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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
508/615

第508話 アメリカ最大の基地から脱出

 俺達の装甲車が走っていくと、直ぐに軍隊が待ち受けていた。装甲車の上に括り付けた兵士がいるおかげで、攻撃はしてこないようだが、通りを塞いで行かせないようにしている。


「どうするよ」


 ハッチから顔を出して、タケルが俺に聞いて来た。


「どかせばいい」


「なるほど」


 次の瞬間、俺が一台のトラックの前に出現する。そしてトラックに誰も乗っていないのを確認し、推撃でトラックを吹き飛ばした。


「なんだぁ!」

「トラックが吹き飛んだ!」

「爆撃か?」


 兵士達が狼狽えているところに、クキが運転する装甲車がまっすぐ突っ込んできた。思考加速をほどこしているので、すべてがゆっくりに見える。


「止まれぇ!」

「撃つぞ!」


 俺は銃を構えている奴らを、一瞬で行動不能にする。足を掴み、ポイポイと道路から投げ捨てた。


 俺が装甲車に飛び乗ると、天井に縛られている兵士が言う。


「ど、どうなってる?」

「なんで通れるんだ」


 目の前で起きていることが信じられないらしい。俺は目と口だけが出ている帽子をかぶり、こちらを狙撃銃で狙っている奴を見た。どうやら俺めがけて、銃を打ち込んで来たらしい。


 スパン!


 狙撃の弾丸を斬り落とし、何もなかったようにそこに座った。


 後方から、ぞろぞろと車両が追いかけて来て、空からもヘリコプターがついて来ている。


 またタケルが顔を出した。


「どうやらこの先で待ち伏せされてるな」


「入り口には行かん。壁に向かって走れ」


「りょーかい」


 多くの気配がいる方向とは逆に走り出し、都市部を抜け出した。すると兵士が言う。


「あんたら、もう終わりだよ。ここまで来てしまえば、俺達は人質になんてならねえぜ」


「どういう事だ?」


「俺達ごと吹き飛ばされるって言ってるんだ」


「なんだ。そんな事か」


「そんな事?」


「心配するな。お前達は死なん」


「アメリカ特殊部隊を舐めるな」


「舐めてはいない」


 そうして道を逸れた装甲車は、演習場のような場所に出る。こいつらが言ったように、三機のヘリコプターが一気に近づいて来た。


「突光閃! 三連」


 ヘリコプターのプロペラを破壊すると、三機ともそのまま地面に落下していく。今度は周辺から、こちらに向かって大きな弾が飛んできているようだ。


「次元断裂」


 弾は全て違う次元へと吸い込まれていく。流石に一緒に乗っている兵士達は、高速で行われるそれを認識する事が出来ないでいる。


「な。どういう事だ!」


 俺が言う。


「仲間に殺されたくはないだろう?」


「どうせ俺達を殺すのだろう」


「逃げたら用済みだが、そこで開放する」


「信じられん」


 するとタケルが言う。


「基地のバリケードが見えて来た。あと何重にも溝が彫られているから、装甲車が落ちるなこりゃ」


「ならバリケードを壊して、俺が装甲車を持ち上げる」


「りょーかい」


 前面に迫って来るバリケードを破壊する。そして俺が装甲車の前に降り立ち、溝の上を通過できるように運んだ。何事も無かったように基地を脱出する事に成功し、追いかけて来た車両達は、そこで停まらざるを得ないようだった。


 基地を出て森林地帯を抜けると、市街地が見えて来て装甲車は普通の道路に入った。


 俺が天井に飛び乗ると、軍人たちが青い顔をしている。


「あ、あんた。ターミネーターか?」


「ターミネーター?」


「未来から来たロボットか、秘密裏に開発されたロボットじゃないのか?」


「人間だ」


「うそだろ」


 すると、また空からヘリコプターが追いかけて来た。


 タケルが言う。


「想定外のところから飛び出たから、車両はついて来てねえが航空部隊はついてくるな」


「見失ってもらっては困る」


「それに恐らく規制が入ってて、一般車両は通ってねえみてえだ」


 そしてオオモリが、タケルから受け取ったスマートフォンを見ながら言う。


「テレビ局までは、まだ距離があります」


 タケルが言う。


「とりあえず、そこら辺のマンホールの上で停まれ」


 そのまま車は進み、居住区の一角で停まる。そして俺は、一人だけ抜けられるように装甲車の底に穴を開けた。真下にマンホールがあり、俺がクキに言う。


「皆を頼んだぞ」


「了解だ」


 そうして皆が底の穴から、マンホールに入り込んで行った。


 エイブラハムが出る前に、車に俺と残る予定のアビゲイルに言う。


「気を付けるんじゃぞ」


「分かっているわ。ミスターヒカルがいるから大丈夫よ」


「うむ」


 そしてタケルが言う。


「俺もいるからな。アビゲイルには指一本触れさせねえ」


「頼むぞ」


 皆がマンホールに消えて蓋を閉じた。クキに代わりタケルが装甲車を走らせ、アビゲイルが後部に乗る。俺が再び天井ハッチを抜けて出ると、軍人たちが俺を見て言う。


「どうするつもりだ。どこに行っても部隊はいるぞ?」


「さてな。とにかく俺達は不当に捕らえられただけだ。自由になる権利がある」


「ここまでやっておいてか?」


「自由になるために逃げただけだ」


 そして今度は、ハッチから顔を出して前を見ているアビゲイルが言う。


「バリケードに軍が待ち受けてます。ですが、空には民間のヘリコプターも飛んでいるようです。人質がいる以上、むやみに攻撃はしてこないんじゃないでしょうか?」


「分かった。タケル! 突っこめ!」


「あいよ」


 装甲車が突進していくと、兵士達が逃げる。その後ろに、大きな装甲車が何台も止まっていた。


「推撃」


 ズン!


 装甲車が道を開け、それを見ていた軍人たちは唖然とし、もう何も言わなかった。その道を抜けると大勢の群衆が集まっており、空を沢山のヘリコプターが飛び交っている。


「マスコミもいます」


「よし」


 そして俺は運転席に行きタケルに言った。


「どこが目立つだろうか」


「カメラがいっぱい集まってるところが良いよな?」


「そうだな」


 そして俺達は報道の連中が集まってるところに行き、車両を停める。バリケードの向こうから、おびただしい数の光が発せられた。


 そして、天井の上の軍人たちが言う。


「くっそ、とんだ赤っ恥だ!」

「こんなんでテレビに出るなんてな!」

「俺らは世界に晒されるぜ!」


 そうでなくてはならない。


 そして俺は、アビゲイルをハッチの上に引っ張り上げて言う。


「心の準備は良いか?」


「ええ」


「お前の身は俺が守る。思う存分話をしてくれ」


「そうするわ」


 そして俺とタケルが兵士の一人を解き銃を突きつけ、そいつを人質にして装甲車を降りる。アビゲイルを守りながら、兵士を盾に進んで行くと警察と軍隊が後ずさった。


 どうやらカメラの前では、人は殺せないようだ。


 そしてタケルが叫ぶ。


「どこのテレビ局でもいい! 俺達は独占取材に応じる! 名乗りをあげてくれ!」


 すると一斉に手が上がった。


 だが軍隊がそれを遮る。


「それは許されない! 罪人は法廷で証言をするべきだ!」


 そこで突然アビゲイルが、自分の目出し帽を取り去る。


「私はノーベル賞のアビゲイル・スミス博士です! アメリカ軍に不当に拘束され、逃げてきました! 私はいくらでも証言いたします! これは正当な権利です!」


 それで一気にざわついた。


 俺達は銃を構えられているが、報道の人間が声高らかに言う。


「会見だ! 会見を設けましょう!」


 そのことで、軍隊と報道陣の言い争いが始まるのだった。

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