う。


「ほら、どっか行け!」


「みせてよー!」「そうだよ!」「嘘なんでしょ!」


 するとルーサーの子供が言う。


「嘘じゃない! 強いんだ!」


「嘘だあ!」


 子供がべそをかくような表情になると、ルーサーはおもむろに地面に向けて拳を降ろした。


 ズン! エンハンサーXの影響か、物凄い力でコンクリートにヒビ割れが出来た。


「うわあ! 本当だ!」

「凄い! ロボットだ」

「凄いぞ!」


 そこにタケルが戻って来る。


「な、なんだなんだ? どうなってやがる?」


「この、ロボットが珍しいらしい」


「そうかそうか。んじゃ、その力も見たんだろ。おまえらどっか行け。じゃないとロボットが暴走してとんでもない事になるぞ!」


 そうやって脅かすと、子供達は慌ててその場を去って行った。


「ほら。飲みもんだ」


 俺が顔の前のファスナーを開けて、タケルが買ってきたペットボトルを突っこんで飲ませる。タケルが子供にも飲み物を渡した。


「コーラで良いか」


「うん」


 そして俺達が水分を補給していると、向こう側にさらに大勢の子供が見えた。


「うわ。友達を読んだのか。逃げっぞ!」


「そうだな」


 俺達はバイクに乗って場所を移す事にする。


「ちっと山の方にいくぜ!」


 このままラスベガスに行っていたら、目立ってしまいSNSで撮影されたかもしれない。そうなれば、ファーマー社に感づかれる可能性が高かっただろう。タケルがここで止まった判断が、正しかったことに俺は感心するのだった。

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