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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第一章 違う世界
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第54話 この世界を理解した

 ディーブイディーを見ている時、タケルが早送りというものをやった。それをやると通常の何倍もの速さで映像が流れるらしく、声や音も甲高くなり画面上の人がせわしなく動く。


「なんだそれは?」


「こうやって飛ばしたい所を飛ばせるんだよ」


 早く流れる映像を見ても、俺にはきちんと音も声も全て聞こえていた。


「やり方を教えてくれ」


「ああ、簡単だ。最初に再生を押す、そしてこの三角形が二つのボタンを押すだけだ」


「こうか」


 するとディーブイディーの映像が早くなる。何度も押すとどんどん早くなって、何度目かに元の早さに戻るのだ。見終わったら取り出してまた違うのを入れて再生を押す。既にヤマザキも女達も眠ってしまい、タケルだけが俺と一緒に見ていたのだった。


 そしてタケルが俺に言う。


「てかさ。流石に飽きてこねえか? ねみぃしよ」


「全く」


「凄い集中力だよ」


「そうか?」


「てか、山崎さんも女達もみんな寝ちまったぞ。俺もさすがに限界だぜ」


「なんだ早く言え。俺はまだ見ているからタケルは寝るんだ。音を小さくするのはどれだ?」


「これを押すと小さくなる」


「なら下げてくれ」


「わかった」


 皆の迷惑にならないように、音を小さくしてもらった。


「じゃ、寝るからよ。ヒカルも良いところで寝ろよ」


「わかった」


 俺はそういったが、全く眠くはない。こんな凄いものを前にして眠る事など出来ない。俺は一気に言葉を吸収し、そして日本や世界の事を知る事が出来た。そして字幕なる物を出してもらったおかげで、言葉も覚える事が出来ている。


「じゃあよ。おりゃ寝る。おやすみ」


「おやすみ」


 タケルが眠ったので俺は自分に思考加速を施し、聴覚上昇、知覚上昇を施した。更に詠唱理解を使ってディーブイディーを見始める。もちろん最大の再生速度にして最初から最後まできっちり見た。すると、どれが本当でどれが作りものかも分かって来る。この大地は惑星という物で、沢山浮かぶ惑星の海が宇宙と言うらしい。俺達がいる場所は地球で、この無限とも言うべき星の一つなのだそうだ。あの陽の光を放つ空の灯りは恒星といい、自分で燃え続ける事の出来る星なのだとか。


 特に歴史や様々な外国の風景などは非情に興味深く、かなりの物を知る事が出来た。さらにこの国は、昔はこんなに発達してはおらず武士という物が存在していたらしい。それは侍と呼ばれ、剣で戦う職業の人間だった。さらに大昔には恐竜と言う、ドラゴンのような生物も存在していたらしい。


 この国にも剣はあったのか。剣ではなく日本刀と呼ぶらしいが、かなりの切れ味と強さを持っているようだ。ミナミがどこかで見たと言っていたが、それがこれなのだろうな。これならば、あるいは俺の剣技がまともに使えるやもしれんな。


 そんな事を考えながら、手当たり次第に皆が持って来たディーブイディーを見まくる。ディーブイディーはDVDと表記するらしく、銃と言う漢字も他の漢字も覚えて吸収していく。俺の脇にはどんどん見終わったDVDが積みあがっていき、その分だけ俺の知識として吸収されていくのだった。


 そして、朝が来た。外が薄っすらと明るくなってきたのが分かる。だが誰も起きてこないので、俺はその後もDVDを見続けるのだった。だいぶ外が明るくなってきた時、ヤマザキが起きて来た。


「なんだ、ヒカル。ずっとDVDを見ていたのか?」


「ああ」


「飽きないもんだな」


「全く」


「ちょっと、小便してくる」


「わかった」


 そんな事はお構いなしに、俺はDVDを見続けた。しばらく見ていると女達が起き始める。


「えっ、ヒカルまだDVD見てたの?」


 俺が振り向くとミオが寝ぼけ眼で言って来る。


「ああ」


 するとツバサとユリナとミナミもやって来て、ユリナが言った。


「おはよう…。まだ見てたんだ?」


「ああ」


「よっぽど気に入ったんだね」


 気に入ったという訳ではない。この世界で生きていくために魂に刻み込んでいるのだ。おかげでだいぶ皆が話している事が理解できている。


 すると、ツバサが気づいて言う。


「えっ! まってまって! ヒカルの右側に置いてあるDVD…もしかして」


「なんだ?」


「それ、全部見たの?」


「そうだ」


「「「「うっそ…」」」」


 四人の女が絶句している。そしてミナミが言う。


「時間的に無理じゃない?」


 そこで俺は答えた。


「ミナミは倍速再生を知らんのか? なんと四倍まで早くできるんだぞ」


「てか、そう言う話じゃなくてさ。それじゃ何を話しているか分かんないんじゃないの?」


「問題ない」


 するとユリナが唖然として言った。


「問題ないって…、全部聞き分けられるって言うの?」


「そうだ」


「「「「‥‥‥」」」」


 そうか、彼女らは思考加速も知覚上昇も聴覚上昇も使えないんだったな。だが、ならなんでこんな機能があるんだ? 早く情報を吸収したい人用の機能じゃないのか? 無駄な機能と言う事になるが。


 ユミとマナも起きて来た。そして今度はマナが聞いて来る。


「おはよう。何話してるの?」


「ヒカルがこのDVD全部見たんだって」


 ユミが俺の脇に詰みあがっているDVDを見た。


「えっ…飛ばし飛ばしってこと?」


「そうじゃなくて、超速で流れる映像を見てたらしいの」


 するとユミが俺に聞いて来る。


「ヒカルは、そんなんで頭に入るの?」


「全く問題ない」


「うっそ…」


 するとミオが言う。


「ていうかさ、ヒカルにとっては普通なんじゃないかな? だってさあ、スー〇ーマンを倒せる人っていると思う?」


「「「「いないと思う」」」」

  

「でしょ? そんで神と戦って勝ったって言ってるのよ? 逆に言うと、このくらい出来なきゃ無理じゃない?」


 するとユリナがポンと手を叩いて言う。


「納得! 美桜の言うとおりだわ。ていうか、いちいち驚くのも大変だし」


「まったくだね」


 そしてユミが周りを見渡して、まだ寝ているタケルを見つけた。


「あいつ、まだ寝てるんだ」


 それに対し俺が言う。


「タケルは遅くまで俺に付き合ってたんだ。まだ寝かせておいてやれ」


「わかったー。なんかヒカルはタケルと仲がいいよね」


「あいつは勇敢だからな。俺はアイツを尊敬している」


「はぁ? タケルに尊敬できる部分なんてあるの? ヒカルが?」


「もちろんだ」


「まあ、ヒカルにしか分からない何かがあるのかもね」


 そんな話をしていると、ヤマザキが外から帰って来た。


「トイレあったぞ」


「あ、行ってこよ」

「あたしもー!」

「私もいくー」


 そう言って女達が全員トイレに行った。ヤマザキは朝飯を作るために、ガスコンロに鍋をおいてペットボトルの水を入れて火をつけた。そして俺は聞いてみる。


「レトルト食品を食うのか?」


「おっ! ヒカル! レトルト食品って言葉を覚えたのか?」


「それだけじゃない。かなりの言葉を覚えたし、この国の習慣や世界の事、そして宇宙の存在を知った。そのほかにもいろいろな」


「恐ろしいほどの吸収力だよ。俺のようなおじさんには無理だな」


「そうか」


そして皆が戻ってきて、ヤマザキを手伝って朝食を用意し始める。ミオが俺にペットボトルの水を持って来てくれた。


「はい、ヒカル」


「ありがとう」


 そして俺はペットボトルを開けて水を飲んだ。体中に染み渡るように意識をして飲む。


「おはよ」


 今度はタケルが起きて来た。


「なんだタケル。まだ寝ていれば良かったんだ」


「目が冷めちまったよ」


 するとミオがタケルに水を渡した。


「サンキュ」


 タケルは俺の前に座り、散らかっているDVDを見た。


「えっと、まさかとは思うが」


 タケルが言おうとすると、ミオがそれを察して答える。


「そのまさか。これ全部見たんだって」


「だから俺に早送りを聞いていたのか。それでどうだった?」


「いろいろ知ったさ。俺は今興味があるのは、タケルが乗っていたバイクってやつだ。あの鉄の騎馬に俺も乗ってみたい」


「ヒカルが、単車に乗りたいって?」


「まあな。900CCのが良いな」


「なんだ。随分詳しくなってんじゃねえか? 大型なら専門店に行かねえと無いな」


「いつか連れて行ってくれるか?」


「いつか、なんてしょぼい事いうなよ」


 そしてタケルがヤマザキの所に行って話す。


「山崎さん! ヒカルが単車欲しいってよ。俺、東京周辺で単車売ってる店、何件か知ってんだよ。そこに行く訳にはいかねえか?」


「珍しいな。ヒカルが言い出したのか?」


「そうだ」


「よし、なら少し予定を変更して、バイク屋に寄る事にしよう」


「わりいね」


 そしてタケルが俺に向かって、親指を立ててウインクをした。俺も親指を立ててウインクして返す。


「あー、なんか、ヒカルと武がー仲が良いんですけどー」


 ユミが焼きもちを焼いたように言う。するとユリナが言った。


「仕方ないじゃん。同じくらいの年齢だし、男同士通じるものがあるんでしょ」


「なーんか、ずるいなあ」


 するとツバサがそれに言った。


「なんかー、いいじゃない。青春って感じで」


「青春ねぇ…」


「そ、青春」


 そんな会話をしているうちに、ヤマザキ達が食事の用意を終え俺達は朝飯を食う。俺がDVDで知った知識を話すと皆が驚いていた。朝食を食べ終わり、DVDやテレビや食事で使った物を全てトラックに積み込んで出発の準備を終える。


 ヤマザキが俺に聞いて来た。


「ヒカル! 周囲のゾンビはどうだ?」


「百メートルほどの位置に数体。問題なく出発できる」


「よし! 行こう」


 そして俺がバールで鍵を斬り落とし、トラックとワゴン車はリサイクルプラントを出た。ちらほらとゾンビの気配はあるものの、数は全く問題になることは無かった。俺達の乗っている車は無事に国道四号線に戻り、一路東京に向かって直進するのだった。

さあ皆もレンタルで世界を知るのだ

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