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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
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第521話 研究所ダンジョンを攻略するパーティ

 逃亡して来た男は、どうやら地下排水溝を辿って出て来たらしかった。俺達もそこからもぐり込み下水道を歩いて行く、その奥に辿り着いた時に男が言う。


「そこの通気口から出て来た」


 下水道の壁、頭の上あたりに小さな入り口が見え、その下に破った金網が落ちていた。だが人一人ぐらいしか通り抜けれそうもない穴で、俺はそこを行くのを止めさせる。


「万が一、敵に気づかれたら一網打尽だ。違う入り方をしよう」


 男が言う。


「だけど、ここは俺達がやっと見つけた場所なんだ。ここしか入るところは無いぞ」


「この先の上に施設があるという事だろう?」


「そう言う事だ」


 俺は下水の壁に向けて日本刀を構えた。


「離れていろ」


 皆が距離を置いたところで、剣技を繰り出す。


「次元断裂」


 バグン! そこの壁には一瞬にして空洞が出来上がった。男は何が起きたか理解が出来ないのか、ポカンと口を開けてみている。


「行くぞ」


 するとようやく口を開いた。


「な、どうやったんだ……」


「次元を切って、その質量分だけ吸い込まれただけだ」


「い、意味が分からない」


 だけどタケルが後ろから男の背中を押して言う。


「いいからいいから」


 新たにくりぬいた穴を進んで行くと、通路の裏側のようなところに出た。そこは何らかのパイプなどが張り巡らせてられおり、どうやらあの建物の壁の外側らしい。


「この先が地下施設だ」


 男が言うので、俺はまた剣を構えて振るう。


「断鋼裂斬」


 ジャキッ! と音を立てて、鉄骨ごと壁を切り裂いた。すると灯りがこぼれて来る。


「電気だ」


 気配感知でも先に人の気配がない。クキがそろりと顔をのぞかせて、サイレンサー付きの銃を取り出して監視カメラを撃った。


「行こう」


 通路に入り込み、クキが男に聞く。


「で、家族はどこにいるんだい?」


 唖然としていた男が気を取り直して言った。


「地下だ。もっと深くにいる」


 それを聞いてクロサキが言った。


「ファーマー社の施設っぽいですね」


「可能性は高いな」


 少し歩いて行くとガラス張りの部屋が現れて、その奥に人の気配がし始める。俺達が隠れてそっちを見ていると、白衣を着た人間達がウロウロしているようだ。それを見て男が、苦々しい顔で言う。


「アイツらは悪魔だ。人体実験をしている」


「そうか。まずは、ここで騒ぎを起こす前に生存者のいるところに行こう」


「わかった」


 そして人に見つからぬようにしつつ、男の誘導に従い俺達は扉を開けて中に入った。そこには螺旋階段があり、下まで吹き抜けになっているようだった。するとタケルがそれを見て、眉間にしわを寄せる。


「まあ……そうだよな。今までの施設とも、よく似たような雰囲気だ」


「そのようだ」


 そして俺が身を乗り出して、下に気配感知を飛ばしてやる。人間の気配があるが、その中にとうとうゾンビの気配を見つける。


「ゾンビ因子を確認した」


「はあ……至る所でやってんねえ」


 するとアビゲイルが悔しそうな顔でタケルに言った。


「むしろ、この国が研究の本場なんです」


 助けた男は何を言っているのか分からないようだが、下では恐らくゾンビ因子の試験体製造を行っているのだろう。


 そこでオオモリも言う。


「地下かあ。だと、試験体のコンテナに潜り込ませたスマホの電波も届かないですね」


「なるほどな。ニューオーリンズからここに運び込まれた可能性もあるわけか」


「フォートリバティのあのバケモノも、ここから出たのかもしれませんよ」


 だが俺はそれに首を振った。


「いや。俺がサンパウロで見た施設はこういう感じじゃなかった。人が入り込める余地はなく、あの試験体以外は全て軍事施設のようになっていたからな」


「ということは、他にあるということですかね?」


「確かではないがな」


 クキが取りまとめて言う。


「いずれにせよ、敵に気づかれないうちに潜るぞ」


 皆が頷く。そして一気に螺旋階段を下り始め、人の気配のする階層に辿り着いた。俺は皆を手で制して、動かないように言う。


「静かに殺ろう。試験前の人達が殺されてしまう」


 騒ぎが大きくなれば、生存者ごと研究所が消される場合がある。インドのチェンナイの子供たちのように、生きているうちに全員助けたいところ。すると俺の意図を組んだクキが、それぞれに指示を出し始める。


 攻撃が出来るのは、タケル、ミナミ、クキ、クロサキ、シャーリーンの五人。タケルとミナミはレベルが高く、既に気配を消す事も出来る。クキとクロサキとシャーリーンは、その道のプロなので動きが洗練されていた。


 他の仲間は、ミオとツバサと一緒にそろそろと動いている。この二人は敵よりも早く、敵の気配を察知する事が出来るからだ。マナとアビゲイルとエイブラハムは、その二人の後ろで周りを警戒していた。


 そして俺が男に言う。


「しばらく待て」


 男は黙ってうなずいた。皆が散らばり俺も打ち漏らしの無いように全体を気配感知する。そろりそろりと先に進んで行き、横並びでその階層を制圧していった。皆の気配を俺が感知し、誰も危険にあう事が無いように気を配る。


 タケルとクロサキが組みに、ミナミとシャーリーンが組に、そしてクキが一人で先行し始めた。


 なるほどな……皆もかなり成長しているようだ。既に冒険者パーティ以上の動きで、俺が一人でやるよりも静かに早く階層を制圧していっている。


 まるで研究所を、ダンジョンのようにクリアしていくのを見ていると、つい前世のパーティーの事を思い出してしまう。阿吽の呼吸ができていて、誰が何をすべきかを分かった居るのだ。


 そこで俺はつい笑ってしまった。それを見たミオが聞いて来る。


「どうしたの?」


「まるで冒険者パーティーだと思ってな。ここはダンジョンでもないのに」


「そっか。でもこうやって潜っていくものなのね?」


「その時の司令塔が俺じゃなかったがな、今は俺がその半分を担っている。ミオとツバサも気配感知に長けているから、皆の動きを感知して指示が出せるようにしておけ。これは一つの学びになるだろう」


 そして二人が頷くのだった。


 その階層を全て制圧したころ、クキが戻ってきた。


「で、あんたの家族はどっちだい?」


 すると男が言った。


「あんたら、特殊部隊なのかい?」


 そこでクキが言う。


「そうだ。家族を助けたいなら、速やかに場所を教えてくれ」


「わかった」


 そうして男と俺が先行しながら、下に降りる階段を下りて行くのだった。

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