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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
503/612

第503話 ロードハウスの荒くれ者からバイクを買う

 日が落ちた夜の街道を、俺とタケルが歩いていた。フォートリバティ基地へ向かう為の、移動手段を探していたのだ。すると錆びれた飲み屋の前で、バイクが並んでいるのが見えて来る。


「ハーレーだらけじゃねえか」


「どうする?」


「もちろん、これにする。だけど愛を感じる仕様にしてるなあ……」


「どういうことだ?」


「大切にしてんだろうなって。これを盗むのは忍びねえし、リュックに入ってる金で買うか」


「なら、鍵を持っている奴を探そう」


 俺達が店に入ると黒い皮の上着を着た連中が、テーブルの上に乗っている玉を棒で突いていた。酒瓶を片手に、談笑している者もいれば、店員の尻を触って怒られている奴もいる。


 だが俺達が入っていくと、屈強な男達が会話を止めてじっと見てくる。


 タケルが言う。


「なんか、お呼びじゃないって感じだな」


 だが俺は、皮の上着を着た集団の一人に言う。


「外のバイクは、あんたのか?」


 すると驚いたような顔をして、男の仲間達が振り返る。


「この成金野郎は、何を言ってるんだ?」

「さあてな。悪い事は言わねえ、坊やたち。さっさと出て行った方が身のためだ」

「そんないい身なりで、こんな所にくるもんじゃねえぜ」


 なるほど、俺のル〇ヴィ〇ンのスーツの事を言っているらしい。


「すまないな。こう言う所に来る服装が分からないんだ。とにかく外のバイクは誰のだ?」


 その言葉でBARの中の空気が一転する。皆が注目し、屈強な男らは殺気立てて俺達を睨んだ。


「坊やに何が関係ある?」


「大事なバイクを、ちょっと売ってくれないか」


 俺が言うと、BARが笑いに包まれる。


「あははははは!」

「こ、このガキ何言ってんだ?」

「おいおい。何言ってるのか分かってんのか?」


「ちょっと待て。金はあるんだ」


 タケルは、ゾンビ破壊薬が入っていたリュックから、シャーリーンが入れていた札束を取り出す。


 三束ほど重ねると、男達の目の色が変わった。そしてタケルが言う。


「封を切ってねえ三万ドルだ。外にあるファットボーイとフォーティエイトを売ってほしい」


「おいおい。おまえらなにもんだ?」


「ちょっと旅行してて、バイクがいるんだよ」


「わけわからねえ。こんな所で金をひけらかして何がしてえ」


「売ってもらえねえのか?」


「売るわけねえだろ」


「そうか」


 するとタケルは、素早くリュックに札束を入れこんだ。


「本当はバイク屋を探してる暇はねえんだがなあ…」


 タケルは歩いている店員をつかまえて聞く。


「このあたりにバイク屋はあるかい?」


「あ、街に行かないとないよ」


「んじゃ、街に行って聞くか」


 そして俺とタケルが、店を出るために歩いて行くと、玉つき棒が俺達の前に現れる。そして殊更屈強そうな、皮の上着を着た男が言う。


「おい、そのバッグを置いていけ」


 タケルがギロリと睨んで言う。


「あっ? どういうこったよ?」


「バイク屋の案内賃だよ」


「あんたに教えてもらったわけじゃねえぜ」


「この店の子が教えたんなら、俺達が教えたも同然だ」


 するとタケルがニッと笑って言う。


「やめとけやめとけ。痛い目をみたくなかったら、さっさと通してくれ」


 すると男達が大笑いする。


「なんだ、カラテでもやるのか? アチョー! って」


「なんでもいいよ。んじゃ、またな」


 タケルが玉つき棒をどかし進んで行くので、俺もその後ろをついて行く。


「てめえ!」


 男がタケルの肩を掴んだが、そのままずるずると引きずられてコケる。それを見て男達が立ち上がり、俺達の行く先を阻んだ。


 転んだ男が立ち上がって言う。


「手を出しやがったな!」


「出してねえよ。おりゃ肩を捉まれただけだろ」


「バッグをよこせ!」


 リュックに手をかけそうになったが、タケルはスッと逸らしてどける。


「マジで、怪我をさせたくねえ。あんたらバイク好きなんだろ? いいから黙って行かせてくれよ。俺達が悪かったよ」


 すると転ばされた男が、飛び上がってタケルを殴って来た。もちろん思考加速が働いている為、タケルにはナメクジよりもゆっくりと見えているだろう。


 スッ! よけると、そのパンチが反対側の男を叩いた。


「ガッ!」


「あっ!」


 そこに、さっきの女の店員がやってきて言う。


「ちょっと、もうやめてよ。あなた達もさっさと出て行って!」


「わーったよ」


 そしてタケルと俺が、店を出ようとした時だった。


 パシィ!


 男が女の頬を叩いた。反動で女がよろけ、玉つきテーブルに突っ伏す。


「ひっこんでろ!」


 するとタケルが足を止める。


「ふうっ」


 タケルが振り向くと他の男が飛びかかるが、もちろんそれも避ける。


「こいつ! ボクサーかなんかだ!」


「違うよ。つうか、叩いたお前、女の子に謝れ」


「女の子だあ? あの年増がか?」


「いいから謝れ」


 すると男達がまた笑う。だがタケルは真剣な目をして、隣りに置いてある玉つきの重厚な台を左手で持ち上げた。


「「「「「なっ……」」」」」


 それを見て、男達があっけにとられ、目が飛び出さんばかりだった。


「こいつでぶん殴られたくなかったら謝れ」


「な……」


「早くしろ」


 すると男は女に言う。


「す、すまなかった」


「もう! あんたら帰ってくれよ! 警察呼ぶよ!」


 タケルがズンッ! と玉つきのテーブルを下ろす。


「んじゃな」


「ちがうよ。そっちの皮ジャン連中だよ!」


「ちっ! くそが!」


 そう言って男達が出ようとしたので、タケルが付け加えて言う。


「おいおい。タダで出て良いって言ったか? 少しテーブルが壊れたんだ。修理代を置いて行けよ」


「な、お前がやったんだろ!」


「いいから。ファットボーイとフォーティエイトの鍵を置いてけ」


 そう言ってタケルは、リュックから札束を二つほど出して言う。


「本当だったら三万ドル払う予定だったが値引きだ。二万ドルだ。じゃねえと本当にテーブルで殴る」


「クソ!」


 そう言って男二人が鍵を床に投げた。タケルはきちんと二万ドル渡し、男達は外に飛び出し二人乗りをしながら去って行った。そしてタケルが、店の女に言う。


「騒がせてすまなかった。コイツは慰謝料だ」


 さっき渡さなかった一万ドルを、女に渡した。


「こんなに?」


「あんたは俺らを守ろうとしたからな。あと店にも迷惑料だ。マスターにもいくらか渡してくれ」


「そう……ありがとう」


 女は金を受け取り、俺達は鍵を拾って店を出た。店の連中が唖然とした顔で見送っているが、俺とタケルは外のバイクに鍵を挿してエンジンをかける。


「まあまあのコンディションだ。酒はほどほどにしねえとな……ってヒカルにゃ意味ねえか」


「いずれにせよ。上手くいった」


「だな」


 そして俺達は大型のバイクにまたがり、そのBARに駐車場を後にするのだった。

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