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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
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第499話 ゾンビ試験体の回収と仲間達の拿捕

 ヘリポートのゾンビを駆逐していると、その先に何機もの壊れた大型ヘリコプターが見えて来る。恐らく、潜水艦で運んだ新型試験体を運ぶつもりだったのだろう。飛ぶ前に全て、脱走した試験体にやられてしまったらしい。


 だが俺は、気配感知であるものを発見した。


「タケル、一機のヘリコプターの中に例のコンテナがある。中に新型試験体がいるようだ」


「マジか」


「始末するか」


「ちょっとまて」


 そしてタケルがスマートフォンを出して、クキに連絡を繋いだ。


「あー。九鬼さんか?」


「どうした?」


「試験体が乗っているコンテナを見つけた。他にもぶっ壊れたコンテナが転がってるようだが、どうやら逃げなかった奴がいるようだぜ」


「なんだと」


「みんなは、今どのあたりだい?」


「南側のメキシコ湾に出ようとしているが、海に軍艦が居て脱出しようとしている船達が足止めを食らっている。どうやら一隻一隻、ゾンビが乗ってないか確認しているようだ」


「だと、まだ合流は難しいか」


 するとオオモリに変わった。


「武さん。壊れたコンテナがあるって言いましたよね」


「ああ。そのあたりに転がってんぜ」


「壊れたコンテナや、ヘリコプターを動画で撮ってください」


「了解だ」


 タケルがスマートフォンを向けて、壊れたコンテナを撮影し始める。その間もゾンビがあちこちから這い出て来るので、俺が一体一体潰していた。


「これ、追跡装置がついてますね」


「んじゃ壊れてねえコンテナの装置は、生きてんじゃねえのか?」


「その可能性大です」


「つうことは……」


「回収しに来る可能性が大きいと思います」


「なるほど。そうなるよな」


 だがクキが言った。


「航空規制がかかってるし、普通なら正体不明の航空機は撃墜される可能性が高い。それでも侵入して来たとしたら……やはり、アメリカの高官と繋がってる事になるが」


「ひとまず自衛隊とつなげてます。もう少々お待ちください」


「ああ」


 とりあえず俺とタケルは、試験体のコンテナが乗っているヘリコプターに乗り込みハッチを締める。敵が来る可能性があるなら、ゾンビは多少残していた方が良いと思うからだ。


「このヘリは無事だったんだな」


「唯一生き残ったようだ」


 オオモリからの答えはすぐだった。


「ビンゴですね。そちらに向かうヘリがいるようです」


「なるほどな」


「試験体のコンテナのどこかに、どちらかのスマートフォンを取り付けられませんかね」


「なんとかやってみる」


 俺が、首にぶら下がっているスマートフォンをタケルに渡す。


「ヒカルさんのスマートフォンですね。遠隔で全ての情報を消しGPS機能だけ生かします」


「おまえ、何でもありだな」


「僕のAIウイルスは優秀なんです」


「これは相当分厚い鉄で囲われてるようだ。底に仕掛けられそうな窪みもあるな」


 タケルが言う。


「こう言うのは、凛子さんの領分なんだけどな」


「底の窪みを、更に奥にスマートフォンを押し込めるだけ彫るか」


「やってみてくれ」


 俺が村雨丸を抜き、その窪みの奥の鉄板を壊さぬように突き刺す。


「よし」


俺が持っているスマートフォンをそこに突き入れる。


「傾いたら出て来ねえか?」


「問題ない。ちょっと待っていろ」


 俺が外に出て壊れたコンテナの一部を削り取る。直ぐにヘリコプターに乗り込んで、削った鉄を穴に押し込んで蓋をした。


「万力が要らねえんだから凄いよな」


 そしてオオモリが言う。


「仕掛けたら隠れてください」


「そうだな」


 俺とタケルはヘリコプターを下り、ヘリポートの敷地内から外に出た。少し離れたところで観察していると、ヘリコプターが数機飛んでくる音がする。


「タケル。水に入ろう、上空からだとバレるかもしれない」


「了解。最近よく潜るよな」


 ドプン! と俺達が水に入り、しばらくすると機影が見えて来た。タケルもレベルが上がっているので、普通の人間よりは潜水時間が長いはずだ。


 ガガガガガガ!


 機銃を打つ音がしてくる。恐らくはゾンビを始末しているのだろう。そしてぞろぞろとゾンビ化兵が降りる気配がした。


 十分も経つとタケルがもう限界のようで、いったん水面に顔を出す事にする


「プハッ」


「大丈夫か?」


「すまん。限界だった」


「奴らは作業をしていて、こちらに気づく気配はない」


「コンテナをひとつひとつ確認してるな」


「スマートフォンを仕込んだのがバレないだろうか?」


「どうだろうな」


 確認し終えたのか、コンテナが積んであったヘリコプターが動き出した。そしてヘリコプターの編隊が上空に上がっていく。


「行ったか」


「いや。一機だけが更に上空へと上がって真上にいる」


「確認か?」


 すると次の瞬間、そのヘリコプターが何かを投下した。


「タケル。潜れ!」


「おう!」


 俺はタケルを引きづり込んで、水中の奥へと潜っていく。水中でも分かるほどの爆音が聞こえ、水上に炎が走った。


 しばらくして俺達が水上に浮かび上がる。


「証拠隠滅か」


「そのようだ」


 ヘリポートはクレーターになるほどの爆発で、跡形もなく吹き飛ばされていた。地上に上がり、自分達が乗って来た船を見るが何処にも見当たらない。


「また水泳かよ」


「仕方がない。行くぞ」


 俺達はそこから数百メートルほど泳ぎ、陸に上がってびしょ濡れの服を見る。


「ヒカル、この辺にゃあスーパーマーケットは無さそうだぜ」


「このまま行くしかないだろう」


「仕方ねえか。民家のあるあたりまで行こうぜ。なんとか仲間と合流しねえと」


 そんな事を話していたら、スマートフォンに悪いニュースが入る。通話ではなくメッセージで。


 僕達はアメリカ人じゃないという理由で拘束されるようです。おそらくスマートフォンも没収されるでしょう。こちらの端末情報は全て消去し、衛星通信機器は海に捨てました。GPS機能だけ生かしますので、僕らを助けてください。ここから連絡は取れなくなります。以上。


「マジかよ……」


「違う国の人間は拘束されるのか?」


「みてえだな。まあ行くしかねえだろ」


「ああ。助けに行こう」


 俺達が三十分ほど走っていると、ようやくポツリポツリと民家が出て来た。ゾンビを倒しつつ、町をさまよっていると一人の生きた人間の気配がしてくる。


「生存者がいるぞ」


「行ってみっか」


 その家に行ってドアを開けようとするが、鍵がかかっており窓も締め切ったままだった。


「呼び鈴を押そうぜ」


 俺が呼び鈴を押すと、生存者の気配が動き出すのが分かる。それがこちらに来て、覗き穴からこちらを伺っているようだ。すると生存者はこちらに声をかけて来た。


「どっかいけ! ここには入れん!」


 タケルが答える。


「あー。周辺はゾンビだらけで、ここはあぶねえと思うぜ」


「いいから、かまわんでくれ!」


 そして俺がタケルに言う。


「家の中にもう一体ゾンビがいる。だが動かずにそこにいるようだ」


「ゾンビといるのか?」


「そのようだ」


 またタケルが中の人に言う。


「ゾンビと一緒に居るのはあぶねえぜ」


「……」


 中の男が扉を開け、手には銃を構えていた。老人のようだが、俺とタケルが手を挙げる。


「あんたらなにもんだ?」


「通りすがりの者だ。これから逃げようと思うんだが、じいさんも一緒にどうかと思ってよ」


「かまうな。俺はここにいる」


「なんでゾンビが家の中にいるんだ?」


「ぞ、ゾンビなんかじゃない! 妻が体調を悪くしているんだ!」


 タケルは俺をチラリと見て頷いた。


「……そうかい。悪かったね」


「早く出ていけ」


 すると老人はドアを閉めて鍵をかけた。


「治ると思ってんだな……」


「だが、ここに居ても死ぬだけだ」


「だよな。どうする?」


「破壊薬を一本使おう」


「仕方ねえな。爺さんの夢が覚めちまうけどな」


「もう治せないんだ。仕方がない」


 俺がゾンビ破壊薬を取り出し、その建物のガラス窓にめがけて投げつける。パリン! と割れてゾンビ破壊薬が中に入っていった。


 そして俺が言う。


「老人を説得している暇はない。仲間を助けるのが先だ」


「ここに救助が来ることを祈るか……」


 俺達は老人の家を離れた。直ぐに車を見つけてタケルがエンジンをかけ、湾岸に向かって走り出す。


「許せねえよな」


「許せん」


「仲間を助けて、こんな事は早く終わらせようぜ」


「そのつもりだ」


 それから二人は黙り込んだ。どれだけの人が同じ思いをしているのか、タケルを見ればその横顔は怒りに満ちていた。ずっとこんな思いを抱いてやってきたが、逃げ惑う人々や逃げるのをあきらめた人を見て、行き場のない怒りを抱えているのだ。


 しばらくして俺達が湾岸沿いに到着すると、そこは大勢の人でごった返していたのだった。

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