表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
504/629

第504話 フォートリバティ基地での騒動

 俺とタケルはヘルメットをかぶりサングラスをかけて、アメリカ南部の田舎道を走っていた。何処までも続く道は、とても気持ちがいいものだ。


 そしてタケルが言う。


「やっぱアメリカはハーレーがいいな」


「何処までも道が続く」


「ああ。今までの大陸は道なき道を行くだったが、だだっ広くてもアメリカは何処までも道路が続いてる。バイク乗りには最高だぜ」


「確かにそうだな」


「そんで、このあたりが目的の地だ」


 俺達は十時間ほどバイクを乗り続け、目的の基地周辺の森林地帯を走っている。タケルがバイクを止めてスマートフォンを見る。


「この森林の向こうが、射撃訓練場みてえだな」


「行くか」


「念のために言っておくけどよ、グリーンベレーとかデルタフォースとかがいる場所らしい」


「それはなんだ」


「アメリカ版の九鬼さんがいっぱいいるって事だ」


「なるほど。そこそこ厄介だな」


「九鬼さんも仲間を引き連れてなければ捕まらなかっただろうけど、流石に女子連中はどうにもなんねえ。大森とかも逃げられねえだろうし、エイブラハムの爺さんも無理だ」


「問題は……」


「ああ、アビゲイル博士だな。正体がバレたらマズい事になりそうだぜ」


 一日以上拘束されているだろうが、現在どうなっているのかは分からない。そもそも連れて来られたアジア人が、まだここにいるのかどうか。


 道を逸れて森を走り始めると、後ろをタケルがついて来た。だがそのうちに木々がうっそうと茂る場所に出て、バイクは進めなくなる。


「ここに置いて行く」


 タケルが残念そうに言った。


「可哀想なハーレーちゃん。誰かに見つけてもらえよ」


 バイクを下りて森を進んでいると、高いフェンスに囲まれた場所に出た。


「この高い壁の上の電線は、多分高圧電流だぜ」


「なら穴をあけよう」


「了解」


 村雨丸を構え、分厚い壁を丸く切り抜いた。寝そべってそこに潜り、タケルも後ろをついてくる。


「さーて、基地は広いぜ」


「人の気配がする。銃を持った奴らが何かしてるぞ」


「訓練だろ」


「わかった。それじゃあ行こう」


 俺達がそこから先に進んで行くと、タケルの言うとおりに戦闘訓練をしているようだった。今まであったほかの国の軍隊とも違う、かなり熟練した統率のとれた動きをしている。


「タケルの言うとおりだ。動きのいい奴らがいる」


「だろ?」


「だが、クキほどじゃない。さっきタケルが言ったようにクキのような奴だらけなら、もっと手こずっただろうが、クキよりも能力は低いようだ」


「どういうこった?」


「クキはレベルアップしていない時に、俺に気とられる事無く狙撃してきた。二回目はさすがに分かったが、クキはまったく気配を出さずに狙撃をしたんだ。タケルも今なら、その凄さが分かるだろう?」


「ぞっとするねえ。今でもヒカル意外なら、気づかないうちに殺せるってこった」


「そう言う事だ」


「自衛隊特殊作戦群の隊長ってのは、レベルが高いのか。それとも九鬼さんの資質がそうなのかね?」


「多分、クキが異常なんだ」


「あの化物だらけの核で焼かれた東京で生き残ってたんだもんな。あの人がおかしいのは間違いない」


 俺は唐突に剣を振るう。


「刺突閃」

 

「どうした!」


「監視カメラがあった。破壊したが映ったかもしれん」


「おっと。そいつは急いだ方が良いな」


 監視カメラを破壊しつつ走ると、また違う音が聞こえて来た。


「タケル。この音は恐らくドローンだ」


「マジか。監視カメラを壊したから、確認しに来たんじゃねえのか?」


「すべて落とすが、俺達の足取りがバレるかもしれん」


「仕方ねえ」


 世界最大の基地と言われるだけはあるようだ。今までのようにはいかず、俺とタケルは作戦の変更を余儀なくされる。


「一度、基地を出る」


「りょーかい」


 俺達が走っていると、こちらを確認する気配を感知した。


「見つかった」


「流石はアメリカ特殊部隊だ。俺達がこうもあっさり見つかるなんてな」


「オオモリがいないのが痛い」


「あいつなら機械を騙しただろうからな」


「銃で狙ってるやつがいる」


「マジか」


 そして俺はタケルの頭を持って、地面にふせる。


 バシュ。


「狙撃かよ」


「そのようだ。部隊が動いて、俺達を包囲するつもりだ。またドローンが飛んで来た」


 とりあえず俺は、再び全てのドローンを落とす。


「完全に位置を掌握された」


「んー。なるほど、一戦交えるしかないか?」


「いや。ひとまず俺達の狙いは分かっていないはずだ。ここは一旦退こう」


「おっけ」


 そして俺は軽く大技を振るう。


「剛龍爆雷斬」


 ズドオオオン!


 大きな爆発を起こした隙に、一気にフェンスに戻り穴をあけて外に出る。


「全力で走れ」


「あいよ」


 ゴウと音をたてながら、俺とタケルは森を疾走して茂みに隠れる。


「タケル地図だ」


「一瞬だ。恐らくスマホの位置で感知されるかもしれん」


「やってくれ」


 タケルが地図を見て位置を確認し、それからすぐに電源を切る。


「こっちが町だ」


「行こう」


 森林地帯を疾走し道路を横切りまた森に入る。それを繰り返していると、民家が見えて来る。


「街はこの先だ」


「走れ」


 そして俺達が閑静な住宅街に出ると、今度は空をヘリコプターが飛んでいるようだった。だいぶ距離は離れているが、俺達が脱出した方角から聞こえて来る。


 そこで俺が言う。


「恐らく俺達の脚力を想定出来ないはずだ。とにかく先を急いで、どこかに潜伏しよう」


「だな。デカい騒ぎになっちまったから、ちょっと潜入しずらくなっちまった」


「アメリカ特殊部隊を侮っていたかもしれん」


 だがタケルが笑って言う。


「なーに、潜入方法なんてごまんとあるぜ。今までもそうしてきたようにな」


「ああ」


 店や飲食店などが道端に出て来る。そこを歩いていると、車が行列になって走る音が聞こえて来た。


「車が来た」


「いったん店入ろうぜ」


 するりと入った店はレストランで、店員が空いている席に座れと言っている。俺達がとりあえずテーブルに座ると、店員の女が注文を取りに来た。


「見ない顔ね。旅行者?」


「そうだ」


「そっちはアジア人だね」


「そうだ。台湾だよ」


「分かんないや。何にします?」


 俺達がメニューを見るが良く分からない。


 タケルが聞いた。


「おすすめは?」


「タコスとかブリトーだね」


 俺達が言われたとおりの物を注文し、店員は奥へと引っ込んでいく。


「まあ、あれだな。アメリカは良いよな?」


「本当だな。いい気降だ」


 わざと他愛もない話をする。すると店員が注文の品を持って来て言った。


「なんだろ? さっきから外が騒がしいな」


「なにが?」


「車が行ったり来たり。パトカーも行ったし」


 タケルが言った。


「物騒な事件でも起こったかなあ」


「なんだろう? さっき遠くで爆発音もしたし、何かあったのかな?」


「いやだねえ」


 テーブルに乗った瓶ビールを開けて、俺とタケルが瓶をカチンと合わせて飲む。


「ぷはあ。うめえな」


「そうだな」


 そして女が聞いて来る。


「ここまでどうやって来たんだい?」


「ヒッチハイクだよ。アメリカを適当に旅してんだ」


「いいねえ。学生かい?」


「まあ、そんなところだ」


 そして女が席を離れる。俺とタケルは何食わぬ顔で飯を食った。


「メキシコ料理か。うめえな」


「ああ」


 カランカランと音をさせて、体つきのいい男が三人入って来た。


「いらっしゃーい。あらーこんにちわー」


「おう。ビールを三つくれ」


「あいよ」


 見るからに軍人だ。うっすら火薬の臭いがする。俺達は旅行者を装い、そいつらの話に耳を傾けた。


「爆発騒ぎがあったらしいな」


「非番だから呼び出されたくねえけどな」


「ああ。いったい何なんだ」


「間抜けがやらかしたんじゃねえのか?」


「ちげえねえ」


 なるほど、こいつらは何が起きたのか知らないしらしい。しばらくすると、また軍人が入ってきた。


 そこでタケルがわざと店員に聞いた。


「随分、デカい兄さんらがくるな?」


「軍人さんだよ。五万人の軍人さんが基地で働いてるからね」


「へえ。軍人さんの町かい」


 知っては居るが、知らないふりをして聞いた。


 するとチラリと軍人がこっちを見て、店員に聞いている。


「彼らは?」


「学生のヒッチハイカーだってさ」


「ははっ。羨ましい身分だな」


「どうも」


「坊やたち、ここにゃあ基地くらいしかないよ」


「通過点だからいいんだ」


「どこに行くんだい?」


「あてはねえけど、ニューヨークから来たんだ。これからロス迄、頑張ってみるつもりさ」


「そうかい。せいぜい頑張りな」


「あんがとな」


 そして俺達が何食わぬ顔で飯を食っていると、軍人たちが一斉にスマートフォンを手に取った。


「マジかよ。非番だって言うの」

「基地で爆撃なんて誤報だろ」

「しかたねえ。行くか、会計を頼む」


 すると店員が言う。


「非常事態なんだろ。お代はいらないよ」


「すまない」


 そうして軍人たちは出て行ってしまった。飯の邪魔をしたのが俺達だと分れば袋叩きにされそうだ。とりあえず俺達はゆっくりと飯を食いつつ、外の様子を伺うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ