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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
552/612

第552話 検体を確保する

 ストラトスフィアタワーが見えるところで、俺達は周囲の空を確認していた。人は避難していなくなっており、そこら中にゾンビがウロウロと徘徊している。見える範囲に幾つか高いビルが見えていて、その屋上にヘリコプターが下りているのが見えた。


「あれじゃねえかな?」


「いや。あれは人を救出しているようだ」


「そっか」


 先ほどから、何機ものヘリコプターが飛び回っており、どれがファーマー社のものかは分からない。先制攻撃されれば敵に逃げられるので、スマートフォンの電源を切りこちらの位置情報をきっていた。


「でも、繋がない事にゃ埒があかないな」


「タワーに登るか」


「しゃあねえな」


 ゾンビだらけの町を走り、ショッピングセンターに行くと、既にその中もゾンビだらけになっている。


「ゾンビ!」


 子供が叫ぶが、タケルがあっさりとゾンビを潰した。


「うわ。凄い」


「とりあえずバイクを隠して、子供を背中に縛るロープを探そう」


「おっけ」


 俺達は軒下にバイクを入れ、ゾンビ達がいるショッピングセンターに入っていく。次々かかって来るゾンビだったが、全てを駆除し目的のロープを手に入れた。そして子供に言う。


「少し窮屈になるかもしれない」


「うん」


 俺が持っているリュックをタケルに渡し、子供を背負ってしっかりと縛り付けた。そしてバイクのヘルメットをかぶせ、しっかりとしがみつくように言う。


「んじゃ、いくか」


「建物伝いに近づいて、タワーに入るぞ」


「おう」


 身体強化を施した俺達は、建物伝いにストラトスフィアタワーの手前の建物まで来た。空にヘリコプターの気配はなく、真っすぐにタワーの下に潜る。


「敵の気配はない」


「スマホの電源を入れるぜ」


 タケルが電源を入れ、ゾンビを潰しつつ待っていると連絡が入った。


 タケルが俺の目を見て繋げた。すぐにつながったのでタケルが答える。


「ども」


「来たか?」


「ああ。何処に行けばいい? ゾンビだらけでどうしようもない」


「タワーに登って来れるか?」


「分かった。エレベーターは使えるんだろうか」


「問題ない」


 ゾンビを処理しつつ、エレベーターのボタンを押すと、上からゆっくりと下がってくる。


「気配はどうだ? ヒカル?」


「今のところ周囲に気配はない。エレベーターにゾンビが乗ってるくらいだ」


「そうか。上に、敵がいんのかな?」


「どうかな? ただ罠だろうな」


「だよなあ」


 すると、子供が俺の背中からぼそりと言う。


「お兄ちゃんたち。馬鹿なの? なんで敵の誘いに乗ってるの?」


 なるほど。子供から見れば俺達は馬鹿に見えるらしい。タケルが笑いながら言う。


「ちがうぜボウズ。俺達は敵をひきつけてんだ」


「こっちから寄ってるように見えるけど」


「ああ、まあ俺達は餌みてえなもんだ」


「……馬鹿なの? 死んじゃうじゃん」


「あーなるほどね。まあ、殺せるもんなら殺して見ろって感じだ。こう見えても俺達は強いからな」


「相手は銃を持ってるんだよ」


「あ、それも想定してんだよ」


「馬鹿みたい」


 目の前のエレベーターが開いて、中から数体のゾンビが出てきた。それを瞬時に剣技で切り捨てる。


「ジャパンのサムライみたいだね」


「サムライ? いや勇者だ」


「あ。知ってるよ! 日本のアニメに出て来る!」


 タケルが笑って言う。


「そうそう! それそれ、その勇者」


「凄いね。じゃあ勝てるね!」


「そう言う事だ」


 エレベーターに乗り込み、最上階のボタンを押した。何事もなく、上階に到着してドアが開く。うめき声が聞こえて来て、そこにゾンビがうろついていた。


「まあ……こんなところに呼ぶのは、おかしいよな」


「ほら! こんな所に人が来るわけ無いよ! 騙されたんだよ!」


「まあ、人はな」


 そして電話が鳴る。タケルが出ると相手が言った。


「着いたか?」


「ああついた。何処にいる?」


「直ぐに行く」


 俺達が外展望台で待っていると、ヘリコプターの音が聞こえてきた。風が強いが、どちらから飛んできているかは分かっている。


「恐らくここに向かって来ている」


「来たか」


 そのうちに、ヘリコプターの機影が見えて来て、俺達の方に回り込んできた。


「あんたらか? 手を振れ」


 タケルが手を振る。その次の瞬間だった、ヘリコプターの脇から何かを構えている奴がいる。

それを見た子供が大きな声で叫んだ。


「ほら! バズーガ砲だよ! やっぱり罠だ」


 だが俺が言った。


「うまく引っかかってくれたな」


「こうも簡単に釣れるかね」


 俺はすぐさまタケルの腕をつかみ、そのままヘリコプターに向かって走った。そしてストラトスフィアタワーの端から飛び、バズーカの弾とすれ違いにヘリコプターに飛び乗った。


 敵は突然の事に、唖然として俺達を見ている。


「邪魔だ!」


 タケルがそこにいた三人を掴み、外に放り出した。


「やめ!」

「うわ!」

「わあああああ」


 落下していく奴らを尻目に、手錠をかけられて固定されているボクサーに言った。

どうやら身動きが取れないように、縛られて何かを着せられている。


「子供を連れてきた」


 するとボクサーは目を見張って、自分の子供を見る。


「ボーイ! 生きていたのか!」


「パパ!」


 俺はすぐにボクサーの拘束を斬った。既にタケルはヘリコプターの操縦士に銃を突き付けており、冷静に言う。


「降ろせ。頭を撃ちぬくぞ」


「お、お前達は何だ! なんでそんなところにいるんだ?」


「この人を助けに来たんだよ」


 だがそいつは笑い始める。


「くっくっくっ」


「何がおかしい? 殺すぞ」


「死ぬのはお前らだ!」


 そしてヘリコプターは急降下し始める。俺はタケルに行った。


「そいつはゾンビ化兵だ。落ちても死なん」


「そういうことかい」


 地面に激突する寸前に、俺はボクサーとタケルを掴んで、空中に飛んでいた。ヘリコプターは爆発し、地面に着地する。すると周りのゾンビ達が、爆発につられてこちらに寄って来た。


「ゾンビ化兵も混ざってるな」


「さっき振り落としたのがそうか?」


「そうだ」


 するとボクサーが言う。


「ダメだ! アイツらは死なない! 銃弾でも死ななかったんだ! 逃げよう」


「分かってる。そうでなければ、あんたを捕らえる事なんてできなかったろうからな」


「……あ、あんたら、一体何者なんだ?」


「話は後だ」


 そして俺は、タケルとボクサーに言う。


「伏せろ」


 ダッ!


「飛空円斬!」


 ザン! と見える範囲のゾンビが崩れ、三体ほどが体を斬られながらも、バタバタと動き回っていた。


「屍人斬、刺突閃三連」


 そしてゾンビ化人間は静かになる。


「な、なんだ? 本当にボーイの好きなアニメのようだな」


「そうなんだ。この人は勇者なんだよ」


「ユーシャ?」


「そうだよ」


 そんな話をしていると、燃え盛るヘリコプターがガン! と動いた。燃える人間がそこから出て来て、俺達を睨んでいるようだった。


「あんなになっても生きてるんだよ」


「丁度よかった」


 シュッ、と縮地ですれ違いざまに、そいつの首を切り落とし頭を掴む。燃える頭を掴みつつ、そのまま皆の元に戻った。


「あ、熱くないのか?」


「問題ない」


 ブンブンと頭を振って火を消した。焼け焦げたゾンビ化人間の頭を手に入れる。


 ボクサー親子は唖然として俺を見ているが、タケルが冷静に言った。


「あんたも、一緒に来てもらえるかい? このラスベガスを脱出するからよ」


「わかった」


 そしてタケルが聞いて来る。


「この人に試験体因子は?」


「あるようだ」


「適合者ってやつか?」


「ああ。そのようだ」


 タケルがリュックから金属のケースを取り出した。それに、ゾンビ化人間の頭を入れて鍵をかける。


「もう一個は使わなくて済みそうだな」


「ああ。良かった」


「いくか」


 俺達は、隠したバイクのところに行く。ゾンビを倒していく俺達を見て、ボクサーは唖然としていた。


「強いんだな」


 タケルがボクサーに答える。


「あんたも災難だったな。相手のボクサーを殺しちまって」


「ああ……私は何という事をしてしまったのだろう」


「薬……使ったんだろ? エンハンサーXを」


「……そうだ。あれがこんな力を生むとは思っていなかった」


「縋るのも分かるけどよ。やっぱり受け入れねえと」


「分かっている」


 子供は何の事か分かっていないらしい。


「あんたは俺のバイクに乗れ」


 ボクサーが俺の後ろに座る。すると丁度子供が挟まるような形になった。


「ボーイ。ママを守れなくてすまなかった」


「……うん……」


 俺は二人に言った。


「これからロサンゼルスに向かうぞ」


「わかった」


 バイクは燃え盛るラスベガスを滑り出し、ゾンビや軍隊を避け来た時の侵入経路に向かって走り出す。恐らく、この町の人間の半数以上はゾンビになってしまっただろうと思う。ひとまずは米軍の救出部隊に任せ、壊れて行く街を後にするのだった。

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