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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
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第549話 秘密の研究所と必要な物質

 オリバーが用意した研究施設は、通常の病院では無かった。堅牢な建物の地下室に、様々な研究用の機器が揃えてある。そこに仲間達と一緒に来て、オリバーと顔合わせをするところだった。


 俺達が待っていると、オリバーとボディーガード数名が部屋に入って来る。いつも一緒にいるボディーガードも、隣に立っていた。


「お待たせしたね。ラッキーボーイとお仲間さんたち」


 クキが挨拶をした。


「クレイトンさん。カジノ依頼ですな」


 ボディガード達はクキを見て、厳しい目つきになる。おそらくクキは、相手を警戒させてしまうような気配を発しているのだろう。だがオリバーは構わずに、クキの手を取って言う。


「あんたが、リーダーという訳かい。よろしくお願いするよ」


「まあ、経験上そうしているだけですがね」


「……ふむ」


 やはり、クキは一目置かれているようだ。そして、相手の気配に気づいたクキが言う。


「あー、なんと言ったらいいかな? 俺がリーダーだとしても、この中には俺より強い奴が、何人かいるってことを付け加えておこうかね」


 それを聞いたボディガード達が顔を合わせてから、俺たち全員を見た。


 そこでクキの言葉に俺が付け加える。


「そのとおり。俺のような特殊な能力を持った奴らだ。全員が人間離れした何かを持っている」


「ラッキーボーイのような力?」


「そうだ」


「恐ろしいな。壊滅した日本から来た人らが、全員何らかの能力をもっていると?」


「まあ、そうだ」


 するとボディーガードの一人が、苦笑しながら言う。


「信じられない。どこからどうみてもお嬢ちゃん達だ。そこの太っちょに能力があるとは思えない」


 なかなかに喧嘩腰だが、オオモリだけが何故かうんうんと頷いている。そして相手の言葉は、恐らくこちらを警戒しての事だ。それにまだ若い女達に、そんな能力があると思えないのも当然だ。


 だが突然、ミオが口を開いた。


「南の入り口に二人、東の部屋に四人、二階廊下の東に一人、北の階段付近に二人、入り口から入って来たあなた達の他に、外で警備をしている人らが西に三人、東に三人、車両に一人待機してるわ」


 それを聞いてボディーガード達はざわつく。そしてオリバーが、いつもそばにいる奴に確認をとった。


「どうかね?」


「間違いありません」


「だそうだ」


 すると、けしかけて来たボディーガードが素直に謝る。


「失礼しました」


 やはり俺達を試しての事だったらしい。それに俺が付け加えて言う。


「そこにいる俺の相棒と、そっちの日本刀の子は、あんたらが束になっても敵わないが、試してみたらどうだ?」


 俺はもちろん本気で言っていた。タケルとミナミは、どちらも前世で言うレベル十を越えていて、普通の人間にはどうする事も出来ないだろう。

 

 すると、いつもオリバーの隣にいるボディーガードが苦笑いして言う。


「あんまりいじめないで欲しい。ラッキーボーイの能力から推し量っても、彼らの力が凄い事くらいは分かっているさ」


 すると俺の仲間達がくすくすと笑った。そこでタケルが言う。


「気にしないでくれ。最近、ヒカルは冗談を覚えたんだよ」


「冗談か……心臓に悪い」


 そしてクキが言う。


「二十名近い警護をつけてくれるとは有り難いですな」


「当然の事だよ。博士が世界を救うのだろう?」


 そしてようやくオリバーは、奥にいるアビゲイルに目を向けて言った。


「博士……」


「どうも……」


 昨日までは敵同士という間柄、だが話し合いの上では和解しているはず。


「私は誤解していたようだ」


「ゾンビ因子を見つけてしまったのは本当なのです。ですが私の手を離れて、一人歩きし始めてしまい、世界を破滅の危機に追いやってしまったのも事実」


 それを聞いて、オリバーがふうっとため息をついて言う。


「いつの世も、研究者の立場はそうだ。あのアルベルト・アインシュタインも相対性理論を見つけたが、核弾頭を日本に落としたのは彼じゃない」


 するとアビゲイルが悲しそうな顔で言う。


「はい……また、日本が最初の実験場になってしまいました」


「極東のあの国は、なぜ標的になってしまうのでしょうかねえ?」


「わかりません。それをファーマー社の本部を突き止めて、問いたださねばなりません」


「それは、やはり私の仕事なんだろうねえ」


「やって……下さるのですか?」


「その為に、こんな事をしている」


「はい」


 そしてオリバーが部屋の中を見渡した。


「オーダー通りの研究機器をそろえたつもりだが、まだ必要なものがあれば言ってくれたまえ」


「機器は問題ありません。後は、こちらが用意するだけです」


「何を用意するというのかね?」


「ゾンビ、及び試験体の細胞を回収してもらいます」


 そこで皆が俺を見た。もちろん既に話し合っているので、俺は頷いて言う。


「俺とタケルが行く。後は、全員でアビゲイルの護衛だ」


 ボディガードが何か言いかけるが、俺はそれを制する。


「もちろん、あんたがたを信じていない訳じゃない。だが敵は、想像を絶するのだと理解してほしい。二十人も警護をつけてもらっているが、人数の問題ではないんだ」


 そしてオリバーが言った。


「ベガスは米軍も包囲しつつあるようだ。本当に二人でいいのかい? うちのシークレットも同行させるが?」


「……」


 いつも一緒にいるボディーガードが、オリバーに笑っていう。


「クレイトン様。我々は、足手纏いだと言われております」


「はは。そうか」


 そしてクキが言う。


「我々も武器の携帯をします。それでいいですね?」


「かまわんよ」


「ではそのように」


 そして俺とタケルは目配せをした。ボディーガードが言う。


「バイクは用意してある。好きに使ってくれ」


「ああ」

「ありがてえ」


 そしてアビゲイルが俺に言う。


「ミスターヒカル。準備はしておきます。後は新型の遺伝子が手に入ればなおありがたい」


「まかせろ」


 俺とタケルは、用意されたリュックを背負い、その部屋を抜け出ていく。外に出れば、バイクが二台用意されており、俺達はかけてあるヘルメットをかぶる。


「CBRー1000RRだぜ!」


「いいな」


「自分の国のバイクが一番だよ」


 俺達は、早速バイクにまたがりエンジンをかける。

 

 ブォン! ブォン!


「いい音だ」


「ヒカル! スピード違反は気にするな! 捕まらなきゃ大丈夫だ! かっ飛ばそうぜ!」


「わかった! なら思考加速を使え!」


「おっけ」


 俺達は秘密のアジトを飛び出し、喧騒のロサンゼルスの中、爆音を轟かせ疾走し始めた。


 思考加速により意識が極限まで研ぎ澄まされ、周囲の全てが止まる。歩行者は絵のようになり、車も微動だにせず、交差点の信号も変わらない。空気中に舞う埃の一粒一粒までも止まっているようだ。


 そのおかげで、回避ルートが瞬時に見つけられ、最も安全なラインが分かる。 


「よし! フルスロットルだヒカル!」


「わかった!」


 俺達はアクセルをさらに開け、バイクは異次元の速度に加速した。景色は残像となって、俺達はバイクと一体化する。最高速で駆け抜ける俺達は、風となり地獄と化したラスベガスへと走るのだった。

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