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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
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第534話 麻薬組織の陰

 クロサキにも、俺の影響が色濃く出始めているようだ。飲み屋などで、試験体の因子を含んだ人肉についての聞き込みをしているのだが、相手がなんの疑いもなく洗いざらい話を始めるのである。


 クロサキの話方や身振り手振りだけではない、新たなスキルが発現しているように見える。そしてそれには、本人が一番よく驚いていた。


「こんなに、すらすらと情報が引き出せるようになっているなんて……」


「前世に存在したスキルで、沈黙を破る声を操る者がいた。それに似ている」


「そんな人がいたのですか?」


「そう言う能力者の多くは、王家に使える事が多かった」


「王家……」


「王族を、たぶらかす者がいるからな。それらを制するのにつかわれた力だ」


「それが私にですか?」


「クロサキの元々の力が引き出されたのだろう」


「私にそんな力が……」


 恐らく間違いない。それでなければ、バーのゴロツキがあれほど素直に話をするわけがない。


 俺達がロズウェルの裏通りを歩いていると、タケルからスマートフォンに連絡が来た。クロサキが電話を取り、話を始める。


「はい、はい。えっ? わかりました」


 そして電話を切る。


「何かを見つけたようだな?」


「麻薬の売人が、おかしなものを売っていたそうです。ヒカルさんに見てもらいたいそうです」


「わかった」


 それから、俺とクロサキはタケル達に言われた場所に行く。治安の悪そうな場所で、タケルとミナミが俺達を待っていた。


「おー、来たか!」


 俺は、すぐに違和感に気が付いている。


「試験体のゾンビ因子を持ってるのか?」


 すると、タケルとミナミが顔を合わせて頷いた。


「やっぱりか」


「それはなんだ?」


「なんか、ラリってスーパーマンになれる薬が出回ってるんだそうだ。それがこれ」


「なるほどな」


 袋に入った粉を俺に見せた。そこには、試験体のゾンビ因子が確かに存在している。


 それを見てクロサキが言う。


「まさか、人肉が違法薬物になった訳ですか……」


「細胞を壊して人を作り変えるものだからね。覚醒剤より酷いヤツだ」


「こんな物が出回ってしまえば、アメリカはおろか世界が終わる」


 そしてタケルが、俺達に聞いて来る。


「そっちはどうだい?」


「こちらも似たようなものです。麻薬カルテルに流れ込んでいるらしいとの情報は掴んでいます」


「うわあ。またおっきな組織が出てきそうだな」


 ミナミが腕をくみ、複雑な顔をして言った。


「流石に大森君だけじゃ、情報はつかめないか?」


 そう言うと、タケルが背伸びをしながら言う。


「んじゃ、まずは売人から潰していくかあ」


「まずは皆に言わなきゃね」


 するとクロサキが言う。


「ただし、麻薬カルテルは奥が深いです。かなり危険だと言わざるをえません」


「そっか」


「まとまって動くのは危険かもしれません。軍隊とやるのとはまた違います」


 それを聞いてタケルが答える。


「プロの黒崎さんがいうんだ。そりゃ間違ってねえだろうな」


「ええ。まあファーマー社同様に手段を選びませんからね」


 俺が三人に言った。


「そのようだ……既に見張られている」


 路地裏で立ち話をしていた俺達を、誰かが見ているようだった。車に乗った連中で、遠くから俺達の事を監視している。


「撒くか?」


「いや。挨拶に行こう」


 ミナミがにやりと笑う。


「賛成ね。私もシャーリーンからもらった日本刀を試してみたいわ」


「あー、五本も貰えたよな」


「GHQが戦争の時に、日本から取り上げた物なんだって。名刀も含まれていたらしいの」


「使いたいのか」


「まあ……ね」


 だが、それを聞いていたクロサキが俺達を制する。


「ここで接触しても、大きな成果は得られないかと思います」


「どうしたらいいだろうか?」


「まずは歩きましょう。とどまっていれば、他の町の人達からも怪しまれます」


「おう」

「そうね」


 俺達四人は、周囲を気にしながら街を歩く事にした。すると案の定、俺達について来る車がある。


「売人探すのに派手に歩いたからなあ」


「それを言うならば、こちらも派手に聞き込みました」


 思わず俺は笑ってしまう。


「ふふ」


 三人が俺を見る。クロサキが笑って答えた。


「もしかして、ヒカルさんは、こうなればいいと思ってたんですね?」


「まあな」


「釣るためですか」


「そう言う事だ。まさかここまで簡単だとは思わなかったがな」


「なるほどです。では、私の推測ですが、恐らく麻薬組織は私達が、FBIか違う組織どうかを疑っている状況だと思います」


「なぜだ?」


「このあたりのゴロツキなら、警察の顔を知っているでしょう。ですが、四人とも知らない顔というのはあり得ません。となると、FBIか、もしくは麻薬捜査官DEAと言う事もあります。恐らく見張っているギャングらは、それを突き止めようと思っていますね。そしてFBIが動いてるとなれば、ここで売るのをしばらく止めます」


「捕まえて、始末すればどうなる?」


「蜥蜴の尻尾きりで、大元は手を引くでしょう」


「分からなくなるという事か?」 


「そうなります」


 捜査という者の難しさを知る。大元を押さえなければ、試験体のゾンビ因子が他の地域に流れてしまうという訳だ。


 そしてクロサキが、スマートフォンでメッセージを打ち込んだ。待っている仲間達に、どうするかを伝えているのだ。それが全て終わった時、クロサキが俺達に言う。


「ならば、それっぽい動きをしましょう」


「どうするの?」


「シャーリーンさんにお願いしてあるので、そこに」


 そして俺達は、追跡者が見失わないように通りを歩いて行く。するとある場所に、車が一台置いてあった。


「乗りましょう」


 俺達がその車に乗り込むと、クロサキが運転席に座り鍵をソファーの下から拾った。そしてエンジンをかけ、俺達の車は、するするとその場を走り出し、クロサキは注意深くバックミラーを見た。


「ついて来てます」


「どうするんだ?」


「ダッシュボードを開いてください」


 それを聞いてタケルがダッシュボートを開く。


「なんかある」


「発信機と偽の身分証明です」


「なるほど。これを相手につける訳か」


「分らないようにつけてくださいね。行きますよ」


 ギャギャギャ! と車を横に向けて、後ろからついて来る車を停めた。すると後ろの車も急ブレーキで止まる。クロサキとタケルが車を降りて、身分証明を開きながらダッと走り後の車に辿り着く。だがそれを振り切って、バックして車はさっさと逃げて行ってしまった。


 車に戻ってきたクロサキがタケルに聞く。


「どうなりました?」


「車の下に付けれた」


「じゃあアプリを見てみましょう」


 スマートフォンに地図が映り込み、そこには光の点が進むのが見えた。


「大森さんが作ったアプリです」


「なるほどね」


「これで、我々が捜査官だと勘違いしたでしょう。必ず動くはずです」


「さっすがプロだね」


 そして俺達はその地図を見ながら、ギャングの行先を確認するのだった。

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