第538話 カジノで大勝した結果
夜になると、町はがらりとその姿を変えた。色とりどりの灯りが町中を埋め尽くし、ドバイの夜にも似た雰囲気となる。シャーリーンがホテルに言い、女達のドレスや男連中のスーツを用意した。そして俺にも新しいル〇ヴィ〇ンが支給され、少しキラキラする生地のスーツを着ている。
窓から街を眺めるマナが言う。
「うわあ。素敵だわ」
女達が興奮している。
「でしょ。やっぱりラスベガスは夜よね」
「宝石箱みたいね! 早く行こうよ」
「そうだよ。行こ! ヒカル!」
ドレスアップした女達が、ホテルのエントランスに降りると客の目を引く。それだけ、皆が綺麗に見えているのだろう。
街に出てみると、昼よりも賑やかで人々が楽しそうにしている。
「まず。行きたい所があるの!」
ミオが皆を連れて来た場所は、キラキラの路地。
「どう? ヒカル」
「綺麗だな」
その通路は天井に映像が映し出され、人が天井を見上げている
タケルが楽しそうに言う。
「なんだ! 天井一面がスクリーンになってるのか!」
「素敵でしょ!」
俺達はしばらくそこで、天井を見上げ楽しんだ。
「面白いな」
「このあたりはカジノだらけなのよ。まあ、私は行った事無いんだけど」
「そうか。行きたいんだな?」
するとタケルが大きな声で言う。
「行きてえ! 早く行こうぜ!」
そして早速カジノへと向かった。そこでシャーリーンが説明を始める。
「まずは用意した身分証明書を提示して入ります。とりあえず、遊ぶだけの現金を持って入り、遊びたいゲームがあったらディーラーに現金を渡してチップにします」
注意事項を聞いた俺達は、カジノへと入る。タケルとオオモリがつるみ、ルーレットとやらに座った。クロサキとアビゲイルとシャーリーンが一緒になり、ポーカーの台に付いて、クキとエイブラハムがスロットとやらの前に座って遊び始めた。
「皆もやったらどうだ?」
ミオ、ツバサ、ミナミ、マナは何故か緊張しており、ツバサが俺に言う。
「何をしたらいいのか分からない」
「適当にやってるのを、見てみればいいんじゃないか?」
「そうしよ!」
俺達は、まずタケル達が遊び始めたルーレットの後ろに立ってみる。
なるほど、グルグル回る玉が数字に落ちるから、そのまえに数字や色に賭けるらしい。
「よっしゃ。ぜってー当てる!」
「僕もやりますよ!」
そしてルーレットが回り、玉がクルクルとその周りを回り始めた。
タケルが叫んでいる。
「黒の二十八! 来い! 来い!」
「黒の六か赤の九! たのむ!」
二人は食い入るように見ている。
カラン。
黒の十五。
ザッと、プラスチックのチップが取り去られた。
「ちっくしょう! かすりもしねえ!」
「おかしいな、当たると思ったんだけどな!」
そして今度はタケルが黒の二十八にもう一度掛けた。大森は変えて、黒の二十と赤の二十一に跨って掛ける。賭けるのにも性格が出るようだ。
そして俺達は次に、クロサキ達が座っているゲームの所に行く。
テーブルには五人が座っていて、各自が二枚ずつのカードを持っている。前には四枚のカードが並んでおり、ディーラーが何かを聞くと、知らない二人がフォールドと言ってカードを戻した。
クロサキとシャーリーンとアビゲイルが、にらめっこをしながら言う。
「ベッド」
「コール」
それを聞いてアビゲイルが自信なさそうに言う。
「えっとどうしよう。ダメかな、どうかな」
「アビゲイルさん。自信がないなら降りたらどうです?」
「そうですね。この場合わたしとシャーリーンさんの勝負になるんじゃないですか?」
「い、いや。いきます! コール」
そうしてディーラーが五枚のカードを並べた。
「ベッド」
「え、えっと。コールで」
「じゃあ……コール」
これで賭けは終わったようだ。最初にシャーリーンが指をさされる。
「フフ」
シャーリーンが一枚一枚カードをめくるとディーラーが言う。
「ストレート!」
それで、その台を見ていた観客がざわつき始めた。シャーリーンがどや顔で、クロサキとアビゲイルを見ている。だがクロサキが落ち着き払って、カードをめくった。するとディーラーが言う。
「フラッシュ!」
「「「「おお!」」」」
テーブルがドヤつく。
「えっと、なに? 負け? なに?」
そう言ってアビゲイルがカードをめくる。
「フォーカード。ウイン!」
するとテーブルに出ていたチップが、全部アビゲイルのところに移る。
「嘘でしょ!」
「やられた!」
「ふふ」
どうやら、アビゲイルが一枚上手のようだ。そうしてまた次のカードが配られていた。
「なるほどな」
「あっちもみてみよ!」
そうして俺達は、クキとエイブラハムの所に行く。
それは金を入れてグルグルと回る機械だった。
「どうだ、クキ?」
「ぼちぼちだ」
「エイブラハムは?」
「遊び程度じゃな」
「それは良かった。
そしてそれから、俺と女達は違うゲームを覗きに行く。あちこち見ているだけで楽しく、俺達は時間が過ぎるのも忘れていた。するとそこにタケルとオオモリが来る。
ミオが聞く。
「どうだった?」
「負けたぁぁぁぁ!」
「すっからかんですぅぅ!」
「そう、うまくはいかないか」
「ちくしょう」
「儲かると思ったんですけどねえ」
なんて話していると、そこにクロサキとシャーリーンとアビゲイルも戻ってきた。
「お、来たか。アビゲイルは勝っていたようだが」
するとフルフルと首を振って言う。
「結局、他のお客さんやディーラーに負けて、三人ともほとんど無くなっちゃいました」
「なるほど」
そんな事を話していると、クキとエイブラハムがやってきた。
「まあ、儲かるようには出来ていないようだ。だけどドクターは」
「ぼちぼち増えたくらいじゃ。まあ辞め時が肝心じゃな」
「そうか」
「ヒカルたちはやらないのか?」
するとミオが答える。
「みんなが遊んでいるのを見ただけで、面白かったし」
「やってないのか?」
俺達は首を振る。するとタケルが言った。
「いや。皆やってみろって、せっかく来たんだしよ」
「そうですよ。何事も経験です」
すると女達は顔を合わせて頷いた。
「んじゃ、やってみようかしらね」
「そうね」
「経験よね」
「じゃ、やってみる」
そうして四人が座ったのは、ブラックジャックというゲームだった。なんでも、手札が配られて最後に二十一になると一番強いらしい。
それから女達は、勝ったり負けたりしながら手持ちの金を減らしていく。
「たまに勝っても、負けの方が多くて減っちゃう」
「むずかしいわ」
俺は全ての賭けを見て思った。皆はどこか負けるかもしれないと思ってやっている。
「それでは勝てん」
そう言うと仲間達の視線が俺に向かう。
「ヒカルは勝てるの?」
「勝てる」
皆がどよめく。
「やってみる?」
「じゃあ、あれが良い」
そう言って俺達はまた席を移した。
「バカラか」
「これのルールは、九になれば一番強い。勝てば倍、負ければ取られる。そしてバンカーとプレーヤーのどっちが勝つかに賭ければいい」
「すげえな。ヒカルルールも把握してるのか」
「グルグルずっと見てたからな」
「じゃあやって見たら?」
そして俺が一人、他の人間が座っているところへ座る。
カードを振り分けられ、ディーラーから聞かれる。
「プレイヤーオアバンカー?」
簡単な事だった。皆がバンカーに賭ける中で俺が言う。
「プレイヤー」
カードをめくられる。
「プレイヤーウィン」
「おお! すげえな! ヒカル!」
「こっちが勝つと分っていた」
すると次のゲームが始まった。そしてまたディーラーに聞かれる。
「プレイヤーオアバンカー?」
「プレイヤー」
カードがめくられてディーラーが言う。
「プレイヤーウィン」
「「「「「「おお!」」」」」」
仲間達が盛り上がり始める。そして次のゲームが始まった。
カードが配られ、俺は手持ちのチップの全部賭ける。
「プレイヤー」
「プレイヤーウィン!」
すると仲間達だけじゃなく、観客も盛り上がり始めた。
そして次のゲームが始まる。
タケルが言った。
「そろそろ。バンカーが来そうだけどな?」
「ですよね!」
そして次のカードが配られて俺が言う。
「プレイヤー」
皆があっけに取られている。
「おまえ、バンカーにも賭けて良いんだぞ」
「プレイヤーだ」
そしてカードがめくられた。
「プレイヤーウィン!」
観客が集まり始めた。仲間達がワーワーと騒いだせいで、俺のテーブルが盛り上がってしまっている。
「四連続かよ!」
そして次のカードが配られる。
皆が固唾を飲んでみているが、俺は普通に勝つ方が分かった。
「プレイヤー」
「おいおい、いくらなんでも」
そしてディーラーが言う。
「プレイヤーウィン!」
流石に、周りがざわつき始めた。毎回全額かけていたため、かなりのチップになってしまった。それを見てオオモリが言う。
「もう。十万ドルですよ」
「ん、いくらだ?」
するとクキが言う。
「千四百万円くらいだな」
そこで俺が言う。
「皆の手持ちの金を全部、俺に貸してくれ」
そう言うと皆が手持ちのチップを俺によこした。そしてディーラーに言う。
「これを賭けてもいいか?」
「イエス」
俺はそれをテーブルに置いた。そしてまたカードが配られゲームが始まる。
「プレイヤーオアバンカー」
「プレイヤー」
俺がそう言っただけで、大きくざわつく。
「どうなってんだ……?」
すると隣に座ってる、老人が言った。
「わしもプレイヤーじゃ!」
すると他の奴らもプレイヤーに賭けた。
カードがめくられる。
「プレイヤーウィン!」
「「「「「「「ワアアアアアア!」」」」」」」
それを見てクキが言う。
「ひりつくぜ」
「全くだよ九鬼さん」
「鳥肌が立ちます……」
そこでミオが俺に言う。
「も、もういいんじゃない?」
だが俺は首を振る。
「いや。まだだ」
そうして俺は次のゲームも次のゲームも、その次のゲームも買った。
すると今度はクキが言う。
「ヒカル。もう日本円で二億四千万だ。もう十分だ」
だがタケルがそれを制した。
「いや! ヒカル! イケイケ!!」
「じゃあ、次で終わる」
そう言うと、その場にいた奴らが一斉に沸いた。
「いいぞあんちゃん!」
「俺も乗るぜ!」
「わしもじゃ」
そしてカードが配られ、ディーラーが顔色変えずに聞いて来る。
「プレイヤーオアバンカー?」
「プレイヤーだ」
「「「「「「「おおおおおお!」」」」」」」
「わしも!」
「おれも!」
「俺もだ!」
そしてそのゲームが終わりを告げる。
「プレイヤーウィン!」
物凄い人だかりができており、そして俺はディーラーに言う。
「やめる」
「オーケー」
そして俺はディーラーに一万ドルのチップを渡して言う。
「プレゼントだ」
「サンキュー」
チップを抱えテーブルを離れると、隣りに座っていた老人が握手を求めてきた。
「あんちゃんのおかげで大勝ちだ! 礼を言う」
「たまたま運が良かっただけだ」
「いや。強運過ぎるね!」
「今日だけだよ」
すると老人が言う。
「どうじゃろ! 今日は大勝ちした事だし、仲間達にも食事をおごりたい! 一緒にどうかね?」
するとクキが頷いた。
「いいんじゃないか?」
「なら、美味いものが食いたい」
「いいねえ。ラッキーな男と飯が食いたかったんじゃ!」
俺達は、そう言う老人について行く事にしたのだった。




