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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
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第523話 研究所員を防衛する試験体

 俺が先頭で更に先に進むと、突然あちこちから銃弾が飛んできた。ゾンビ化兵の気配はしなかったのだが、見れば機械がこちらを狙っている。この先の壁は全てが鉄製になっているようで、試験体対策がなされているようだった。


「刺突閃! 五連!」


 金剛と結界で身を守りつつ、剣技で全ての機械を破壊する。クキが後ろから走ってきて言う。


「大丈夫か?」


「問題ない」


「ありゃ、試験体の対策だろうな」


「そのようだ」


「無人の防衛機構か……雰囲気が変わったな」


「試験体の暴走を警戒してるんじゃないだろうか。無駄なゾンビ化兵の損耗を無くすためじゃないか?」


 俺とクキの会話にアビゲイルが言う。


「そうでしょうね。試験体の改造中に、制御に失敗する場合もありますから」


「確かにな」


 すると治験者の男のひとりが聞いて来た。


「あんたらは、これについて何かを知ってるのか?」


 クキがそれに答えた。


「そうだ。あんたら、ネット上で見た事は無いか? ゾンビが世界中で出現しているところを」


「見た事はある。あれと、ここで錯乱した人間が一緒という事か? ゾンビなどデマだと思っていたが」


「いや。デマじゃない。実際に起きているし、あんたらもその対象だ」


「なんで……ゾンビなんか作り出してる?」


 それにはシャーリーンが答える。


「いくつかの用途があります。まずは軍事用途ですね。死なない人間を戦地に送り込み戦わせる。または放射線の除染作業にも使えますし、危険な場所での作業もこなせます。ただ……一番の目的は、人間のドローン化となります」


 皆が唖然としていた。


「そ、そんな事をしてるのか? それならもっと情報が回ってもおかしくないはず……」


 それにはオオモリが答える。


「メディアが全てコントロールされているんですよ。それに政府や企業にも多額の金がばら撒かれているんです。そのおかげで政治家たちも、その事について話す事はできないんです。話せば暗殺されます」


「そんなことが……」


「そうです」


 更に他の女が言った。


「でも、実際に目の当たりにしてしまえば信じざるを得ないわ。完全にゾンビになった人を見たもの」


 生存者の皆が頷いた。助けた娘が父親に縋りつき、震えている。


「ママは……ママ……が」


「大丈夫だ。大丈夫だよ」


 父親は怯える娘の頭を優しくなでながら、ニッコリと笑顔を浮かべて安心させようとしていた。子供が父親の服を握る手に力がこもる。そして俺は周辺の確認をし、皆に告げる。


「俺が先の部屋を確認する。状況を見定めるから皆はここで待て」


 皆は俺の言葉にうなずき、俺はクキに言う。


「皆を守ってくれ」


「了解だ」


「アビゲイルは俺と」


「分かったわ」


 俺は警戒しつつその鉄壁の部屋を進む。さっき破壊した防衛用の銃の残骸が散乱し、それを踏み越えながら先へ進むと大きな扉が現れた。そして俺がアビゲイルに言う。


「この先に何かいる。俺の後ろに隠れろ」


「はい」


「断剛裂斬」


 ドアを破壊し、斬れた先を見渡す。


「なんだ?」

 

 切れ目に手を入れて、グイっと亀裂を広げる。アビゲイルが中を見ると、一瞬怯んだように声を出す。


「うっ」


 その先の部屋はとても広かった。広い部屋の中には理路整然と、大きな円筒状のガラス培養槽が並び、試験体のなりそこないになった人間が大量に詰められていたのだ。


「実験か……」


俺の声にアビゲイルが言う。


「……未完成の個体です……でもこんなに?」


 それはどこまでも続いているように見える。培養槽の中の試験体は土気色の肌をしており、筋肉が異常発達して、虚ろな目で浮かんでいたのだった。


 そしてその奥には、俺達の侵入から身を守るように白衣の人間達が並んでいた。そいつらはロボットのような形状の試験体に守られ、こちらを冷たい目で睨んでいる


「なんだ! お前達は!」


 一人が逆上したように言う。だが俺達の後ろから、あの助けた娘が走り寄って来た。


「ママを! ママを探して!」

 

 アビゲイルが娘を抱き留めて、父親を呼ぶ。


「危険です。早くこの子を連れて行って」


 クキと父親が慌ててこちらに着て、子供を抱きかかえた。


「ママを! 助けなきゃ!」


「待つんだ。彼らの言う事を聞くんだ!」


「でも!」


 その声よりも早く培養槽の向こうにいた試験体が、ゆっくりとこちらに動き出した。俺はクキに言う。


「俺が片付ける。生存者を連れて隣の部屋に戻れ! 後方の警戒をしろ!」


「そのつもりだ」


 クキに連れていかれる親子とアビゲイル。俺はそれを尻目に一気に奥に進んだ。すると白衣の奴らが不敵な笑いを浮かべ、俺に言い放つ。


「なんだ? 銃か? 機関銃か? そんな物では……」


 だが、俺が村雨丸を構えたのを見て唖然としている。


「さ、サムライソード? そんな物でここにきたのか?」


「銃などあてにならん」


 俺がそう言った時、一斉に装甲を着た試験体が飛びかかって来る。


「氷結斬! 水流閃!」


 一帯を凍らせ、試験体の行く手を阻む。だが身動きの取れる試験体が氷を突き破って前に出てきた。


「屍人、乱波斬!」

 

 一瞬で細切れになる試験体を見て、白衣の連中が唖然としている。


「な、なんだぁ! それはぁぁ!」


「だから言っただろう。銃よりも役に立つと」


 すると一人の白衣を着た女が叫ぶ。


「銃の使用許可!」


「しかし……試験中のやつらがいるんだぞ!」


「そんな事より、あのおかしな奴を仕留めなくては!」


 ビービービービー! とサイレンが鳴り響き、片側にいた白衣の奴が言う。


「銃の使用許可! OK!」


 すると試験体の腕に付いた銃の小窓が、赤から青に変わった。


 キュゥゥィィィィィイ! ガガガガガガガガガガガ!


 バリンバリンと周囲の培養槽を割りながら、試験体たちは一気に銃撃をして来た。もちろん金剛と結界で全くの無傷。次の瞬間、俺は一体の試験体の隣りに立ち剣技を振るった。


「屍人冥王斬!」

 

 装甲ごと切り裂いて、一帯の試験体が崩壊していく。俺はすぐに縮地で、すぐそばの試験体に近寄り剣技で破壊する。既に試験体は俺の動きを追ってはおらず、あらぬ方向に銃を撃ち始めた。そのおかげで培養槽が破壊されてしまい、試験体同士の相打ちをしていく。流れ弾が白衣の連中にまで降り注いだ。


 装甲と試験体の性質のおかげで、銃撃では全く損壊できないようだった。俺は銃弾の飛び交う中を次々に飛び回り、試験体を一体一体と沈めて行く。銃撃をコントロールする事は出来ずに、次々に培養槽が破壊されて行くのだった。

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