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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第一章 違う世界
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第52話 日本人達の能力

 街中をさまよって俺達がたどり着いたのは、鉄の壁に囲われた場所だった。あたりは薄暗くなってきており、視界が奪われてしまう前で良かったと胸をなでおろす。


 俺は隣に座るツバサに聞いた。


「ニホンとはあちこちに、こういう場所があるのか?」


「そうだね。私も良く知らないけど、ヒカルが見たのは解体屋だっけ?」


「そうだ」


「そこも、こういうところだったの?」


「いや、こっちの方が凄い」


「えーっと、建設会社のリサイクルプラントって書いてある」


「リサイクルプラントとは何だ?」


「リサイクルって、いらなくなったものを再利用するみたいな事よ。でもここが何のリサイクルしてるのかは知らない」


「だがこの場所はいい」


「そうね。でも、門が空いてるけど大丈夫かな?」


「内部にゾンビは確認していない」


 俺の言葉を聞いたユリナが、ワゴンをヤマザキのトラックの脇につける。


「ゾンビいないって!」


「よし! なら入ろう」


 トラックとワゴンが中に入り、皆が車を降りる。


「門を閉めるぞ」


「だな」


 ヤマザキとタケルが門の所に行き、取り付けてあった錠前で鍵を閉めた。閉めた後にタケルが言う。


「あれ? でも開ける時どうすんだ? 鍵無いぞ」


 それに俺が答えた。


「斬ればいい」


「なるほどね。じゃあそうするか」


 俺達がその敷地内に入って行くと、奥に砂利が積みあがっていた。


「ヤマザキ、あれはなんだ?」


「これはコンクリートの精製所だな。道路の堅い表面あるだろ? あとビルの壁とか、あれの原料はこういうところで作られてるんだよ」


「凄いものだな」


「コンクリの精製所もだいぶ無くなったけどな。昔は、凄く需要があったんだが今では限られた場所だけになった」


「そう言う時代があったって事か?」


 するとミナミが言った。


「そう言うのを、これからDVDでお勉強するのよ!」


「なるほど」


 そして俺達が中に入って行くと、建物が見えて来た。


「おっ! みなさん! あそこが今日のホテルです!」


 タケルがおどけて言うと皆が笑った。タケルは明るい性格をしていてレインを思い出す。レインは落ち込むような場面でも皆を勇気づけてくれた。


ヤマザキがタケルに答えた。


「日が暮れて来たし、丁度良かったよ」


「ここもアジトになりそうなものだが、使われなかったんだな」


「だけど他の地域では、こういうところに逃げ延びて生きている人もいるんだろうね」


「そうだな」


「あと正面の建屋に自動販売機がある。明日確認しよう」


 俺はこの建屋の正面に自動販売機を確認していた。夜に音を立てればゾンビが寄ってくる可能性もあるので、明日旅立つときに回収しようと思っていた。


 そしてヤマザキが言う。


「まずは飯だな」


 そしてユリナが答えた。


「そうだね。とにかく準備しよう」


 それを聞いてタケルが二人に言った。


「えーっと、俺は発電機の使い方をみてみるわ。ガソリンで動くようだったけど、幸いにも車はその辺にいっぱいあるしな」


 タケルの話を聞いて今度はツバサが聞いた。


「えっと、ガソリンを車からとるって事?」


「そうだけど?」


「そんな事出来るの?」


「問題ない。そこいらにホースがあるじゃねえか」


「えっ? ホースで取れるの?」


「取れる取れる」


 俺はタケルの事をまた見直した。皆が知らない事で、生きるすべを身に着けているようだ。


「タケルは凄いな」


「凄いっつーか、なんつうかね…」


 タケルが困った表情をしているとユミが言う。


「私と知り合う前に、いーっぱい悪ーい事してたんでしょ?」


「えっと、はて? どうだっけな?」


「やっぱり」


 ユミがあきれ顔だが、タケルは全く気にした素振りも無い。


「よし、ヒカル! 二人でガソリンとりに行こうぜ」


「ああ」


「今のとるは、盗むでしょ?」


「ちがうって」


 タケルは俺にバールを持つように言い、ホースとやらを切るように言って来た。


「こうか?」


 指示されたとおりに切断する。


「お、いい感じ! あとは、携行缶を二つ持ってこう」


「わかった」


 タケルに言われて俺は赤い鉄の入れ物を持った。そしてタケルがもう一つを持ち、俺達は門の所に行って外の様子を伺う。俺の気配感知にも特段おかしなものは感じない。


「鍵を壊せば夜に復旧できない。一緒に飛ぶぞ」


「へいへい」


 そして俺はタケルをガシっと掴み、高い塀を飛び越えて外にでる。


「リサイクルプラントの近くで音を出すのは得策じゃない」


「なら、少し離れた所に行こうぜ」


「ああ」


 俺達はリサイクルプラントから離れ、タケルがその辺りを物色しながら進む。


「おっ! あれが良い」


「なぜだ?」


「高級車はセキュリティーで音がしちゃうからな、ああいう古い車はそう言うのついてないの」


「流石だな。タケルはいろいろ知っているようだ」


「ま、なんつーか。ちょっとだけやんちゃだったから」


「やんちゃ?」


「なんていうか、バイクで走る仲間がいっぱいいてな、そのまあ…グループ長みたいなもんだな。なんつーか、いっぱいで走ったりしてよ」


「リーダーだったのか? どおりで勇気があるわけだ」


「まあ、俺にゃそれしか取り柄がねえからよ」


「お前は一番大切なものを持っている」


「そんなこたぁねえよ」


 そしてタケルは俺からバールを受け取り、それで車の一部を器用にこじ開けた。そしてそこに携行缶を置いて、ホースを車の穴に突っ込み口にくわえる。


「おっと」


 するとホースからガソリンが出て来て、携行缶に入って行くのだった。


「飲んじゃ体に悪いからよ」


「なら飲むな」


「わかってる」


 俺達は二つの携行缶にガソリンをつめて、再びリサイクルプラントまで戻る。俺が一缶とタケルが一缶もち、俺は片手でタケルを掴んで壁を飛び越えて中に入った。


「ヒカルもすげえよ。てか、すげえなんてもんじゃねえけどな」


「なら、俺がお前を鍛えてやる」


「ああ先生。よろしく頼むわ」


「一緒に皆を守ろう」


「わかった」


 俺達が建屋に入ると、ほんのりと食い物の匂いがしてきた。俺達が皆の所に行くと、皿の上に食べ物が並べられている。

 

 ユリナが俺達に言った。


「給湯室に皿が置いてあったのよ。だからそれに開けたわ」


 タケルが答える。


「缶詰から直で食うよりいい。なんツーか缶詰だと動物の餌って感じがしてな」


「ふふっ! 言えてる」


 そして俺達はささやかな夕食をとった。少し休んだ後にタケルが言う。


「じゃあよ! 電気も無事につけられる事がわかったからよ。いよいよDVDの上映会と行こうぜ!」


「「「「「賛せーい!」」」」」


「じゃあテレビとDVDセッティングだ」


 建屋内に発電機とテレビとDVDを運び込み、ヤマザキがDVDとテレビを線のような物でつないだ。

 そしてヤマザキが言う。


「良かったよ」


「なにがだ?」


「ここがコンクリートの工場だからだよ」


 タケルがヤマザキに尋ねる。


「何で良いんだ?」


「街中のコンクリ工場は防音対策が施されてるからな、近隣住民からの苦情が出ないように対策されてるのさ」


「山崎さんも良く知ってるね」


「仕事でそう言う苦情を受けたことがあるからな」


「ああ、そう言えばお役所勤めなんだっけ?」


「市役所だけどな」


「大変な仕事だったんだ」


「まあ慣れれば給料も悪くなかったよ。だけどこんな世界になったら意味はないさ」


「…だな」


 どうやら全部の作業が終わったらしい。そしてタケルが発電機とやらに足をかけて、ヒモのような所を引っ張る。何度か引っ張るとブーンと音がしだして動き出す。


 するとマナが不安そうに言った。


「えっ? 結構音が大きくない?」


 それにヤマザキが答えた。


「大丈夫だと思う。外出てみろ」


 そして何人かが建屋の外に出て帰って来た。


「本当だ! 微かにしか聞こえない」


 マナがそう言ったので、俺が皆を安心させるために言う。


「大丈夫だ。百メートル圏内にゾンビはいない」


 それを聞いてヤマザキが言う。


「じゃあ問題ない。百メートル先までは聞こえないだろう、あとはDVDのボリュームを上げすぎないように気を付けないとな」


「それは分かってる」


 俺は何が始まるのか好奇心でいっぱいだった。タケルが俺のそんな様子を見て嬉しそうに言った。


「じゃあ点けるぞ!」


 黒いテレビの板の上に何かが表示される。


「おお」


 俺はそれで驚いてしまった。


「まだ驚くのは早えぇって!」


 そしてタケルが何やら操作をしていると、そのテレビの版に何かが映った。文字が回転して音が鳴り始める。しばらくすると何かの映像が流れ始め、その画面の上に文字がはしる。


「おお! 凄い! なんだ? これはどういう仕組みなんだ?」


 俺が言うと、ミオが笑って言う。


「仕組みなんて私もわかんないよ。でも皆にはこれがあたりまえ、こういうのがあるのが当たり前の世界で生きて来たんだ」


 なるほど。これでいろんな情報を見れるのか。こんな物は前世には無かった。だが彼らの普通という物を感じる事が出来たのが嬉しかった。俺は皆と違う世界だったから、彼らの認識についていけなかったがようやくその一つを体験する事が出来るのだ。


 ユミがタケルに聞いた。


「タケル、このDVDなんだっけ?」


「スー〇ーマンだよ」


「「「「「ああー」」」」」


 そう言って皆が俺を見た。一体何がなんなのかさっぱりわからない。


 ミナミがタケルに言う。


「吹き替えにしたよね?」


「もちろんだ。ヒカルは日本語が読めねえんだ」


「おっけー」


 俺は何やら皆に気を使われている。少しの後、俺はテレビの版に釘付けになっていた。それはどうやら何かの物語になっているらしく、俺はその話に引き込まれていくのだった。

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