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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第六章 青春の冒険編
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第495話 ゾンビセーフティーゾーン領域拡大作戦

 俺達が新型ゾンビ破壊薬を撒いた事で、ビル街一帯はセーフティーゾーンと化した。ゾンビの死骸が転がっているものの、ゾンビが停止した事で建物から人が出てきている。生存者達は皆が鼻と口にタオルを巻いたりマスクをしており、他の人らにもそうするように勧めていた。


 生存者の一人が言う。


「集団ヒステリーかと思ったが、いきなり死んでしまったようだな。これは恐らくウイルスの仕業なんじゃ無いかと思う」


 科学的に作られたゾンビ因子が原因だが、やはり情報は出回っていないようだった。だがそれを聞いた人達が、慌てて口に布をあてがい始める。


 そこでタケルが言った。


「噛まれないと移らんぜ」


 すると白衣を着た人間がタケルに言う。


「素人は黙っていただきたい。感染症の事を何も知らないんだろう?」


「感染症の事は何も知らんが、ゾンビの事はよーく知ってるぜ」


「ゾンビ? 馬鹿言っちゃいけない。ゾンビのように見えるが、これは集団ヒステリーだよ」


 しかし生存者の中には、それに対して異論を持っている人も多かった。


「いやいや。体を撃っても死なないのを見た。明らかにゾンビだろう」


 だが白衣を着ている奴が言う。


「痛覚や恐怖を鈍らせる病気もあるんだよ。きっと痛覚が鈍って痛みを感じなかったんだろう」


 それにまたタケルが言う。


「そんな事は今は大きな問題じゃない。じきにまたアメリカ軍が爆撃をしに来るぜ。こんな中心地に固まっていたら、一気に黒焦げにされるかもしれねえぞ」


 そこでまた他の奴が言う。


「いやいや。死んで暴動が静まって来たんだから、連絡すれば止まるはずだ」


 更に他の奴が言う。


「何処に連絡するってんだよ。米軍のホットラインを知ってる奴がいるとでもいうのか?」


「それは……」


 すると今度は女性が手を挙げて言った。


「警察署に行きましょう。もしかしたら、警官隊が生き残ってるかもしれないわ」


「そうだ! とにかく警察署を目指そう! そしたら軍隊にも連絡がつくかもしれん」


 だが人々が通りの向こうを見ながら言う。


「あれは暴動を起こしている人間達だよなあ。あそこを超えて行かなきゃならない」


「なんで暴動を起こしている奴は、こっちに来ないんだ?」


 暴動ではないのだが。


「とりあえず、こっちには来ないからよ! 一旦、下手に動かねえでくれよ!」


 大きな声でタケルが言うと、スマートフォンに連絡が入った。


「大森です」


「おう!」


「まだ新型ゾンビ破壊薬がありますか?」


「ああ、使ってねえよ」


「良かった。陸路が無理だったので、船を探してたんです。そこから四キロほど離れた、ポンチャートレーン湖の岸のあたりにいます」


「ようやく来たか」


「手こずりました。船も盗んだものなので」


「で、施策ってなんだ?」


「北の空を見ていてください」


 タケルとオオモリがスマートフォンで話し合っている間も、生存者達が揉めていた。


 すると、ビルとビルの間の道路上に、突如として龍が現れた。


「タケル! 龍だ! 龍が来ている!」


「はあ? なんだって? そんなわけ……ほんとだ……」


 皆が北の空を見上げた。すると誰かが言う。


「ありゃドローンだ。AI制御で龍の形をしているだけだ」


「ドローンかよ」


 するとそのドローンは俺達の上で円になり、囲むようにして下りて来た。


「タケルさん! 見えてますよ」


「お。そうかい? で、これをどうするんだ?」


「散布用ドローンです」


「あ、了解だ。瓶を取り付けりゃいいんだな」


「はい」


 タケルはリュックを下ろして、周りの生存者に言った。


「えーっと、何って言ったらいいかな……。そう! これは鎮静剤だ! さっき集団ヒステリーって言ったろ? そいつを収める薬なんだよ! ドローンにつめて散布するから手伝ってくれ! 爆撃機が来る前にやっちまおう!」


 すると白衣を着ている男が言った。


「なんだ。あんた安全局の人間か?」


「そうだよ。とっととやっちまおう」


 タケルがさらりと嘘をつくと、皆が集まってきて瓶をドローンに取り付け始めた。全てのドローンに瓶を取り付けると、タケルがスマートフォンに向かって言う。


「取りつけたぜ!」


「了解です」


 ビューン! というモーター音と共に、ドローンたちが四散して飛んで行く。すると生存者が言う。


「おお! 暴動している奴らが倒れていくぞ!」


「本当だ」


 そこでタケルがオオモリに聞く。


「で、どうなる?」


「範囲を広げてセーフティーゾーンを作り出して行きます。ゾンビを全て始末は出来ませんが、勝手にセーフティーゾーンに入って行動を止めると思います」


「でかした」


「あと、悪いニュースですが、まもなく次の爆撃機が来ます」


 それを聞いて周りの奴らが慌て始める。


「爆撃機だと! すぐ逃げた方が良い! 中心地店に居れば、やられる!!」

「逃げろ!」

「わあああああ!」


「お、おい!」


 タケルの制止も聞かずに、生存者達は一斉に逃げ出してしまった。


「大丈夫だタケル。かなりの範囲でゾンビの気配が消えている。爆撃を処理する。俺におぶされ」


「へいへい」


 タケルを背負って一気にビルの屋上まで駆け上がると、東の空から数機の爆撃機が飛んで来た。それに向かって俺が村雨丸を構え、空接瞬斬で全ての爆弾を爆発させる。


「ははは。米軍はこの現象を、いったいなんだと思ってるんだろうな。整備の奴らが怒られそうだぜ」


「そんなものは知らん」


 そして俺は気配感知を張り巡らせる。


「居た。新型の試験体の気配を感知した」


「おお、ゾンビが静まってやっと見つかったか」


「みんなのおかげだ」


「よっしゃ。んじゃあ、俺のレベル上げと行きますかあ!」


「そうだな」


「ぶっちめてやんぜ! こんなに人を殺しやがって!」


「ああ」


 俺達は試験体に向かう為ビルを出る。どうやら生きている人間が次々に出て来て、避難を開始しているようだった。思ったより多くの人が残っている事に、俺もタケルもニヤリと笑う。


「いっぱい生き残ってくれてるな」


「そのようだ」


 セーフティーゾーンは転々としているので、ゾンビがいる場所を通過するのは難しいかもしれない。なので俺は生存者の逃げ道を作る為、走りながらも剣技でゾンビを斬り捨てていく。


「飛空円斬」


 斬り捨てたゾンビの上を走っていると、タケルが俺に言った。


「ヒカル! あれで行こうぜ!」


 タケルが路上に乗り捨てられているバイクを見つける。


「なら俺が剣を振る。タケルに運転を任せるぞ」


「ああ、どこにでも連れてってやんよ」


 タケルがバイクにまたがり、俺が後ろに乗る。キックをしてエンジンをかけ、倒れたゾンビをぬうようにして、タケルはフルスロットルで走り出すのだった。

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