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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
525/614

第525話 命を守りながらの脱出

 助けた人らは、かなり体力を消耗していた。なんとか螺旋階段を登っているも、途中で遅れる人が出始める。列は縦に長くなり、横っ腹をつかれれば非常に危険な状態だった。そこで先頭を歩く俺がタケルにその役割をまかせ、全体の護衛に周るようにする。


「タケル先頭を頼む!」


「おうよ!」


 俺が中腹に降りて、ミオ達に言う。


「ミオは、側面の壁に精神を集中させてくれ」


「わかった」


「ツバサは音が聞こえたら、行進を止めるようにするんだ」


「やってみる」


 最後尾のクキのところに行って、俺とクキが弱っている人間を背負う事にする。それで少しは登る速さが上がり、なんとか遅れを取り戻せるようだ。


「ヒカル!」


 ミオからの呼び声で、俺は背負っていた人を降ろして一気に昇る。


 なるほど、壁の向こうに気配。こちらに向かって殺気が走っていた。


「炎龍鬼斬」


 壁に亀裂が入り、向こう側にいる兵士ごと切る。死んだのを確認し、皆に急いで登るように言った。俺は一番先頭のタケルのところに戻り、行進を止めるように指示をした。


「ここにいる事がバレた。待ち伏せの可能性がある。最後尾にいってクキと一緒に、動きの悪い生存者を運んで来てくれ」


「りょーかい」


 タケルが階段を下りて行った。すると上階の方から、ゾンビ化兵の気配が多数してきた。


 思考加速、金剛、結界。高速移動。


 一気に昇りつめ、鉄の扉の前に止まる。この前に集合しているようだった。


「推撃!」


 鉄の扉と壁が一緒に吹き飛び、それと同時に銃声が鳴り響き始めた。破壊の煙が舞う中に、俺がすぐに飛び出しゾンビ化兵一体一体を屍人斬で切っていく。隠れる十体のゾンビ化兵を倒すのに五秒ほどかかり、ようやく煙が収まって来た。そこにツバサから声がかかる。


「ヒカル!」


「来たか! ここで待て。後ろが追い付くまで」


「わかったわ!」


 そこで待っていると、仲間と生存者達が追い付いて来る。ドアの前に集まったところで、俺がクキとタケルに言った。


「ここからの攻撃は全て俺に任せろ。徹底して生存者を守れ」


「「了解」」


 壊れたドアからでて、通路を歩いて行くとそこに人が倒れていた。俺達が殺したファーマー社の人間ではなく、さっき俺達と別れた治験者達。それをみて、最初に助けた父親が悔しそうに言う。


「だから言ったんだ。なんで自分らでなんとか出来ると思ったんだ……?」


 すると他の生存者が言う。


「あんたのせいじゃないさ。あそこでは、どっちが正解かなんてわからなった」


 そこでクキが言う。


「感傷に浸ってる暇はない。周りは敵だらけなんだ」


「あ、ああ」


 研究員は俺達が片付けたので、ほとんど残ってはいないが、いるのはあちこちで待ちかまえている、ファーマー社の兵かゾンビ化兵のみ。更に俺が気配感知で探ると、入って来た下水道の穴にも待ち伏せされているのが分かった。


「入って来た場所は押さえられた。何処に逃げても敵がいるようになっているな」


「どこから出る?」


「正面にしよう。俺が館内の兵士とゾンビ化兵を片付けてくる。ここで待機してほしいが、試験体には充分注意する必要があるぞ」


「わかった。安全な場所を探す。処理し終えたら、ヒカルから俺達を見つけてくれ」


「ああ」


 俺はその場を離れ、ファーマー社の兵とゾンビ化兵が潜伏しているところを走り回り始末していった。すると幸運な事に、俺の前に試験体が現れてくれたのだった。


「ついてるな」


 それはワニの顔をもち頑強な鱗に包まれた、八メートルくらいの四足歩行のやつだった。だがそのワニの頭のところに、人間の頭が不自然についていた。どうやら人間の脳で、このワニを操っているようだ。


「屍人乱波斬」


 ワニの試験体は、一瞬でバラバラになる。退路はおおよそ確保できたので、俺の方から皆の気配を探り戻った。すると部屋の中に全員を入れ、クキとタケルが入り口を見張って待っていた。


「正面から抜けられる!」


「よし! 皆行こう!」


 俺が地上まで意識を巡らせると、次々とヘリコプターから兵士が下りてくるのが分かる。どうやら増援を送って来たらしく、ぞろぞろと入り口の外に集まっているようだ。


「踏み込まれる前に処理したほうが安全だな」


 俺達は再び生存者を引き連れて、入口方面へと走る。


「先行する!」


 俺はそう皆に告げて、一気に入口方面に向かって走った。どうやら、入り口から少しずつ兵士が入り込んできているようだった。


 ゾンビ化兵か……。


 ならば……。


「大地裂斬!」


 ゴバン! と俺の前から、建物の外にかけて地面が大きくえぐれゾンビ化兵達が落ちていった。建物も大きく破損して、少しずつ崩れ落ちてくる。そこにクキ達が追い付てくる。


「こっちだ! 崩れる前に出る!」


 俺は施設の道路側に面した壁に、刀を振るった。


「重推撃!」


 ドン! と壁ごと吹き飛び、外の壁までの道筋が見えた。


「タケル! 壁を破って皆を道路に逃がせ! 俺はヘリコプターをやる!」


「おうよ!」


 そして俺は壁から飛び出し、一気に建物の屋上に飛んだ。四機のヘリコプターのうち二機が地面に着陸しており、後の二機が上空からこちらを見張っている。


「閃光孔鱗突! 大龍深淵斬!」


 次々に爆発していくヘリコプター。その時タケルが自分の技で壁を砕き、生存者を外に連れ出しているところだった。俺がすぐにそこに合流すると、大声で叫んだ。


「走れ!」


 長い列になりながらも、ぞろぞろと走り出すと後方から戦闘車両が追いかけて来る。俺が殿を務め、そいつらに向けて剣技を放った。


「冥王斬!」


 ザシュッ! と車体ごと中の奴らを斬り裂き、全て真っ二つになった。追手を警戒しつつ、生存者達を連れて離れて研究所を離れていく。


「クソ! 車が!」


俺達が乗って来たキャンピングカーは、見るも無残に破壊されていたのだった。

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