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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
510/616

第510話 突然始まったゾンビパンデミック

 催涙弾が次々に投げ込まれる中、俺は装甲車の上に飛び乗り、ハッチから覗いてタケルに言う。


「あそこのビルに突っ込め、人間達は俺がどかす」


「了解」


 装甲車は一気に、三階建てのビルの一階部分に走っていく。前に飛び出て来る人間達は、俺が縮地で近づき進路を開けた。


 ドガガガ!


 壁と窓をぶち破って装甲車がビルの中に突入し、俺がハッチを開けてアビゲイルを呼ぶ。


「来い!」


 ハッチから出てくるアビゲイルを抱き、俺は装甲車から離れた。タケルもその後ろを、難なくついて来ている。


「おいでなすったな」


「やはりアビゲイルは狙われているようだ」


「それにしても、ファーマー社の奴らの動きが早い」


 するとアビゲイルが言う。


「アメリカには沢山のファーマー社支部があります。情報網もさることながら、短時間で来れる範囲内に拠点があるはずです」


 タケルが肩をすくめる。


「敵地にいるようなもんかい」


「はい」


「タケル。武装している奴らがこっちに来ている」


「米軍かファーマー社どっちだ?」


「わからん。いずれにせよ速やかにここを離れるぞ」


「おう」


「集中だ」


「了解」


 タケルも思考加速のような物が使えるので、ここを離脱するまでは能力を使ってもらう必要があった。もちろん俺とは違い、後でその反動が来るかもしれないが、今が使いどころだった。


 廊下の先にある窓にめがけて走り、剣技で壁ごと壊す。外に逃げ惑う市民がいるが、俺達はそれに紛れるようにして走り始めた。米軍もいてファーマー社もいる中で、アビゲイルを守りながら戦うのは危険だった。ファーマー社は恐らく、なりふり構わず攻撃してくるだろう。


 だが逃げている時に、唐突に銃声が聞こえ始める。


「なんだ?」


「向こうで戦ってるようだぜ」


 俺の気配感知にゾンビの気配が感知される。


「ゾンビだ」


 そしてアビゲイルが叫ぶ。


「市民に被害がでます!」


 俺達が立ち止まり、タケルが俺に言った。


「博士はヒカルから離れたらだめだ。俺が見て来る」


 だがアビゲイルがタケルの腕を取る。


「いえ。私も行きます」


「俺が必ず守る。三人で行くぞ」


 人の波を逆流しながら進むが、必死の形相で走る人達が増えて来た。


「これは! 催涙弾に混ぜて、あの薬がまかれたようです」


「ベルリンやローマで見たあれか!」


「はい! ゾンビ化薬かと」


 俺達が通りに出ると、あちこちで人々がゾンビに襲われて、組み伏せられているところだった。一人に数人が群がり、体を食われている。人々が叫びながら逃げ惑っていた。


「うわああああ」

「にげろ!」


 タケルが怒りに満ちた顔で叫んだ。


「あいつら! こんな所でもやりやがった!」


「なんとしても、アビゲイルをどうにかしたいのだろう」


「マジでなりふり構ってねえな!」


 生きている人間とゾンビが入り乱れて、街はパニックに陥っている。混雑した状態で、ゾンビ化している人間と、普通の人間を見分ける事が難しくなっていた。もちろん俺を除いてはだが。


「大技は使えん」


「細かくやるしかねえか」


 俺もタケルも、周囲の状況はゆっくりと見えていた。俺達めがけてゾンビが襲って来ても、そのこと如くを斬り捨てタケルがモーニングスターで潰した。


 ガガガガガガ!


「おいおい。軍隊は生きてる奴もゾンビも関係なく撃ってるぜ!」


 だがそれはもうどうしようも無かった。


「どこかにファーマー社の部隊がいるはずだ! まずはそいつらを叩こう!」


「あいよ」


 俺が剣を抜いたまま、タケルとアビゲイルに飛んで来る弾丸を斬った。タケルが近寄るゾンビを潰し、俺達はじりじりと先に進んでいく。


「ヒカル! 報道が居た方にいくか?」


「ミスター武。あそこは既に壊滅しているのではありませんか?」


 アビゲイルの言うとおりだった。


「一旦、ここを離脱する」


 そう言って俺はタケルとアビゲイルを掴み、一気に近くのビルの屋上へと飛んだ。二人が目をぱちくりさせつつも、周りを見渡している。


 アビゲイルが言った。


「破壊薬があれば!」


「仕方がない。軍と接触した段階で無くなるのは分っていた」


「どうすれば……」


「タケル、少しの間、周辺の警戒していてくれ! 俺は精神を集中して、ファーマー社の痕跡を探す」


「おうよ」


 俺は目をつぶり、気配感知に能力を全振りする。すると数百メートル先にそれはいた。


「ゾンビ化人間の気配がする」


「行くしかねえな」


「アビゲイル。俺におぶされ」


「はい」


 俺が屋上から隣のビルに飛び移り、タケルも同じようについて来た。これくらいの事ならばタケルも出来るようになっている。ビルの下では、逃げ惑う市民とゾンビの追いかけっこが続いており、俺達はそれに巻き込まれないようにルートを選びつつ先を急いだ。


「移動している! 離脱するつもりか?」


「こんなことをしておいてか」


「奴らの手口だ」


 アビゲイルが言う。


「こんなに手軽に、ゾンビパンデミックを起こせるようになっているなんて」


「人知れず持ち込むことが出来るという事だな」


「アフリカの刑務所で使われたものと似ているかもしれません」


 タケルがこめかみに血管を浮かべて言う。


「病原菌をふりまきまくりやがって!」


 すると空にヘリコプターが飛んで来る。


「米軍だぜ」


「鎮圧に来たのでしょう」


 だがそのヘリコプターは、地上からの砲撃により爆発してしまった。


「地対空ミサイルだ!」


「とにかくこの状態を、軍隊やマスコミに見られないようにしているのです」


「こんなことしてたら、ここも空爆されるぜ?」


「タケル。今はそれを押さえられん。とにかくファーマー社をつかまえるんだ」


 建物の端に来たので、俺達は下に降りざるを得なくなった。そのまま飛び降りると、まだゾンビは広がって来ていない。


「じきに、ゾンビはここまで来ます」


「仕方ない! 優先してファーマー社を追うしかない」


 タケルが路上に駐車している車の窓を割ると、キュイキュイキュイキュイ! と大きな音を立てた。俺が刺突戦で、音がしている部分を破壊する。


 チュチュチュン! ブオオオ!


「乗れ!」


 俺とアビゲイルが乗り込み、タケルは一気に車を急発進させるのだった

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