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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
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第530話 ゾンビ暴露チャンネル

 街でバイクを盗んだ俺とタケルは、早速ファーマー社の研究所に後戻りした。研究所を遠くから見ているが、静まり返っているように見える。しかし、まだ建物の方からは人間の気配がしていた。


「どういう連中だ?」


「恐らくはファーマー社だろう」


「後処理かね?」


「かもしれない。まだ、治験者が生きていればいいが……」


 俺達はバイクを隠し、一気にファーマー社の研究所に乗り込む。見張りが居たが、ぐるりと施設を周って反対側から入り込んだ。ここはスマートフォンの電波が届かないため、施設にあるネットワークを乗っ取るためのものを、機器に流し込むようにオオモリから言われていた。


「行くぞ」


「オッケ」


 目だし帽子をかぶり、研究所に侵入していくと一部は復旧しているようだった。気配感知をしながら、誰にも見つからないように深部に入り込み、生きているパソコンを見つける。


 タケルが周りを見て言う。


「死体は、まだそのままみてえだな」


「そのようだな」


 始末したファーマー社研究員の死体がまだ転がったままで、そこまで手が回っていないのだろう。もしくは、これごと一気に消去するつもりなのかもしれない。


「まだ処理が追い付いてねえんだ」


 パソコンにオオモリからもらったUSBを差し込んで、電源のスイッチを入れる。


 タケルが言った。


「やっぱ、アイツすげえよ。これだけで、パスワードをクリアした」


「そして、どうする?」


「あー、スマホのカメラを立ち上げて、パソコンに繋ぐんだと。すると研究所の回線から、世界に通信する事が出来るって言ってた」


「勝手にか?」


「らしいぜ」


「やってみよう」


 するとスマートフォンを繋ぐと、今度は勝手にパソコンが動き始めた。ぱちぱちと変わっていく画面に、俺達はじっと待ち続ける。


「本当に何もしなくていいのかね?」


「さあな」

 

 するとパソコンの画面に、俺達が映し出された。もちろん目だし帽を被っているので誰か分からないが、しっかりと二人が映し出されている。


「映ったみたいだぞ」


「これで流れてんのかな? 名前は言うなよ」


「分かってる」


「あー、見えますか?」


 タケルが画面に手を振るので、俺も同じようにカメラに向かって手を振る。


「本当にネットに出てんのかな?」


「どうだろうか?」


 そしてタケルが画面に向かって言う。


「あー、んじゃ。どーもー! ゾンビ暴露チャンネルのライブ生配信はじまったよ!」


「どうも」


「えーと、俺達はいま、ゾンビを作ってると噂になってる、ある研究所に侵入していまーす」


「ここがそうだ」


「あー、まず。これを見てくれ」


 そうして、タケルは床に倒れている研究員の死体を抱き起す。


「こいつが、ゾンビを作っている奴らの一員でーす」


 カクカクする首を支えつつ、タケルが研究員の死体を見せた。


「じゃあ、君はちょっと眠っててね」


 ドサっ!


「それじゃあ、これから、ゾンビ研究所ツアーに行ってきまーす」


「いってくる」


「一旦、通信切れまーす」


 そう言って、タケルはスマートフォンとUSBをパソコンから外す。


「ど、どうだろう? 本当に流れたんかな?」


「間違いないだろう。オオモリのシステムは凄いからな」


 そして俺達はその部屋を出る。一応スマートフォンのカメラで撮影はしつつ、研究所の深部まで潜って行く。時おりゾンビ化兵が居たが、そいつらには見つからないようにした。


「この研究所でやってる事を隠蔽しようとしてるんだろうな。いろいろと運び出してるけどよ」


「そうかもしれん。データや必要な物を運んでいるようだ」


「ここは特別なのかもしれねえ。だけど早くしねえと、他の生存者もヤベエよな」


「まだ生きていればいいが」


「どうかねえ……警察が動くかどうか」


「いまごろ、オオモリがなりすまして、侵入者がいると警察に通報が行ってる頃だ」


「だな」


 そして、俺達はゾンビ化人間の研究室へと入る。そこには、人体実験の跡がまざまざと残っており、まだ消去されていないようだった。恐らくはまとめて爆破するのだろうが、他の研究所と違って直ぐに手を下さないのには、何かわけがあるのかもしれない。


「パソコンがあった」


「繋げよう」


 そしてパソコンを同じ様にUSBで立ち上げ、スマートフォンを取り付けて動画を撮る。


「どうも! 深部に入って来たよ」


「どうも」


「いやあ……見てくれよ。本当に人体実験してるところがあったぞ!」


「ほんとうだ!」


「ゾンビの研究なんて本当にしてたんだなあ」


「してたんだな」


 二人で培養槽を壊し、バラバラの人間が変わりかけた奴を引っ張り出して見せる。


「ほら。これ、作りもんじゃないぜ」


「ほんものだ!」


「酷いよなあ。こんな、アメリカのロズウェルの近くでこんなことが行われてるなんて」


「嘘みたいだが、本当の話だ」


 タケルが上手く話してくれている。すると唐突に、研究所のサイレンが鳴り響き始めた。


「おっ。バレたな」


「そのようだ」


「なので、適当に金目のものと、ここにある薬品を盗もうと思いまーす」


「盗みます」


 そう言って適当に、その辺りにあるビンや薬をポケットに入れる。そして画面の前に持って来て、二人の手にいっぱい乗った瓶や研究員の社員証などをカメラに見せる。


「というわけで、ゾンビを作ってる奴らを脅して、金を巻き上げようと思いまーす」


「金を用意しておけよ」


「とにかく、捕まりそうなのでここで配信を終わりまーす」


「終わります」


「チャンネル登録よろしく!」

「チャンネル登録よろしく」


 そう言ってUSBとスマートフォンを外した。


「一応、大森の台本通りやったぜ」


「充分じゃないか?」


「だといいな」


 そして俺達はすぐにそこを出て、ゾンビ化兵から身を隠しながら上層階に戻る。そして建物を出ると、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。


「ポリ。きたぜ」


「警察か」


「どうかな? 警察入ってくるかな?」


「どうだろう。ファーマー社の兵隊がいるからな」


「んじゃ、俺達が暴れたら、警察も放っておけねえだろ」


「そうしよう」


 俺達が門の近くで身を潜めて待っていると、最初の警察がやってきて見張りに声をかけているのが見えた。しばらく話をしていたようだが、ファーマー社の人間に何かを言われて帰っていくところだった。


「おっと。帰られちゃまずい」


「騒ぐか」


 俺達は門の側まで踊り出る。そしてタケルが思いっきり門をひしゃげさせ、俺が推撃で吹き飛ばした。それが警察の車両に吹き飛んでいき、パトカーの一台を吹き飛ばした。


「おい! 警察! 俺達の邪魔をするんじゃねえ!」


「そうだ。邪魔をするな」


「捕まえられるもんなら捉まえてみろ。バーカ!」


 先にファーマー社の警備の奴らが反応し、俺達を捕まえようとした。俺はそれを掴んで警察車両の方に投げてやる。するとパトカーの上に落ち、ファーマー社の警備は動かなくなった。


 すると警察の方で、無線を使っているのが聞こえた。


「人が暴れています! とても凶暴です! 至急応援をお願いします!」


 それを俺の耳が捕らえ、タケルにそのまま伝える。


「警察が応援を呼んだ」


「いい感じじゃねえか。もっとぶん投げてやろうぜ!」


「いいね」


 俺とタケルは敷地にいる、ファーマー社の奴らを掴んでは、ぽんぽんと派手に外に放り出していくのだった。何十メートルも吹き飛んだ警備の奴らは転げ、それを見て警察官が車の陰に隠れ始めた。

 

 そしてタケルが叫び、俺が答える。


「ゾンビ暴露チャンネルの、ユウと!」


「レイだ!」


「捕まえられるもんなら捕まえてみろ!」


 警察が何発か銃を打ち込んで来たが、もちろん俺達はそれを避けて隠れ、警察の応援が来るのを待つことにするのだった。

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― 新着の感想 ―
\(^o^)/ ユウとレイ(笑)、最高! むちゃくちゃするなぁ!  ご連載開始当初からずっと読ませていただいています。 悲惨な世界でのお話しではありますが、だんだん いいぞもっとやれ!ってなってまい…
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