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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
531/615

第531話 SWATと共闘

 ファーマー社の警備の奴らは、何が起きたのか分かっていないようで慌てふためいている。治験者に逃げられ、荒野では私兵が全滅し、その上に次々に警察車両がやってきて包囲されたからである。


 集まった警察らは、ファーマー社の研究施設を包囲しているという意味合いよりも、俺達二人を包囲しているという意味合いが強い。まあ警察もまだ、そこまで正確な情報を握ってはいないだろう。


 そして俺がタケルに言う。


「とりあえず撮り続けろ。こんなに反響があるなら、またどこかで動画を流せばいい」


「りょーかい。つうか、多分俺達の力もバレちまうな」


「かまうものか。オオモリが何とかしてくれる」


「だな。てか、ファーマー社の警備がまた来たぜ」


「よし」


 縮地で警備隊の真っ只中に出現し、私兵を警察に向けて投げ続けた。壁の上から降って来る人間に慌てふためきながらも、警察はどこかに無線を繋げているようだ。


「抵抗をやめろ!」

「既に包囲されている!」

「逃げられんぞ!」


 そしてタケルがスマホのカメラを、自分に向けて話す。


「やっば。警察がいっぱい来ちゃった! 逮捕されそう」


 その次に俺にカメラを向けた。


「俺達を、つかまえたら大したもんだ」


「だな」


「またなんか来たぞ」


 タケルがそっちにカメラを向けて、大声で聞かせるように言う。


「おー。あれはスワットじゃねえかな」


「なんだスワットとは」


「警察の特殊部隊だ」


「ほう。少しは骨のある奴らが来たか。相手してやろう」


 すると黒塗りの大型のバスのような車両が次々来て、ぞろぞろと黒い装甲を付けた奴らが下りて来る。空にも数基のヘリコプターが飛んでおり、グルグルと旋回していた。


「ヘリコプターまで来ております! さあて、俺達の運命はどうなるんでしょーか!」


「腕が鳴る」


 すると、装甲を付けた奴らが、機敏な動きで研究所の外壁にとりついた。


「ちっとやべえ。隠れるとするかあ!」


「そうしよう」


 そして俺達は、ファーマー社の奴らを蹴散らしながら、壊れた研究所の壁のところに向かった。すると門の方から、ぞろぞろとスワットが入って来る。


 タケルがそれを見て言った。


「暗視ゴーグルつけてるから、俺達の事はきちんと見えてるだろうな」


「伏せていろ」


 ギィン! 俺が手をかざして銃弾を取る。手のひらに残った弾丸をポロリと下ろした。


「狙撃だな」


 そう言ってヘリコプターを見ると、こちらに向かって構えている奴がいた。


「暗闇でも、狙撃出来るんだな」


「まあ、特殊部隊だからな」


 そしてタケルがピッとスマホをきる。


「つうか、どうやってスワットを安全に中に入れてやるか。ゾンビ化兵にあったら、スワット達ではひとたまりもねえぜ」


「簡単だ。スワットがやったようにみせかけて、俺達が始末すればいい」


「そっか。そうだな」


 とりあえず、落ちている死体を拾い上げて立たせると、正確にそいつの頭を狙撃して来た。


「優秀だ」


「えらいえらい」


 しばらく待っていると、スワットの隊員たちがやって来たので、俺達は派手に話し声をたてながら建物の中に入って行った。しばらくすると入り口から、手榴弾が投げ込まれてくる。


 ズドン!


「派手にやってくれるねえ」


「今の音で、じきにゾンビ化兵もあがって来るだろう」


「隠れようぜ」


 そして俺達が隠れていると、案の定、階層下からゾンビ化兵達が上がって来た。そいつらは銃を持っており、スワット達と対峙して銃を撃ち始める。それによってスワットが足止めをくらい、睨みあいになってしまう。


「邪魔をするか」


「そうしよう」


 俺はすぐに剣技を繰り出す。


「屍人斬。刺突閃五連」


 ドサドサとゾンビ化兵が倒れたので、そいつらを持ち上げてスワット達の方に投げてやる。


 ズササササ!


「な、なんだ!」

「また、人が飛んできた」

「警戒せよ!」


 しばらく沈黙していると、またスワット達がこちらへと進んで来たのだった。


「来た来た」


「引っ張るぞ」


「おう。カメラ回すぜ」


「それが良い」


 そしてカメラを回しながら、タケルがはしゃぐように言った。


「今! スワットに追われて、ゾンビ製造工場の中に入って来ました! ゾンビも怖いし、スワットも怖い。俺達はきっと殺されるかもしれねえ。でも見てる人は、最後まで見てくれよな!」


 またゾンビ化兵がぞろぞろやってきて、隠れた俺達の前を通りすぎる。それを撮影しつつも、小さな声でタケルが言った。


「スワットに、果敢に挑む兵士達です」


「ここ研究所なのにな」


「そうだなあ。研究所になんで兵隊がいるんだろうなあ」


「俺がゾンビ化兵を投げるところを、カメラに収めてくれ」


「りょうかい」


 そしてすぐにゾンビ化兵を剣技で殺し、掴んでスワットの方に投げた。するとスワットが慌てて、飛んできた人間に銃撃を喰らわせている。


「よし」


 俺達は派手に騒ぎながらも、奥へ奥へとスワット達を引っ張った。そして地下階層に下りた時、真っすぐに人体実験室へと向かう。邪魔なゾンビ化兵は適当に殺して、スワットが進みやすいように誘導した。


 通路を抜けて待っていると、スワットがその通路に入って来る。


「きたきた」


 だがその時だった。ウィーンと音を立てて鉄の扉が下り、スワットの退路が塞がれてしまう。


「しまった! 罠だ!」


 スワットが慌てている所に、シュシュシュ! と可燃性の油がまかれた。


「油だ!」

「退避!」

「退路が塞がれてます!」


 俺が慌てて出る。


 すぐに発火装置ごと、天井から鉄の扉まで一刀両断した。それで火が出る事も無く、退路も確保出来た。直ぐに身を隠して、スワット達が進みやすいようにする。


「な、なんだ! いま人が現れなかったか!」


「どういうことだ?」


 スワット達が騒いでいる。だが縮地で身を隠したので、既に俺の姿はそこには無い。


「ファーマー社も容赦ねえな」


「侵入者はどんな奴でも排除するつもりだろう」


 するとスワットが、ようやく周りの異様さに気付き始めたようだ。


「何だ……ここは」

「人間のホルマリン漬け?」

「研究施設とは聞いていたが、何をやってるんだ」

「人体実験じゃないのか?」


 ざわついている。そしてすぐに無線を取り出して、後方に指示を扇ぎ始めた。


「こちらニコル。人体実験のような施設を発見した」


 ガガッ!


「どういう事だ?」


「わからん。これから部屋に潜入する」


「気を付けろ」


「ラジャー」


 そして注意深くスワット達が人体実験の部屋に入っていくが、中の酷いありさまを見て動きを止めた。


 そこで俺の気配感知に、試験体の気配が伝わってきた。


「マズいな。試験体の気配がする」


「やべえじゃん」


「まもなく姿を現すが……通路じゃない」


 そう思った瞬間。スワット達が入っている部屋の奥の壁が崩されて、ゴリラの頭に人間の顔が付いたのが三匹も入って来た。


「化物だ!」

「う、撃て!」


 ガガガガガガガガ!


 スワットが一斉に銃を撃ち始めるが、ゴリラの試験体は怯む事無く突進してくる。


「始末する」


 俺はすぐにその部屋に飛び込んだ。


「屍人、真空裂斬!」


 パン!と爆発したように、試験体の一体が飛び散る。だがもう一体が、スワットの一人を殴り飛ばしてしまった。


 縮地!


 俺はそいつが壁に激突する前に受け止めた。そこに試験体が突進して来たので、剣技を繰り出す。


「屍人、真空裂斬!」


 パン! それも弾けるように消える。俺が振り向けば、タケルが試験体を潰していたところだった。

だがゾンビ因子を破壊する事が出来ずに、ずるずるとその試験体が姿を変え始める。


「屍人! 真空裂斬!」


 最後の一体は消え去った。スワット達が呆然と俺達をみている。


「そいつ大丈夫か!」


「危険だ」


 そして俺はすぐに走り、殴り飛ばされたスワットに回復魔法をかけた。シュウシュウと湯気を立てて、スワット隊員が目を覚まして、ぼーっと俺を見ている。


「大丈夫か?」


「あ、あ……おれは……いったい。あんたは?」


 だがそこに、ゾンビ化兵が現れた。俺が大きい声で叫ぶ。


「全員! 伏せろ!」


 ズドドドドドドドド! とゾンビ化兵が、この部屋に向けて銃を乱射し、スワット達はデスクの陰などに隠れて釘付けになった。


「応戦しろ!」


 隊長らしき掛け声に、皆がマシンガンを撃ち返すがゾンビ化兵には効かない。俺は金剛と結界をかけ、直ぐにスワット達の前に飛び出る。


「屍人、冥王斬!」


 ズン! 壁の外にいるゾンビ化兵を、壁ごと切り裂いた。ドサドサと崩れ落ちて、敵の銃撃が止まる。


 スワットの一人が、俺に聞いて来る。


「な、なんだお前達は」


 するとタケルが、間髪を入れずに言った。


「ゾンビ暴露系インフルエンサーだよ」


「ゾンビ暴露系……」


「ここはゾンビの研究をしている施設だ。さっきみたいな化物がうよいよいる」


「なんだと……」


「俺達は、ここに捉われている一般市民を救いたいんだ。スワットの力で何とかならねえか?」


「しかし……あのような化物が出れば」


「治験者たちを誘導してくれればいい。バケモノ退治は俺達がやる」


「本当にただの、インフルエンサーなのか?」


「そうだ。ゾンビ暴露系インフルエンサーのユウとレイだよ」


「ユウとレイ……」


 そこで俺がタケルに言った。


「敵が来る。一度そいつらを蹴散らす!」


 だが、その隙にスワットが慌てて聞いて来た。


「ま、まて。なんでアイツらは銃を受けても平気なんだ?」


 タケルが呆れて言う。


「だから! ゾンビなんだよ! 意思のあるゾンビ! あんたらモタモタしてっと殺されっぞ! 銃弾はいざという時の為に取っといてくれ」


「わ、わかった」


 またゾンビ化兵が来たので、俺が直ぐに蹴散らして言う。


「他の隊は?」


「他に回ってるかもしれん」


「危険だ……。こちらから接触しろ」


「わ、わかった」


 どうやら、俺達があのバケモノを蹴散らしたことで、実力は分かってもらえたらしかった。自分達の銃弾が効かないと分れば、打つ手がない事くらいは分かったのだろう。俺達はすぐに増援隊と接触した。


「ニコル! どうなった?」


「下に化物がうようよいる。この人らが対処する方法を知っている」


「あんたらは?」


「ゾンビ暴露系インフルエンサーのユウとレイだ」


「ユウとレイ……」


「ここはめちゃくちゃ危険だ。いったん停戦といかねえか? ここにいる一般人を救いたいんだ」


「一般人? あれは本当の事だったのか?」


 そこでタケルが言う。


「俺達は保護団体でもあるんだよ。これから、人体実験の為に捕らえられている人を助ける」


 するとニコルが答えた。


「実は我々にも情報が入っている。一部の治験者を救出しのたが、事の信ぴょう性が低くかったんだよ。だがここに来て、それが本当だと分った。協力させてもらおう」


 そしてスワットの隊長らしき男が、無線を通じて状況を伝えている。何故か俺とタケルは、スワットを率いて別の階層へと潜る事になったのだった。

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― 新着の感想 ―
(^^) 自衛隊につづき、ようやく「公」にも協力者たちが!? 今作中の地球は悲劇的状況なので不謹慎ではありますが 楽しい展開がひろがってまいりました!
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