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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
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第512話 敵の非道な戦術

 仲間達に都市部のゾンビパンデミックの状況を説明し、俺達がファーマー社を追っていた事を話した。だがその後で俺が違和感を感じ、戻って来た事を聞いて皆が納得して頷く。


「ヒカルが言うのなら間違いはないだろうな」


 そこでアビゲイルが言う。


「ファーマー社は最新のAIを駆使しています。恐らくは、何らかの対抗策を練っていると思います。特にここはアメリカですから、施設も最新機器が揃っているのです」


 するとオオモリが言う。


「残念ながら、僕の端末は今ごろ海の底です。対抗する為に、最新の端末を入手しないとダメです」


「探すしかあるまい」


 俺は気づいた事を言う。


「前の世界では、魔人が人間達を人質にとり巨大な龍をぶつけて来た。ただ単に龍を撃退するならわけはなかったが、人を盾に取られると手出しが難しくなる」


 クキが言った。


「都市部もゾンビと人が入り乱れてしまうと、殲滅速度は極端に遅くなるしな」


「そう言う事だ。市民が居ると攻撃できない事を、ファーマー社は知っている」


「ベルリンやローマで、俺達の戦い方を知られたからな。逆に奴らは人命などお構いなしに、ゾンビ化薬を使用してくる。そこに未知の試験体を入れられたら、甚大な被害が出るぞ…」


「そうなるだろう」


 ミナミが怒った顔で言った。


「ムカつくけど、アイツらも散々実験データを取って来たからね。その対処法を持っていてもおかしく無いわけね」


 アビゲイルが厳しい表情で言った。


「私一人を狙う為に、なんと言う事をするのでしょう」


「そうだな、ファーマー社にとってはそれだけ邪魔な存在なのだろう」


「そう……ですね」


「いずれにせよ、この地に博士がいる事がバレましたし、このまま黙っているとは思えませんよね」


「大森の言うとおりだろう」


 そして俺とツバサが、窓の外の空を見上げる。


「何か来たわ?」


「都市のほうだな?」


 オオモリがスマートフォンを見て言う。


「誰かが撮っている、SNSのLIVE映像です! 見てください!」


 俺達が見ると、ヘリコプターが大きな鉄球を吊るして運んできたようだ。


 それを見てクキが言う。


「チヌークで吊り下げてるのか。何だありゃ」


 だが俺には分かった。


「コロンビアのファーマー社基地で見た奴と同じ気配がする! まずいぞ!」

 

「うわ」


 スマートフォンで見る映像では、鉄球から上に向かって黒い液体が上がっていってるようだった。それがあっという間に、ヘリコプターを包み込み真っ黒になった。


「堕ちるぞ」


 プロペラが止められ、それが地上に落下していくのが見えた。


「自分らも、やられてるじゃねえか!」


 映像でヘリコプターが爆発し、少ししてここまで音と振動が伝わって来た。ガラスがびりびりと震えて、中に避難していた人たちもスマートフォンを見て怯えている。


 俺が言った。


「……堕ちた」


「ファーマー社、マジでなりふり構ってねえな。アメリカが大変な事になっちまうんじゃねえのか!」


 シャーリーンがわなわなと震えて言う。


「なんという事を。あれでは都市部はもう助からない」


「その通りだ。そして、じきにここまで広がって来る」


 それを聞いていた黒人の母子が震え、腰を抜かして座り込んでしまった。そこでミオが言う。


「航空会社の人に言って、ここにいる人達だけでも飛行機に乗せて飛んでもらいましょう!」


 マナも頷いた。


「それが良いわ!」


「そんな話を、聞いてくれるじゃろうか?」


「緊急事態だわ! 何とかしてくれるかも!」


 見れば避難民のところに、制服を着た女が数名いる。そこに向かい、状況を伝えてみる事にした。


 シャーリーンが言う。


「すみません。インターネットで情報を見ましたか?」


「見ました!」


「あの黒い怪物はじきにここまできます。軍隊では太刀打ちできないのです! ここにいる人達だけでも、飛行機に乗せて飛び立つことは可能ですか?」


「管制室に聞いてきます!」


「早く!」


「はい!」


 係員が走り去り、避難している人達からも声がかかる。


「いったい、これは何なんだ!」


 それにクキが答えた。


「これは映画でも何でもない映像だ。映っているのは、ゾンビの成れの果ての怪物だよ」


 他の男が言う。


「米軍は何をやってるんだ!」


「恐らく軍隊じゃあ歯が立たん」


「都市には、家族がいるんです!」


「今はここにいる人達だけでも何とかするしかない」


「い、いかなきゃ! 家族のところに!」


 一気にざわつき始め、入り口に殺到する者やカウンターに走って行く者などがいる。


「動かん方が良い!」


「じゃあどうするって言うんだ!」


「とにかく、飛行機に乗って逃げるのが最善だ!」


 そこにいる人達は騒然となっているが、俺達も次にどうするかを考えなければならなかった。


 ミオが言う。


「アビゲイル博士だけでも逃げてもらわないと!」


 だがアビゲイルは首を振った。


「私は残ります。ミスターヒカル! あれの組織を何とか回収したいのです!」


「どうするんだ?」


「対抗薬を作ります!」


「だがまずは、あれを抑えねば! とにかく屋上に! 見晴らしのいい所に行って確認した方が良い」


「わかった!」


 屋上に上がり、都市の方を見るとあちこちで煙が上がっているようだった。 オオモリが俺達にスマートフォンを見せて言う。


「もう、ほとんど映像が取れません。アップロードした物が見れるだけです」


「壊滅したか……」


 そこまでの状況を見て、クキが苦渋の表情を浮かべて言う。


「コラテラルダメージだ。ヒカル……この都市を消すつもりでやらねば」


「ああ……」


 だがアビゲイルが言う。


「対応薬の設計図は出来ているんです! 素材を取って高度な研究施設さえあればどうにかなります」


 クキが首を振った。


「それまでもつか? ヒカル」


「数時間だ……」


 アビゲイルが呆然とする。


「そんな……」


 そんな時だった、北側から都市部にかけて何百の火柱が上がる。それを見てクキが言った。


「フォートリバティ基地から、ミサイル攻撃しているんだ!」


 俺が言う。


「ダメだ! 飛び散る! 止めさせないと!」


 そんな俺達の願いもむなしく、延々とミサイル攻撃は続くのだった。

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